厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS アメリカの変調

<<   作成日時 : 2007/03/05 20:43   >>

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円高、株安がとまらない。今回のマーケットの波乱がアジア(インド、中国)あたりの暴落が引き金になったことは疑いないが、根底には米国経済の変調の兆しがある。変調といってもこれまで調子よすぎた(ゴルディロックス)経済が修正局面にあるだけ、という見方もあるが、世の中の人があまり観ていないところに出ている数字がやや不安を駆り立てる。

ひとつは先日のエントリーで紹介した資本の流れである。大借金国の米国にとっては資本の流入がとまることはそのまま消費や投資活動の停滞をもたらす。さらに米国は偉大な「投資製造装置」であることを忘れてはならない。つまり国債の買いあれなんであれ流入した資本はさまざまなルートを通じて金融機関に集められ、それが「先進的な手法」(こういう表現は昔某経済新聞がよく日米の金融機関の技量を比較するのに使ったせりふでした)によって投資に変わっていく。今の成長分野といえばBRICsとか途上国とか商品とか要するにリスクの高い分野であり、そうでもしなければ、高い金利コストが負担できないわけである。アメリカで問題になっているサブプライムのところもその文脈で理解することもできる。昨年12月の資本の流入が大幅に落ち込んだことは、何らかの変化の予兆かもしれない。

二つ目には住宅問題の波及効果が過小評価されている可能性である。すでにモーゲージ貸付のうち大体10%強がサブプライム(非適格債務者)むけだといわれている。ただ、この10%を償却処理すれば済むかというとそう簡単ではないだろう。与信基準が厳しくなるということは引き締めにほかならないわけで、これは少なくとも住宅の需要にはもろに響く。ファニメ(連邦抵当金庫)が出したレポートでは、2007年の住宅市場についてはきわめて悲観的な見通しがでているが、これが出されたのが1月17日であり、その後サブプライムのCDS(クレジットデフォルトスワップ)指数であるABXインデックス(BBB-)の価格は急落しているから、いっそう落ち込みが激しくなることが予想される。

この問題は、実はアメリカという国がこれまで平時において「住宅価格の下落」を一度も経験していない、ということが大きい。日本の土地神話と同じレベルの話がアメリカの住宅神話である。私がアメリカにいたころ、借家に住んでいるといったら「どうして買わないんだ?」と何度聞かれたことか。その後には必ず「家は絶対に値上がりするんだから買わないとアホだ」という。まったく80年代後半の日本みたいな連中がいっぱいいた。もちろん、最終的にはアメリカの人口は増えているしいずれは家に対する需要は戻ってくるだろう。しかし少なくとも短期的にはあまりにも行き過ぎたマーケットであり、しかもこれまで経験したことの無い世界に入っているのだから、一体どうなるのか興味津々である。

基本的な為替の見通しは前回書いたとおり。日本人の機関投資家が基本的にリパトリエーションをしないので、問題は円キャリーで為替をやっているファンド勢と個人がどううごくかにかかっている。しかし、私の知る限りマクロ系のヘッジファンドでも経験ある「まともな」ところは実はずっと「円ロング」だった。この期に及んで円ショートを買い戻しているのは、その他の新興系有象無象だろう。さらに今回は妙なことに商品相場の値もちがよいし、本日の円高を引っ張ったのは日本人好みの高金利通貨が多かった。全体としてはかなり冷静に対処しているようであり、早晩いったん底打ちするだろう。テクニカル的には115円割れと113円台の2箇所に注目している。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
日本(円)から見てもそうですが,株,外貨,商品といった金融資産はアメリカ(ドル)からみても上がっていました。
つまりTICが減少した理由はアメリカ人も日本人と同様外国資産を購入していたということであり,今回高金利通貨の下落が大きいのは,対円でのキャリートレードの他に,ドルを売って高金利通貨を買うという行為が広く行われていたため,その巻き戻しも行われているということではないでしょうか?(単なる私の勘ですが。)
アメリカも日本もお金が余っていそう(投資先の選定に困っていそうと言うべきでしょうか)ですから,こういう想定も可能なのではないかと思います。
Karez
2007/03/06 07:16
Karezさん、コメントありがとうございます。ドルの現在の短期金利からすれば、それ以上の(十分な)金利が得られる高金利通貨というのは、先進諸国ではそれほど多くありません。しかもファンド等にお金を預けるプロの投資家は十分にグリーディでして、短期金利プラス100ベーシス(つまり6%以上)を運用の目標としているケースが多いと思います。となれば、あまりない金利差よりはもっと期待収益率が高いと思われる株やエマージングやクレジットなどに行くような気がしてます。その意味でおっしゃるとおり米国のお金が海外に再び投資されているのではないかというのはあたっていると思います。
厭債害債
2007/03/06 23:03
害債様

コメントに対して丁寧なご回答をありがとうございました。
なるほどプロの方々というのは,そのように利益の基準値を決めていくのですね。
非常に参考になりました。

ちなみに3/15に最新のTICデータが発表されましたので,line 19の項目を見てみますと,
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp317.htm
12月のデータのみが目立って減少しています(海外からの米債購入が減少し,アメリカからの外債の購入が増えています)。

そこで2004年と2005年の年末のデータも調べてみますと,
http://www.ustreas.gov/press/releases/js2314.htm
http://www.ustreas.gov/press/releases/js4117.htm
やはり12月は流入額が減っています。 (2004年は10月も流入額が減っていますが。)

これには季節性のようなものがあるのでしょうか?
もしご存知でしたらご教示ください。
Karez
2007/03/18 12:49
Karezさまご質問いただきましたが、この統計にはそれほど専門的に詳しくないので正しいお答えができないと思います。一応株の1月効果みたいなものが税制上の理由で起こりやすいということは、逆に12月は米国の株式市場にお金が流れにくいということもいえそうですが、外債の出入りということであれば、比較的休みの多い米国外の人の買いが細るのでしょうか?私もどなたかにご教示いただきたいですね。いずれにせよ今回の12月の減少が杞憂に終わったのであればそれはそれでいいことですが、今回の減少がやや大きいように感じたので書いてみました。
厭債害債
2007/03/20 23:18

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