厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 金融商品の公正価格って

<<   作成日時 : 2007/11/10 12:41   >>

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本石町日記さんのところでも取り上げておられましたが、FAS157が今月15日を含む中間期決算から適用になります。こちらのかたhttp://ameblo.jp/993c4s/entry-10054247161.htmlも詳しく書かれています(大変有名な方なので勝手にリンク張って恐縮です)が、これまで自社モデルで評価してきたいわゆるレベル3といわれる取引価格の存在しない金融資産について、評価プロセスを含む開示範囲を拡大するものといわれます。これまであいまいにしてきた部分を明らかにせざるを得ないことや、ややこしい商品に対するデリバティブ(たとえばABX−HEなど)が発達してきたことにより、これまでのような自社モデルだけでの評価に耐えられなくなる(つまり別のやり方で評価替えせざるを得なくなる)資産がレベル3のなかから多く出てくるのではないか、という疑念が広がっているようです(私の解釈ですが違ってたらごめんなさい)。

これに関してぐぐっていたら、ちょっとテーマの違う面白いペーパーにぶつかりました。
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/jdps/2005/yoyaku/05-J-24.html
ある流動性の低い金融商品がひとつの主体に大量に保有されている場合、その公正価値というのはその主体が自分の持分をすべて処分したらきっと発生するであろう大きな値下がりを考慮して調整する必要がないのか、という論点です。米国では結局それは考慮せず市場で売買された値段があればそれを使うということになっているようで、日本でもこれが問題とされる機会は少ないように思いますが、資産の評価および価格設定という点で十分考慮すべき話には違いありません。

いまわずかな取引の成立によって示された「市場価格」と本当に売れる可能性のある値段のどちらが評価として妥当か、という問題は「価格」というのが極めて相対的であるという真実を改めて認識させられます。実際に利益を実現するまではそれは絵に書いた餅ですし、その逆も真実です。自分を含む多くの人々がわずかな量しかない特定の資産に群がって、さらにその派生商品を買いあさってそうして膨らませ続けた値段というものにそれほど意味があるとは思えないのですが、それもまたひとつの真実として認めようというのが現在の立場のようです。

評価損益を使うことにより、不可能だったことが可能になることがあります。評価という想像上のものをさらに紙の上の架空のものと交換できるようにすると、世界はどんどん膨らんでいきます。株式交換によるM&Aなどがいい例です。過小資本の会社が投資家をたきつけて株価を吊り上げ、それを元に時価発行でほかの会社の株式と交換して買収してしまう。これは株式の「全部」の価値が、実際に取引されるごく一部の量の株式の取引価格で評価してもらえるからできることです。こういうことができる企業の中にはPERなどのバリュエーションが極めて高い企業も多いのです。ペーパーに書かれていた大量保有問題を考慮してしまうと、実はこういう株式交換などにも理論的に影響が出そうな気がします。それゆえ、おそらく米国などでは金融業界にとって決して認められない議論になってしまったのではないかという気がします。

しかしながら、昨今のサブプライム問題ではまさにその意図的に無視していた部分が思い切りあぶりだされたといえましょう。もちろんそういう評価の世界を通じて創造される信用というものの価値はきわめて重要なのですが、もともと架空のもの、見込むべきでないもの(たとえばサブプライム層からの将来キャッシュフロー)を前提とした信用創造にはやはり評価上の修正があってしかるべきだったのだと思いました。これは将来キャッシュフローが人々の希望だけで成り立っているような新興企業の評価についても言えることでしょう。そういう企業が悪いというのではなく、評価する側がその前提の危うさを認識してそれをきちんと織り込むべきだということをワタクシは言いたいのです。

それにしても、金融商品の価格評価というのはつくづく政治体制に似ているなぁと思います。
市場価格を絶対視する立場は、どんなに阿呆な国民でもどれだけ投票率が低くても投票によって代表を選ぶ民主主義こそすべてである、という立場に似ています。一部公正価格算定を認める立場は、状況によっては独裁もしかたないよねぇという立場に似ています。それは結局のところ、民衆の持つ能力すなわち市場のもつ能力にどこまで信頼を置くか、そしてその結果について自らがきちんと責任を負う覚悟があるかどうか、というところにかかっているのだと思います。

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コメント(14件)

内 容 ニックネーム/日時
アメリカが静かに成りそうだと思ったら、オイルマネーが暴走を開始しそうですね。
「金融商品の公正価格」を考えるまともな知恵を発揮することは、どうも人類は不可能なのかも・・・・
とりあえずは代りのエネルギーをなんとかせんと、しかし、インドも中国も成長軌道に乗ってしまいましたし、この流れは相当に強い流れに成る可能性がありますね。
kazzt
2007/11/10 15:45
日銀の大量保有時に価格調整しようってペーパーですけど、不良債権処理時に各銀行が大量の優先株を抱え込んだときに、dilution考えると、その事業法人の発行株数を超えちゃってて、オプションプライング用のリスク中立を作れないという状況に陥っていたときに読んだことがあります。
このときはファンドや再生機構が後で出てきたときに、こんなに優先株の価値があるわけねぇだろうって叩かれていたのを思い出しますが、時代はやっぱりめぐるのですね。
公正価値はいつになっても頭が痛いです。
ぽん
2007/11/10 15:58
市場の「価格」は理論値や測定値も含め、市場参加者の共同幻想が具現化したようなものですが、移ろいやすく、本当に正しいのかどうかは誰にも分からない、でも、それ以外に何かの価値を示すものがない。民主主義(価格絶対主義)は最低の制度としても、それに勝るものがない、ということかもしれません。この仕組みに付き合っていく以外にないですね…。
本石町日記
2007/11/11 00:17
でBONDにいる人はだれでもわかっていることですよね。価格なんてないのですよ。いわゆるノービットの状態でマーケットメーカーはくるしまぎれるの、前日終わり値なんてことになって、あとは同様の格付け債券の終値なんてなるわけですが、
そんな馬鹿なところでだまされるのは、前日接待受けたどっかの理事さんぐらいでしょう。
で今回は唯一頼みの格付けも崩れたのでどうなるおことやら。
しかし、ここで馬鹿マスコミはJGBは大丈夫かなんたいわねーだろーな。
非上場債権
2007/11/11 01:14
kazztさんどうもです。おっしゃるとおり新興国への流れはしばらく続きそうですが、米国の混乱が波及するのではないかと一寸心配ですね。
厭債害債
2007/11/11 20:49
ぼんさんコメントありがとうございます。そうでしたか、日銀がそういう背景で書いたとしたら、結構興味深いです。
厭債害債
2007/11/11 20:55
本石町日記さんどうもです。まさに私の言いたいことをきちんと表現してくださってありがとうございます。最終的にはそういうことで、たとえ問題のある制度でも、それ以上思いつかないということは毛公ありますね。
厭債害債
2007/11/11 20:56
非上場債権さん、コメントありがとうございます。まさに、市場価格というのは客観というより主観なんですが、それでもそれに頼るしかない部分もあるでしょうね。本当に価格のないものは、逆に主観こそ本当の価値かもしれないと思ったり(たとえば美術品など)。
厭債害債
2007/11/11 21:00
そうですね。共同幻想としての相対的価値が具現化して、価格というものになるのでしょうか。いかんせんその共同幻想が一部の方々にあるうちはいいのですが、ある種の熱狂をあおり立てる存在が跋扈し始め、一般大衆に広がり始め暴走し始めて破局にいたるわけですかね。
非上場債券
2007/11/13 22:25
マスオカです。先日は酷いコメントごめんなさい。
コメントではなく荒らしでした。しみません。

害債さんと私とでは環境が違いますので善し悪しの話ではないのですが、このエントリの件、私は、レンズを変えて見るように方向転換しました。引いてみてます。
マスオカ
2007/11/14 00:23
アメリカでは第三者機関の目が厳しく、透明性のある経営が担保されていて、誰でも安心して投資できるという幻想。
ソシアルエコノミーであるのに、計量的に全てが把握でき、リスク回避が可能であるということとそれを担保できる第三者機関があるという幻想。
米国は民主主義国家であるから、常に資本主義陣営と自由のために戦っているという幻想。
このあたり久方振りに目が覚めるのかなー。
共同幻想
2007/11/14 00:35
非上場債権さん、重ねてありがとうございます。おっしゃるとおりかと思います。共同幻想というのはゆるいコンセンサスのようなものですが、政治の仕組み以上に簡単に崩れるのが市場の慣わしかと。
厭債害債
2007/11/14 21:05
マスオカさん、どうぞお気になさらず、気軽に書き込んでくださいね。
厭債害債
2007/11/14 21:06
共同幻想さん、コメントありがとうございます。今回はいろいろな「気づき」があちこちで生じたようですね。ただ、禁断の木の実をかじったような状態になってしまう恐れはあります。きわめて個人的な意見としては、知ってはいけないもの、知らなくてもいいものって世の中にたくさんあるような気がしていますけれど。
厭債害債
2007/11/14 21:09

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