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zoom RSS 不均衡問題−なぜ米国は持ちこたえられるのか

<<   作成日時 : 2007/02/27 07:00   >>

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ずーーっと前の話である。アメリカの投資銀行のCIOとマーケットの議論をしたとき、米国の対外経常赤字のリファイナンス(つまりどうやって穴埋めするかですな)の問題があるので、いずれ米国の金利が上がるのではないか、と私が聞いたところ、その方は怪訝な顔をして反問した。
「考えても見ろよ。溜め込んだドルで日本は何を買うんだよ?」
ドルである以上基本的にはアメリカのものを買うしかない。商品で買うものがなければ(というかそれがないから巨額の貿易赤字になるわけだが)証券か不動産ぐらいしか使い道はない。不動産はそうおいそれと買える物ではないから、ほとんどは対米証券投資で還流する。貿易決済通貨が円であればこういうことはおきないのであり、アメリカはとっくの昔に円不足で破綻している。
これが基軸通貨の強さというものだ。

これに加え、2000年代初めまでの巨額の為替介入によって日銀(黒幕財務省)は大量にドルを買い込んでいる。溜め込んだドルは、その性質上リスクの大きい資産に投資できないから、米国債やそれに類する安全性の高い債券を買うしかない。

毎月(毎年ではない)700−900億ドルもの赤字ファイナンスを必要としているにもかかわらず米国にちゃんと資金が回っているのは、国際的な決済がドルで行われることが多く米国がドル札を印刷することで貿易代金を払い続けることができ、その代金が主に米国債券の投資となって還流しているからである。

これに関して気になるデータが発表された。http://www.ustreas.gov/press/releases/hp263.htm
2006年12月の海外からのネット対米投資が激減し、これまでの大きなトレンドラインを割ったかに見えるのである。もともと振れの大きい数字であるし、直前のかなりのオーバーシュートの反動でもあるのだろうけれど、これまでは大きな意味でトレンドを割ることはなかった。こういう還流の数字が落ちていることが一時的な状況なのかどうかしっかり見極める必要がある。

最近では産油国のお金のほうがむしろ重要性を増しているというNY連銀のレポートもある(http://www.newyorkfed.org/research/current_issues/ci12-9/ci12-9.html)
これは明らかに最近の原油高のせいであるが、産油国もドルの使い道がないので結局米国証券を買う。(昔はラスベガスで王族が豪遊していたらしいがこれもドルの還流という点では同じ)。ドルの資金還流による赤字ファイナンスが必須のものだとすれば、原油高は(原油代金決済が世界的にドルで行われている限りにおいて)アメリカの国益にかなう。
私がアメリカにいたころ、グリンスパン議長(当時)のスピーチを直接聞く機会に恵まれた。これは有名なNYエコノミッククラブでの講演だったが、そこで彼は「原油価格の上昇は新規の石油資源開発を採算に乗せることができるために基本的に歓迎」みたいなことを言ったのである。インフレ予防に責任を持つ立場としての発言に「あれ?」と思った記憶があるが、もちろん原油価格がコアインフレにそれほど影響を与えなかったことはその後のデータが示すとおりであるし、なによりも彼は原油高が米国にとってきわめて重要な利益であることを十分に理解していたはずである。

さらに、実際に原油が上がり続けてアメリカの人々がガソリン価格の高騰にぶうぶう言い始めても、アメリカは戦略的備蓄をぎりぎりまで放出しようとしなかった。実は全体の在庫や備蓄のレベルは原油価格高騰が始まる前よりも上昇していたのであり、何のことはない、政府も価格高騰の片棒を担いでいたのである。

こういう状況で人々を納得させるためには「イラク」というキーワードは非常に重要な意味を持ってくる。「イラク」においてアメリカが作り出した状況こそ、アメリカの赤字ファイナンスに実は必要不可欠なものだったともいうことができるのではないか?

しかしながら、アメリカの覇権に陰りが見えてユーロが相対的な地位をまし、いよいよ苦しくなってきた。経済の軟着陸も短期的には重要だが、このファイナンス問題が注目されれば、ちょっと影響は出るかもしれない。

追記:NY連銀のレポートのリンクを原典にしました。

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内 容 ニックネーム/日時
ちょっとアメリカ経済についてネタ記事を書いてみました。グローバルインバランス是正をネタに円高とかになってほしいんですが、なかなかきませんね〜
ワッショイ
2007/02/28 18:34
ワッショイさん、TBコメントありがとうございます。グローバルインバランスは事実ですが、日本の場合貯蓄をちょっとシフトするだけで単年度の貿易収支ぐらい飲み込んでしまうようなお金が海外に出てしまう。それがまさに去年起こったことです。そのかわりアメリカが本当にやばいと思ったとき(えてしてこれはアメリカの政策で定期的にそう思うように仕向けられて日本人が勝手にばたばたして損するだけなんですが)円高になります。サブプライムのお話も、まあ本当にやばいのは事実ですが、やばいことははじめからわかっていたしデフォルト率も昨年末が15%だったのが2006年末19%に増えただけ(といっていいのかどうか自信はありませんが、ここでデフォルトが問題になるのは多少意図的な調整を狙ったものかも知れないと邪推してみたり。
厭債害債
2007/03/02 00:24
害債さんマーケットの見方、参考になります。
>定期的にそう思うように仕向けられて日本人が勝手にばたばたして損するだけなんですが

なるほど(笑)そういえば去年の5月も一度底なし円高にはいったか、とおもったときもアメリカ当局は日本当局に口先介入するなよ、とか言ってたみたいでしたね。そのとき一方で株安も進んだし相当アメリカにマネー還流したんでしょうね〜。
ワッショイ
2007/03/02 02:02
ワッショイさんコメントありがとうございます。このエントリーを書いた直後に世界的にマーケットの変調が始まりましたが、これを助長したひとつの理由が元連銀議長グリンスパンの米国リセッションの可能性を示唆する発言でした。彼ぐらいの人がこのタイミングでこういうことをいえばどうなるかはしっかり認識していたはずです。
厭債害債
2007/03/04 08:42

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