厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 世紀の誤訳−「格付け機関」

<<   作成日時 : 2007/03/06 07:06   >>

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Rating Agencyのことです。もともとアメリカで細々と鉄道などの社債の信用調査をして信用格付け(AAAとかBBBとか記号で表されます)を行っていた民間会社が今では民間企業の生殺与奪を決めるまでのパワーを持ってしまっている(最近は過当競争でかなり大変そうですが)。

少なくとももっともパワフルと思われる米国のMoody’sとS&Pはいずれも純粋な民間企業です。Moody'sはNYSEに上場していますし、S&Pはマグロウヒルという大メディアの子会社です。ところが80年代後半から海外投資の活発化とともにこれらの会社の存在感がまして来ました。これに対し日経をはじめとするメディアは「格付け機関」という訳語を最初ずっと使っていました。(最近では格付け会社と書くところも増えているようですが)。

日本語で「会社」という言葉を使わず「機関」とかけば、読者が勝手に「普通の会社ではない」と解釈してしまいますし、ニュアンスとして「政府機関」「公的機関」という香りがこの「機関」という言葉に内包されてしまうのです。もちろんAgencyという言葉には一般的に「公的」というニュアンスはなく、たとえば日本でも「東急エージェンシー」などという会社があるぐらいで、基本的には単なる「代理店」というのが正しい解釈なり訳だろうとおもいます。

しかしながら「機関」という訳語を付された結果として、本来は単なる民間企業のひとつの信用判断でしかないものが、あたかも公的権威のあるものとして「勝手に」受け止められてしまいました。その結果、彼らの信用格付けの変更がひとつの価値判断の基準として絶対的なものとなり、マーケットに影響力を及ぼすようになってしまい、一時期は彼らもその影響力を自覚しつつ行使していたような雰囲気すら漂わせてしまっていました。勝手格付けという制度がそれで、どこにも顧客がいないのに、公表資料だけから勝手に格付けをしてそれを上げ下げすると言う結構乱暴なことを(今でもありますが)平気で行ってきました。山一證券がふっとんだのも直接的には勝手格付けの信用格付けの非投資適格への引き下げです。日本の金融危機は格付け会社たちの協力なしには演出不可能だったといえます。金融機関や保険会社が勝手格付けをする格付け会社を必要以上に恐れて、物価上昇率がマイナスのさなかに、格付け会社が発行する高価なレポートの値上げをしぶしぶ呑んでしまう、といった、企業と総会屋の関係に近いような事例もあったと聞きます。

97−8年ごろのアジア危機では格付け会社も国の実態にほとんど対応できていませんでしたが、これはアメリカ主導の金融危機であり、米国の金融機関だけが逃げおおせるために格付けの変更を遅らせたのではないか、とも疑われます。

日本にも格付け会社はありますが、これは私も過去そのようなことを言っていた記憶があるのでざんげする必要があるのですが、米国などの格付け会社にくらべてやや信頼度にかける、と思われていたふしがあります。投資家もその意味では片棒を担いでしまったということですが、やはりその背後には「格付け機関」というのが最初米国の格付け会社を念頭において語られていたことが大きいと思います。

最近では逆に資産担保証券などの世界では格付け会社が発行体側に擦り寄る事例が多くなっているようですが、「依頼格付け」(発行体の依頼に基づく格付け)をよくするからという露骨なマーケティングも一部にはあるようです。いずれにしても、投資は自己責任で、ということですが、現在ではBIS基準とか金融検査の世界では指定格付け会社ということになっていて、もはや格付け会社は不動の地位を保ってしまいました。

まあこうした真の公的機関の地位を得たことで、だんだんまともになってきたのは喜ばしいことです。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
新BISでは依頼格付は採用して勝手格付は採用できないですね。
ただ依頼格付は、発光体が格付を「買う」側面を否定できず、投資家にとって本当に良いかどうかは分からないという個人的懸念があります。少なくとも現在においては勝手格付であっても格付先行との十分なコミュニケーションのもとに行われているとのことであり(Moody'sの中の人から聞いた話)、実態からかけ離れた格付がつくことはないはず。
とおりすがり
2007/03/09 00:49
とおりすがりさん、コメントありがとうございます。たしかに現在は勝手格付けでもきちんとインタビューとかやっているみたいで、その意味で「まともになった」と私も感じています。ただ、次のエントリーにも書いたように、最近露骨なマーケティングとちゃうの?という行動がやたら目立ち始めているM社については、格付の妥当性について逆にマーケットからやや「距離をおかれている」印象を受けています。
厭債害債
2007/03/09 05:44
昔、確かに「機関」と訳していたような気がします。ご指摘にように公的な印象があって変だなと思ったもの。その後しばらくして「会社」になりましたが…。格付け会社の影響力については疑念持ったことがないではないですよ(笑)。
本石町日記
2007/03/09 16:58
本石町さんコメントありがとうございます。当社ではいまだに内部文書では「格付け機関」です(笑)。
厭債害債
2007/03/09 21:40

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