厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS ARS(Auction Rate Securities)について

<<   作成日時 : 2008/02/18 13:52   >>

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サブプライム問題のとばっちりとでもいいましょうか、ARSのマーケットがおかしくなっているようです。ARSというのは基本的には長期債券なんですが、短期でオークション形式でファンディングコストを決めていくというやり方で運用される債券プログラムです。これまではスプレッド商品に対する強いニーズがあったこととこれらのARSがいわゆるモノライン金融保証会社の高い格付けによってサポートされており比較的高い利回りをつけていたことから、投資家のニーズも高くファイナンスに問題が生じることはありませんでした。
ところが、モノラインがおかしくなってくると当然のごとくこれらのプログラムもおかしくなります。ファンディングに入札する人がいなくなる、ということです。簡単に言えば発行体が資金調達が出来なくなります。
すでに問題が露呈したのは一部の州の学生ローンとかニューヨークの港湾公社(Port Authority)とかであり、いずれも重要な公益業務を担っている。ご存知の方も多いと思いますが、JFKなどNYの主要空港や橋や一部の鉄道などは港湾公社によって運営されています。学生ローンのファンディングがつかなくなれば学資が貸せなくなりますし、港湾公社のファンディングが着かなくなれば下手するとNYの主要な空港の業務やら有料道路や橋の業務がストップしかねないという問題です。モノラインの地方債への波及が問題視されていますが、それより一足先に現実にウィークスポットから血が噴出した、という感じでしょうか。
問題はレートは短期でリセットするものの、償還は長期ですので、投資家は自らの代わりに金利入札で資金の出してとなってくれる人がいなければ、それを誰かに売るか持ち続けるかしなければならないということです。オークションで資金の出し手が見つからなければ(failed auctionの場合)最終的には発行条件で定められている最高金利で投資家自身がリセットに応じるしかないと思われます(もちろん発行体がべつの調達ソースをすぐに用意できるなら別ですが)。いずれにしてもリスクの高まりで市場の意見が一致している中で投資家も高い金利しか提示できないでしょうが、このように高い金利がセットされれば類似の証券がそういった高い金利で評価され価格が暴落してしまいます。まさにいまそういう状況にあるといえます。
こちらの方のブログでも書かれていますが一部の企業ではこれらの投資によってかなりの額の評価損計上を余儀なくされる可能性があります。また日本の投資家にも全く無関係な話ではなさそうです。銀行のファンディングリスクの目安としてのTEDスプレッドはかなり縮小しておりますが、5年のスワップスプレッドなどは相当開いてきている。こういう状況も無関係ではなさそうに思います。

ただ、もっとうがった見方をすれば、この問題がモノラインビジネスの分割案と同じタイミングで出てきていることは何がしかの示唆かもしれません。こうやってみんなの困る問題を目の前に突きつけることで、政治がその意思を通しやすくするということなのかもしれません。ただ、いずれにしても問題はそう簡単なものではないということが改めて認識された格好ですね。

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鷹くん鳩ちゃんの金融市場よもやま話
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コメント(16件)

内 容 ニックネーム/日時
$3000bnの買い手の多くが、MMFでは?格付AA以下では買えません。入札失敗で保有長期化の恐れ。
私の経験から、そうした証券は、letter of creditつきのARか固定、長期の固定にアレンジしなおすことになるでしょうけれど。リスクウエイトのかかるLCのコストが高くなりすぎて、今の方法になっていった。muniは国内には入ってきてないですから、影響はないでしょうけれど、MMFへの影響がでる。個人消費だけでなく、muniにもcredit crunchだということでしょう。
ムニ専門の会社を新設して事業譲渡をはかり、対価として株式移転する新設合併あるいは新設分割の場合(必要な資本を外部から調達して)、残った既存会社の証券化の保証の受益者からは、衡平でない不当な偏頗的扱いとしてfraudulent conveyanceの訴えを出されるか、平等な扱いを求めて破産申し立てされる恐れがある。州保険当局は、どのような分割案を出すか。Good とbadの資産を分割するのはできても、保証の負債を分割? 
吉行誠
2008/02/18 14:57
吉行誠さま、示唆に富むコメントをいつもありがとうございます。勉強不足なのですが、もともとマチュリティーの長いARSをMMFが買えるのかどうかがよくわかりません。いずれにしてもおっしゃるとおり地方債ビジネスを分割すれば残りはゴミばこになるのは明らかで、どのような案を出してくるのか注目されるところです。
厭債害債
2008/02/18 15:25
上記に法概念にあわない用語法がありました。謝罪します。上記muni会社の新設分割。分割で、収益の源泉(ムニの会計上未収プレミアム、unearned premium reserves)と受領する権利も移転する。必要なoperation moneyは株式で調達する。
分割しない現状では、資金調達ができないので、事業を切り離せば、新設分割により調達ができる。増資によりdillusionするが、それにより利益が得られるので、既存アスベスト会社の株主保護には欠けない。
交付を受けた新設会社の株式を転売すれば(値上がりもあるだろう)、既存のアスベスト会社も、資金が得られる。
ただし、ABS,RMBS,CDO投資家、CDSヘッジの利益を不当に害し、ムニを有利な扱いをするとすれば、破産法上もfraudulent transferorになるのをどう回避するか。債権者は、銀行、投資家、年金を含む。
吉行誠2
2008/02/18 15:41
保証会社は、新たに保証を引き受け、保険料をとって自転車操業していないと、既存の(この場合増加する)保証履行のための原資が次第になくなっていくこと。また、アスベスト会社は、分割により、資産と負債が60%減少するが、残った資産で、負債をカバーできないのであれば、再資本化を図る必要がある。期限どおりに支払っていれば、realizedする必要でなかった時価算出を求められ、そこでいくら債務超過が推定されるか。
A格付け会社は、長期の保証債務の査定しなおしにくわえ、既存アスベスト会社をBBにするだろうから、CDSの担保をもとめ、銀行はいっせいにオンバランスする必要がある。いずれにしろ、州当局案では、アスベスト会社の債権者は、泣くか破産法申請しかない。
吉行誠
2008/02/18 15:42
auction証券は、最終満期は長期ですが、買い手が次の現れたらputtable optionつきで、借り換え同様の効果では?短期でつないでいるだけで。NYとNJのport authorityの橋は、1億ドル、年20%(前回4.3%)の週払いで、そのまま買い手がつかなければ、リアレンジでしょう。 
ところで、muni's newcoをウォーレンおじさんによる評価は、既存プレミアムの150%を請求してましたから、こちらも再資本化は、大変か。もちろんCDOアスベスト会社は、減資になるでしょうね。 
吉行誠
2008/02/18 15:49
上記、正確性を欠いてました。
Uncle Warrenは、モノラインに、プレミアムの150%の支払いで、資本拠出を申し出たことを意味します。だからnewcoを作っても、相当の資本が必要でしょうか。ムニ保証市場の、premiumは、20bpsで、unearned premiumが$2bn。Fitchのレポートによれば、defaultは、景気がよいときで、0.6%、悪ければ、1.5%。前者ならやっていけるでしょうけれど、後者になってきたとき、資本不足になる。
吉行誠
2008/02/18 15:55
免税MMFを含め、投資適格証券については、rule 2a-7(Investment Company Act of 1940に関する)で、ルールは以下。
http://209.85.175.104/search?q=cache:6dJ8EXGKBkQJ:www.sec.gov/rules/final/21837.txt+Rule+2a-%E2%80%8B7&hl=ja&ct=clnk&cd=4&gl=jp
確かにhard put以外は、同改正ルールによって、MMFによる投資は禁じられていますので、調査用。
しかし、以下WSJ,CNN,DJ、FT皆MMFが購入者になっているとの不安をかき立てていたので、ルールを読まないで書き込みました。ご迷惑を失礼。
http://online.wsj.com/article/SB120269672731158043.html
http://online.wsj.com/article/SB120308876297871615.html?mod=sphere_ts
吉行誠
2008/02/18 16:28
上記関連記事
http://money.cnn.com/news/newsfeeds/articles/djf500/200802131550DOWJONESDJONLINE001016_FORTUNE5.htm
Banks Continue To Pull Back From Auction-Rate Market
http://www.ft.com/cms/s/8d64f1e8-da84-11dc-9bb9-0000779fd2ac.html
Municipalities face jump in borrowing costs
吉行誠
2008/02/18 16:29
 万が一変動利付債券全般に飛び火したとすると、国内登録の米ドルMMFには、かなり痛い可能性が。どれでも結構ですので、お手許の米ドルMMFの運用報告書をごらんいただくと、変動利付債券は概ね一割程度(多いものだと二割以上)組み入れられてます。あれ、MMFの平均残存期間って長くても一月程度じゃなかったっけ、と、目を凝らすと、「変動利付債は次回利払日までの日数で残存年限を計算する」等の表記が・・・
元IB現PB
2008/02/18 18:03
吉行誠さん、さらに詳細なコメントを恐縮です。ワタクシがなにか付け加えることもないのですが、いずれにしてもgood business と bad businessとに切り分けるやり方は訴訟リスクが高いという点おっしゃるとおりかと思います。http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=aRgbDoRUoSM8&refer=home

元IB現PBさん、どうもです。ちょっとテーマは違うのですがワタクシも以前あるファンドの説明を聞いたときにキャッシュポジションでえらい損が出ているのを不思議に思ったことがあり、質問したら「デュレーション270日以内はキャッシュ」といわれてちょっとびっくりした記憶があります。要するに満期が長くても利率のリセットが短い間隔だとキャッシュ扱いになることもあるのだと認識しました。上の吉行さんのコメントにもありますが、MMFではARSは買えないのですよね?
厭債害債
2008/02/19 01:29
FASB基準にARSは会計上cashに区分しないと言うのがあるので、誤解されてませんか。規制上、hard putのdemand feature(demandから別のdemandへ移るものOK)であれば購入はできます。VRDO、TOBはMMFでは一般的で、MMFの目論見には説明がでてきます。Rule 2a-7 §10-iii投資適格証券にはguaranteeも含まれます。closed end mutual fundでは、auction preferredの発行で、資産として一般にtender offer、demand型も保有されますが、MMFでは、売却が強制できれば、期間にかかわらず保有できることになります。
吉行誠
2008/02/19 07:03
FASのcash equivalentは87年以来20年続いたのですが、現状にあわず、2007年改正で、auction rate型(tender option, variable-rate demandも含めて)short-termに区分すると去れましたが、cashtとして扱わない。VRDO,TOBのMMF投資規制は、rule 2a-7にあります。ARSで巨額損失を計上したBristol-Myersなど企業の余資運用やfamily trustsで投資されています。
吉行誠
2008/02/19 08:15
はじめまして。ARSを検索してたどり着きました。
とても勉強になります。
私のブログで紹介させていただきました。
今後も楽しみにしております。

http://takahato.blog112.fc2.com/
鷹鳩
2008/02/20 07:36
吉行さま、重ねてコメント恐縮です。2a-7の解釈としてはおっしゃるとおりなんでしょうね。もうすこしMMFなどの実態を調べてみたいと思っています。私が聞いたのはおそらくABCPの話だったと思います。

鷹鳩さまコメントありがとうございます。過分なお言葉恐縮です。これからもよろしくお願いします。
厭債害債
2008/02/22 07:23
「この問題がモノラインビジネスの分割案と同じタイミングで出てきていることは何がしかの示唆かもしれません」
最初はそんなはずが...たまたまだろうと思ったのですが、入札失敗すれば、通常は、証券会社が引き受けるのですが、今回は、reputationを思慮せずに、辞めた。Citi,GSなどのあげられていた。この業務に使う資本がなく、ポジションが取れなくなったというのが事情にしろ、もとともモノラインの主要株主のシティだけに、入札失敗にもっていって、ムニに調達困難な状況を作り出して、公的資金で出させるためにとった行動とも思えてきます。newsをウオッチしてましたが、そういうコメントは出てませんが。
いずれにしてもムニは、VRDOを確定金利にすることになって、大変でしょう。
吉行誠
2008/02/22 08:57
吉行さん、どうもです。ワタクシは結構陰謀説に走りがちなところがあって自らを戒めるのですが、アメリカ生活の実感としては、多少そういうところは否定できないなぁと思うのです。CNBCなどを通じてAMBACの救済の話が流れていますが、ここに来て一気に動き出しそうな予感がします。
厭債害債
2008/02/23 16:08

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