厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS シティグループ、サブプライム損失を公表

<<   作成日時 : 2007/11/05 23:36   >>

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週末は小沢民主党党首の突然の辞任発表にも驚きましたが、ギョーカイ関係者にとってはやはりシティグループのサブプライム損失額は結構衝撃でした。週末の休日に発表するってぇところがなんとも味わい深いのですね、どちらも。

シティには550億ドルの「直接」のサブプライム関連エクスポージャーがあるということで(後で書きますが「直接」ってぇところがちょっと重い)しかもSecurities and Banking businessから生じているということで、証券化と貸し出し両方でやられたということですね。これによって税引き前ベースの収益が80億ドルから110億ドル(って一兆円クラスなんですが)へこむという強烈な話です。すでに前々から噂になっていた(いつぞやはWSJなど「さっさと辞めろ」といわんばかりに次のCEOの予測記事を出してましたが)プリンスCEOはとうとう辞任。元ゴールドマンのルービン元財務長官が会長(もともとチェアマンでしたがこれまではアドバイザー的な役割だったと思われます)になるようです。CEOには暫定(Interim)でビシコフ氏が選ばれましたが、「暫定」という言い方をせざるを得ないくらい、このニュースが緊急性の高いものであることには注意が必要です。小沢党首の辞任と同じぐらい、周りにとって用意が出来ていないということですから。

この数字はあくまでも現状の見通しであります。一応シティグループの公表にしたがってエクスポージャーのうちずばりサブプライムものが117億ドル、証券化したもののスーパーシニアが430億ドルとした場合、最悪の場合ずばりサブプライムは全損、スーパーシニアでも40%ぐらいはやられる可能性があります。そうすると約300億ドルの損失で、現状のシティグループの自己資本(1274億ドル=2007年9月末)の4分の一弱が毀損することになります。先ほど「直接」のエクスポージャーというところを強調したのは、ここにはいわゆるSIV関係のオフバランス部分が入っていないということです。ちょっと出所ははっきりと覚えていないのですが、私の大福帳の9月6日あたりのメモ書きではシティが流動性サポートをしているSIVのうち最大のBeta Finance が210億ドル、7つの全体で1000億ドルというデータが残っております。本日のWSJでは800億ドルとかかれていましたがまあいずれにしても相当な金額ですね。こちらのほうはどれぐらいの損になるかはわかりません(全損ってことはないでしょう)が、30%と見積もって自己資本の23%。合計すると自己資本の半分ぐらいやられてしまう可能性があるということです。もちろんシティのことですからすぐに資金繰りに行き詰るということは無いでしょうが、これは間違いなく格付けに大きく響きます。資金を調達しなければならないわけで、自己資本比率が大きく低下する可能性があるからです。いずれエクイティの調達が必要になるので、株価は希薄化懸念で下げる可能性もあるでしょう。

それにしても思うのは、どうしてこのような事態になるまで突き進んでしまったのか?ということです。

私見ですが基本的には、株主の権利が極めて強いため、経営者が一定の数字を出さなければいけないというプレッシャーを強く受けすぎる、ということだろうと思います。理屈の上では会社は株主のものだし株主が強く経営陣を動かしていくというのは当然のことですが、実際そのとおりやってみるとプレッシャーを受けた人間はとんでもないことをしでかしたりする、というのがここ20年ぐらいの資本主義経済の問題点ではないでしょうか。エンロンの事件からわずか5−6年しか経っていないのです。それでもメリルが「飛ばし」をやったとか疑われていたり、はてはM-LECのような公認飛ばし機関を作ろうとしてみたりするわけです。本当にアメリカという国は懲りない国ですが、これも結局株主からのプレッシャーが強すぎるからという面が否定できないと思います。

こういう事態になるとまたかつてのサーベンス・オクスレー法のような企業統治やコンプライアンス強化をうたったルールが出てきそうですが、こういうのははっきりいって百害あって一利なしという気がします。やるんなら事件が起こる前にすべきであって、事件が起こってからやったら萎縮効果が強すぎて経済にますます下押し圧力をかけるからです。だいたい、こういうことをすると弁護士とか会計士とか、本来金融と同じ意味での「非生産的活動」に従事する産業に多くの資源を配分しなければならなくなりますので、必ず非効率が生まれるはずです。それがある程度意味のあるぐらいなじんできたらまた別の問題が出て新たな取り組みを強制される。まさに、今回は日本版SOX法が施行される当たりに生じた問題でしたね。

日本は逆におとなしくなりすぎて、法に縛られてがちがちの資本市場で面白みはありません。今後もより一層の自由化、効率化を求めていく必要があるとは思います。しかし何度も書いているように、金融ビジネス自体が大きな成長を目指すこと自体間違いだと思うのです。成長はそれ以外の分野が引っ張るべきであり、金融はそのサポートに徹するべきだというのが私の考えです。金融資本が巨額の手数料を取ることは、社会への背信だろうと思っています。この考え方の違いが、今回のサブプライム問題の表れ方に凝縮されているといったら言い過ぎでしょうか?

金融資本にプレッシャーをかける株主の権利も重要であり、どんどん発言させるべきだし、言うべきことはどんどん言うべきだと思うのですが、やはり最近の事例を見ていると特にアメリカではそれがどうもとんでもないところに行っていたとしか思えないのです。そして、こういうプレッシャーをかける株主とは何者でしょうか?直接的には大手の年金基金だったり、ヘッジファンドだったりということでしょう。ではその背後には誰がいるのでしょうか?それは年金受給者であり、資産家であり、個人のお金を預かる機関投資家だったりするわけです。こういう最終的な受益者とは、広い意味で「資産運用を通じて『楽してお金を増やす』こと」を目指す人たちです。世の中の実態を無視して高いリターンを求め続ける人たちと言い換えてもいいかもしれません。個人投資家も含めて、多くのファンドを含む投資家は10年単位で、特に株式などの投資についてですが、考えることをしなくなっているようです。その結果まともな経営者が経済環境によっていまは収益が落ち込むべきときである、という正論を吐けなくなっているのではないでしょうか?本来経済が基準とすべきなのはマネー事象ではなく実物経済であり、それを状況に応じて多少膨らませたり縮めたりするのが中央銀行の役割だと思います。マネー事象先にありきでそれに基づいて膨らんだお金に対する過剰なリターンを求められるほうはたまったものではない。いまは「当然」にそれが縮小していく時期に入っているのだと思います。

日本ではすでに熱に浮かされたバブルの崩壊を経て、何人もの企業関係者が自殺し、多くの人が職を失い、それでも一部企業の努力とがんばりで何とか踏みこたえてきました。今後どうなるかはわかりませんが、これまでのところ日本を持ちこたえさせているのは有体に言えば製造業の強さでした。

投資立国とか金融センター構想などを、英語もまともに出来ないのに移民の受け入れを拒む国民が語るのは、10年どころか100年ぐらい早いのではないかと思います。そしてそもそも善良な日本人には、金融業は向いていないのかもしれないですねぇ。

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