厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS ヘッジファンドについて考える

<<   作成日時 : 2007/09/13 18:36   >>

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市場の混乱をつらつら眺めていて思ったことですが、ヘッジファンド的運用は自分でやるものであって人様のお金を無制限に受け入れてやるものではないのではないかということです。一つ一つの考え方は合理的でも運用者がマーケットの状況を100.00%見通せているのではない(というかそれがヘッジファンド運用の前提=非効率性)以上どこかで必ず例外的な事象にぶつかり、アンワインドを引き起こしマーケットを混乱させるのだと思います。

もちろん投資家はマーケットがおかしくなる前の数年間しっかりと稼いだりできることもあるしそれであれば投資としては成功だったといえるかもしれません。また、マネージャーもぶっつぶれるまでにたっぷりと普通の労働者の一生分ぐらいの収入を稼ぎ、別に命や財産までとられるわけでもなく、また仕事を探せば済む。
しかし、市場の波乱を原因として普通の人々が買った家をいきなりとられたり、予想もしない形で職を失ったり、金融経済政策を誤らせたりという効果をもたらすのであれば、やはり全体としてみれば、問題があるといわざるを得ません。

常々思っていることですが、運用において「こうしなければならない」ということが決められているとき、マーケットには必ずゆがみが生じています。むかしむかし保険会社が「外国証券」(非居住者の発行する証券)を総資産の一定割合しか買えなかったころ、おりしもの対外投資ブームにのって「居住者発行外貨建証券」(いわゆる「スシボンド」)なるものがはやりました。スシボンドなる命名は「日本人しか食わない」ような低利回りの(つまりプレミアムのついた)債券であることから生まれたものです(現在世界中でスシブームが起きていることを考えると、苦笑を禁じえませんが)。当時はまたメインバンク制健在のころで、メインバンクがそれに保証をつける形で、要するに銀行リスクの外貨建債券が大量に出回り、それを喜んで買うという市場が出来上がりました。結果的に居住者にとってファンディングコストの安いマーケットができたわけで、こうした低コスト資金に慣れてしまった企業がその後のバブルの片棒を担いだという見方も成り立つのです。

いわゆるベンチマーク運用もそうですが、どこぞの新聞社などが決めたような指数に合わせるような形での運用は、その指数を決めている人々が個別株のパフォーマンスを左右することすらできるわけでして(まあだからこそ、チャンスもあるわけなんですが)、ゆがみの原因となります。

そしてヘッジファンドも、そこにお金を預ける人はやはりイザというとき解約したいから一定の解約可能性を契約条項に盛り込むわけですが、そういうところにお金を預けるプロないしセミプロの投資行動はある一定の経済金融状況のインプットに対しほぼ同じになるわけで、今回のように何かあったときにみんなが出口に殺到して部屋ごと壊す、そういう状況になる。自分自身だけでやっていればそれほどポジションも膨らまないでしょうし、マーケットのゆがみを十分に取っていける可能性があるんですが、他人様のお金を預かったが最後、一定のルール(例えばロスカット)が定められたり、強制的なポジションクローズに追い込まれたりするし、しかもその規模が資金規模が大きくなることに加えレバレッジなどによって巨額のものになってしまうのであり、それが実体経済にまで影響を与えてしまうという本末転倒が生じるのです。今回もインフレ傾向にありながら金融当局が利下げに追い込まれようとしていることが一つの例です。

私はヘッジファンド運用について決して否定的ではないし、マーケットの隙間を埋める重要な役割を一定の範囲で果たしていると思います。しかしながら、それが巨額に成りマーケットに不必要なボラティリティーを与えていることについては再考が必要です。ボラティリティーの増大すなわちリスクの増大は社会的コストを増やします(過去数年間は彼らはボラティリティーを売り続けてきたので表向きは下がったのですが、長期的にはコストを増やしたのだろうと思っています)。

しかしこれほど大きくなってしまったのはそこに投資する側にも責任があります。自分たちだけが高いパフォーマンスを得られるだろうという思い込みで市場のことを深く考えない機関投資家とよばれる人種が大量の資金を高レバレッジのストラテジーに突っ込むとどういうことになるのか、これまで何度も味わっていながら本当に市場関係者というのは学習のできない人種だと自戒を込めて思うのです。

しかし、さらに言えばそういうところにお金を突っ込む機関投資家や年金基金の背後にあるのは一人一人の国民であり個人です。それぞれの人々がそれぞれの住む国の経済の一部を担っているわけで、国民住民一人一人がその国の経済パフォーマンスを担っているわけです。金利は大雑把に言えばインフレの関数であり、名目成長率の関数です。こういった数字が伸びない以上金利は上がりません。日本の4−6月期のGDPが下方修正されてマイナスに転じました。消費が伸びず物価も上がりません。これが日本国民の成績表であり、実力です。金利はその成長力や物への渇望度(つまりインフレ)に比例するのです。金利はお金をどこかに預けておけばついてくるわけですが、その金利はどこかの誰かが仕事をして付加価値をつけて返してくれる果実です。お金を預ける、あるいは投資をするというのはどこかの誰かに仕事をさせて果実を返させることです。日本で平均的にわずかの果実しかえられないというのは成長力が低いという問題であり、人口問題を底辺とした大きな日本国民(住民)自身の責任なのです。その自分たちの責任を省みず、それ以上の果実を働かないで得ようとする、あるいは金利が低いといって文句を言うのは傲慢以外の何者でもありません。金融というのは効率化以外何も生み出さないのです。効率化は経済に対して正しい資金アロケーションを行ってのみ可能であり、どこの馬の骨ともわからんヘッジファンドにお金を預けて達成できる保証はありません。

私が言いたかったのは、市場の混乱を起こしている直接の当事者はヘッジファンドなど家も知れないけれど、本当の張本人は、実力以上の果実を求める「普通の人々」の気持ちだということです。自分で銘柄を選んで株式投資をやっている人々や自分で外貨を買っている人々、あるいは中身の明確な投信などを買っている人々は、ある意味資金の適正配分を自分なりに考えているといえるのですが、中身のよくわからないヘッジファンドにお金を預けて、しかも必要以上の高利回りを求める(高レバレッジを伴うことが多い)ことが市場にゆがみを生じさせているということを改めて認識する必要があるのだと思うのです。それも自分自身のためだけにやるのであればおのずから限界もあり最終的にはリスクは限定的でしょうが、ひとたび他人様のお金を預かってレバレッジをかけはじめたら、市場に対する負荷はどんどん増えていき最終的には大きなコスト増につながるのではないでしょうか?

余談ですが、ヘッジファンドのマネージャーセレクションにかかわるところの一つの重要な基準として、「どれだけ手金をいれているか」つまり自分のお金でちゃんとリスクをとっているかどうかがあります。これが多ければかれらは投資家と一連托生ですからしっかりやるだろうという推定がなりたちます。ところが普通の判断基準では、割と少ない金額(例えば数百万ドル)で納得してしまうことが多いですね。本当の富裕層にとってあるいはヘッジファンドにとってその程度ははした金といってもいいくらいです。個人的には運用者が個人財産の半分以上突っ込んでいる場合に限りはじめてヘッジファンドなるものを信用すべきだと思っているのですが。

これは表現を変えれば、ヘッジファンドにも運用者の手金という意味での「自己資本」規制(しかも相当高い自己資本比率を要求する)が必要だということです。BISが銀行監督だとすれば、少なくともほかからお金を集めるヘッジファンドにも同じような規制当局がいずれ必要となってくるでしょう。2年ほど前にアメリカでは見事に規制のアイデアはつぶされましたが、またいずれきっと出てくることでしょうね。でもまたそういう規制が不必要なゆがみを生じさせるという点、堂々巡りになるのでした。

今回のエントリーは多少の昔の自分の反省も込めて(黙)。

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
>何かあったときにみんなが出口に殺到して部屋ごと壊す

皆が出口に向かうと部屋が壊れるということは、要するにその市場というのはギャンブルなんですよね。。投資であるなら何らかの果実は残っているはず。

hama☆sta
2007/09/13 22:55
直接金融の発展はとても重要な問題です。
日本は確かに遅れていますし、健全な発展は重要事項だと思います。
僕はヘッジファンドは確かに投資信託より合理的な面を多く持っていると思います。

けれど、アングロサクソン型の直接金融が健全なものかと問われると疑問ですね。
少々暴走気味の印象を受けます。
直接金融自体がまだまだ幼い産業であり明らかに洗練されていく必要があるのでしょう。

金融工学によるリスク管理も実体経済に与えるリスクをどう管理するのか?
という問題に向き合ってほしいと思います。
kazzt
2007/09/14 10:06
hama☆staさんコメントありがとうございます。ギャンブルかどうかという視点よりも、キャパシティとか定員を無視した状況がヘッジファンドを通じて起こりやすく、それは市場の機能を壊してしまうことがあるという例えで使ったつもりです。おっしゃるように、ギャンブルという面はあるかもしれませんが、私自身はギャンブル(投機)には市場における一定の役割があると思っています。ただ、投機という作業は規制というものと本質的になじまないので、当局も苦労するのだろうと思います。
厭債害債
2007/09/15 09:09
kazztさんどうもです。LTCMのときは著名な金融関係者などハイネットワース(資産家)中心の投資家層でした。しかしいまやヘッジファンドの投資家は機関投資家と言われる年金、保険、さらには銀行などが金額的に大きくなっているはずでその意味では直接、間接という観点を少し離れた問題が生じていそうです。銀行や保険会社を通じる限りにおいて、投資家は預金者や保険契約者であって損失負担が銀行や保険会社になるのであり、その意味では間接金融化している可能性があります。
私の指摘したかったのはまさにそこであり、預金者や保険契約者がしらないうちに必ずしも情報優位にない中間者に危険を負担させてしまう構造であります。
厭債害債
2007/09/15 09:26
>ヘッジファンドの投資家は機関投資家と言われる年金、保険、さらには銀行

間接金融の先にあるヘッジファンドという構造になってしまっていて、直接金融の利点が無くなっているのか?
うーん、確かに今の状態ではその意味が無い。
お金を集める窓口が・・・・銀行や郵貯に・・・
やっぱ手数料自由化などの作業で投資信託などをどう健全化させるかという作業が必要なのかも?
kazzt
2007/09/15 11:21
kazztさんどうもです。投資信託もいろいろありますからねぇ。最終的にはそこにお金を預ける個人がどこまで理性的になれるか、という事でしょうけれど、それは合理的経済人を想定するぐらい難しい作業かもしれません。
厭債害債
2007/09/16 10:35
教えていただきたいのですが、日本の外貨準備金アメリカ国債などをヘッジファンドで運用するのもやはり危険が多いのでしょうか?
国債を少し超えれば良い程度の利回りならという条件だと仮定してのことです。
年金や銀行などのお金よりこっちを運用したほうが良いんじゃないかって気がしてしまうんです。
どう思われますか?
kazzt
2007/09/18 11:48
kazztさん、お返事が遅れて申し訳ありません。質問の趣旨が必ずしもよくつかめなかったのですが、外貨準備は一般的に支払準備としての性格上安全なものへの投資が前提になりますね。中国などは自国金利に比べて米国債の金利が低いうえ間違いなく自国通貨高傾向(つまり外貨準備に差損が生まれる)なので積極運用に振り向けるインセンティブが高いのですが、日本ではまさに通貨介入を通じた外貨準備の積み上げ自体が一種の円キャリートレードだったわけで、特段の事情が無い限り余計なことをする必要も無いように思います。質問の趣旨にはずれていたならごめんなさい。
厭債害債
2007/09/25 18:31

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