厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS ライフ・セトルメント(生命保険のセカンダリー市場)

<<   作成日時 : 2007/08/06 19:27   >>

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7月30日付のビジネスウィークに特集記事が出ていた。ライフセトルメントとは、要するに第三者による生命保険契約の買取である。日本では約款上保険会社が持つ拒否権をたてに契約の譲渡を認めないという形で否定されてしまっている(すでに今年3月に高裁レベルの判決が出ているhttp://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20060322ik06.htm

この手のビジネスが十分に成り立つのは、余命が6ヶ月以内とか極端に短い人を別にすればがんとか不治の病と診断されただけでは保険金が下りないということが理由だ(余命6ヶ月以内なら特約で保険金を支払う会社が多いと思う)。この場合お金が必要だからといって解約すれば、死亡保障などほんとにわずかのお金しか返ってこない。これに対して、生命保険買取ビジネスの会社は冷徹に売り手側の被保険者がその後どれくらい生きるかを算定し、一定の期待値をはじき出して保険を買い取るので、売り手にとっては多くの現金を手にすることができる。

生命保険も一定のキャッシュフローを前提にするから証券化になじむ。買った会社はそれを束ねて証券化することもできる。しかし批判も多いようで、当然、人の命にベットする投資の是非が社会通念上議論されるだろうし、投資家が高いリターンを得られることは売られた保険の被保険者が早く死ぬことにかかるため、他人の早い死を願うと言うモラル的な問題が生じるのではないかとも懸念される。

しかし、それでも最初に述べたような背景から、一定の条件をつけてビジネスとして認める余地はあるだろう。それが契約者(被保険者)のメリットになる限りにおいて。それに、そもそも生命保険会社は終身年金などでは被保険者の早死にで経済的利益を得るポジションを取っているわけで、それ自体がモラル違反というわけでもないだろう。

ただ、問題を複雑にするのは、不治の病(がんなど)にかかった被保険者(契約者と同じであることも多い)への支払いが告知の問題と絡んでくることだ。被保険者が知らない状態で家族が知っている場合、被保険者本人が契約者である生命保険の譲渡(受取人変更)には当然契約者の同意が必要であり、家族としては本人に事実を知らしめて契約を処分させ、治療のためのキャッシュフローを得ようというインセンティブが働いてくるだろう。もちろん開き直ってそれでもいいという考え方も成り立つ。

純粋に投資家の立場では、証券化されてもあまり買いたくないなぁと思う。リターンが高くなったらそれだけ人がたくさん死んだということになるから、絶対に寝覚めが悪いだろう。本来的にはこういうエリアも保険会社が「下取り」ビジネスを拡張させる形でやっていくのが望ましいのではないか、と考えている。冒頭にあげたビジネスウィークの記事では死神が優雅にエグゼクティブルームでパターゴルフに興じている写真が載せられていた。アメリカでもこのビジネスについてはやはりそのような捉え方なのだなと思った。

ただ、広い意味ですこしだけ常識の鏡をゆがめてみたらいろいろ新しい商品ができそうである。
昔はトンチン年金といって、早死にした人の余った年金原資が生き残った人の給付に上乗せされていくというものもあったし、最近では一定額の元本を払い込んで死ぬまで一定の年金タイプの給付をしていく代わり元本は返さない、といった商品も登場している。ニーズが多様化している中での保険や年金の仕組みを金融商品という切り口で改めて考え直す作業は結構面白いと思う。

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
もともと生命保険って死後遺族に渡すために作られた制度でしょ。生前に欲しいなら、前もって手厚い医療保険に入れば済む問題じゃないかな?中途で変えたい人はいるかもしれないけど・・・
それを使って投機的に活用するって・・・・ちょっと、なんだかな〜と思ってしまう。投機化できるものは何でも投機化するみたいのは、個人的には厭ですね。
投機化するより生命保険会社の柔軟な対応を求めることで解決するが僕は筋だと思います。だってこういうことが成り立つってことは保険会社が対応しても成り立つはずだってことな訳ですから。
kazzt
2007/08/07 10:21
親族の一人が難病にかかり、長期療養の末に亡くなりました。親族としての無念は、なるべく手厚い看護をしたくても、財政的に十分な余裕がなかったことです。告知の問題は確かにありますが、生命保険の買い取りビジネスに一定のニーズはあるのではないかと思います。私自身も、自分が死ぬ期待値を買い取り会社と勝負し、保険を売却。その後は気力で生き抜いてやる、というインセンティブが生まれそうです。こういう風に考えるのはあまり一般的ではないかもしれませんが。
本石町日記
2007/08/07 22:21
世の中の感覚としてはkazztさんのおっしゃるとおりだと思うのです。しかし、問題はそういう医療保険に入っていなかったり(とうぜん病気になってからでは入れない)したときにどのようにニーズを満たすかということです。
本文にも書きましたが、投資対象としてはどうしても寝覚めの悪いものになりそうなので、保険会社が契約そのもののトータルケアの一環として考えれば面白いのではないかと思います。ということで結局はkazztさんの意見と同じはずです。
厭債害債
2007/08/08 00:23
本石町日記さんどうもです。おっしゃるとおり、自分の強い意志でもしかしたら裁定できるかもしれないし、より強く生きられるというメリットもあると思います。一概に買取そのものを否定すべきではないともおもいます。少なくとも現在のように解約返戻金が買い取り価格よりはるかに少ないのであれば。
厭債害債
2007/08/08 00:25
こんにちは。いつも読ませていただいてます。

昔、日栄商工ローン全盛期には
「死亡保険金に質権(しかも根質)を設定して増し貸し」なんてことも行ってました。
もちろん寝覚めの悪い事件は山ほど起こり、(「定型的縊死」の死体検案書が積み重なり)今は実務的に避ける方向のようですね。

債権化して買取だと、運用側に「誰の保険かわからない」ようになる仕組みを作れば、双方にメリットあるのではと思います。

竹内かれん
2007/08/12 02:39
竹内さんコメントありがとうございます。消費者団体信用保険なんてのも、まあ商工ローンの事例と似たようなものだったのかもしれません。
証券化してしまえば誰の保険かはわからなくなると思いますが、それでも例えばRMBS(住宅ローン担保証券)みたいにキャッシュフローをパススルーする仕組みにしてしまうと、やはりあるとき償還額が増えて「人がたくさん死んだ」とかいうことが直に伝わるので、なかなか気分的にはどうかなと・・・(投資家たるものもう少し冷徹になれという意見もあるかもしれませんがね)。
厭債害債
2007/08/12 07:00
確かに気分的には良くないでしょうね。
実務レベルでは死亡請求の処理をする方もいたりするわけですしね。。。
保険料自体が、死亡率によって値段の変わる仕組みだったりもしますが(汗
竹内かれん
2007/08/12 20:28
なるほど なるほど・・・
皆さんはまるで他人事のように議論されていますが、もし皆さんが不治の病にかかり、会社を退職しその後何年もの間に闘病したとします。生命保険の掛け金も払えなくなりそうになったとき、生命保険を売ることで救われるということもあるのではないでしょうか?
人の生死を扱っているのはライフセトルメントのみではなく生命保険そのものがそのような商品性なのです。
鮟鱇
2007/08/12 22:17
竹内さんどうもです。証券化してしまった後はその投資商品を買った投資家が保険金請求の処理をするわけではなく、途中に事務代行機関が必ず入ってそういう処理を代行するはずです。でも・・・ですね。
厭債害債
2007/08/12 23:22
鮟鱇さんコメントありがとうございます。まったくおっしゃるとおりです。投資家としての気分の問題は別にして必要性については日本でももう少しまじめに捉えられてもいいのではないかと感じています。保険会社にとっても新たなブレークスルーになる可能性もありますし。本文では同じ趣旨の主張をさせていただいたつもりですが誤解を招いたとしたら失礼しました。
厭債害債
2007/08/12 23:26

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