厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 先週の雑感

<<   作成日時 : 2008/03/23 08:32   >>

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いろいろなことがありましたね。ベアスターンズのJPモルガンチェースによる救済買収ももちろんですが、市場参加者としてはそれ以上に異常なマーケットのゆがみを目の前にして、なんだか久しぶりにいいものを拝ませてもらいました、という感じでした。
JGBでいえば5年と7年の金利の逆転。先物のところだけが異常な低い金利がついている。この辺はどらめもんさんのところに詳しいのですが、物価連動国債、変動利付国債の異常な安さ、30年国債金利がスワップ金利よりも上とか、世銀債がライボフラットで市場に出てるとか。で、火事場ドロボーみたいにもう必死でなんか作ろうと思ってやってたわけでして、まあ結果は秘密ですが、正直なところブログ書いてる暇はなかったという感じです。まあ水曜日以降はわれわれも含め機関投資家と思しき人々の怒涛の超長期買い(買うしかないでしょこれ)で、市場はようやくまともになりつつある感じですね。イースター前に一戦終わった感じです。

為替もコモディティーもなんだか急に雰囲気が変わりつつあるようです。

最近の流れの中では、できるだけ何でも時価評価し決算の頻度を多くする傾向にあり、日本でも四半期決算という流れになっています。ところが、今回のサブプライム問題でおきたことは、時価が取れないために価格をゼロ近辺で評価せざるを得なかったり、信用デリバティブのように本来の対象企業の信用の質とは別のところで取引が行われ勝手に値段が吹っ飛んだり、まさに市場主義のもつ欠点とは言わないまでも不合理性が明らかになっているように思えます。

ワタクシの考えは、基本的には時価主義でありますが、不必要な決算頻度の増加は有害であろうと思います。たとえば毎日決算して配当するとなるとそれは企業がデイ・トレーダーと化してしまうことになります(別にデイトレーダーを悪いというのではありません、企業がそうなることに問題があるというのです)。四半期でも本当は短すぎるのではないでしょうか?
もちろん適時な開示は絶対必要ですが、それと決算は別です。決算しようとすると、必ず数字を作るという誘惑が生まれます。それによって自らの報酬や評価が決まるとなればなおさらです。そうした暗いインセンティブがマーケットにゆがみをもたらし不要な負荷をかける(場合によっては金融業者などに特需をもたらす)ことになるのだと思います。

本来市場における価格変動の多くはノイズであります。以前に紹介した「まぐれ」という本の中でも年率期待リターン15%、ボラティリティー(つまり不確実性)10%の運用スキームをやっている元歯医者さんを仮定して次のような例をあげています。

(引用開始)
・・・ということは、任意の1年間で儲かる確率は93%になる。でも表3.1(略)が示しているように、短い期間で見ると任意の1秒間で儲かる確率は50.02%になってしまう。とても短い期間ごとに観察してもわかることはほとんどなにもない。でも、歯医者さんの心はそうは言ってくれない。彼は感情的になり、損をするたびに悲しむ。画面に赤い字で損をしていることが表示されるからだ。儲かっていると彼は喜ぶけれど、そんな喜びは同じ額だけ損をしているときの苦しみほどには大きくない。
 毎日、相場が終わるころになると、歯医者さんは精神的にくたびれ果てている。自分の成績を毎分ごとに見ていると、(一日8時間相場が開いているとして)毎日241分はうれしい思いをし、239分は悲しい思いをする。1年ならそれぞれ60688分と60271分だ。悲しいときのマイナスの喜びが、うれしいときの喜びよりも大きいなら、高い頻度で自分の成績を調べると、歯医者さんの喜びは大幅にマイナスになる。
 一方、歯医者さんは、証券会社から月次報告書が来たときにだけ自分のポートフォリオを調べるのだとしよう。この場合、全体の67%の月で儲けが出ると期待できて、1年のうちうれしい月が8ヶ月、苦しい月が4ヶ月だ。先ほどと同じ歯医者さんが先ほどと同じ戦略で取引しているのに、である。さて、歯医者さんが1年に1回しか自分の成績を見なければどうなるだろう。今後彼は20年生きるとすると、嬉しい年は19年、苦しい年は1年だ。
(引用おわり)

(ナーシム・ニコラス・タレブ著(望月衛 訳)「まぐれ」ダイアモンド社 P90)

運用機関の評価においてはもちろんパフォーマンスの変動の大きさを市場の変動の大きさと比較するわけですが、パフォーマンスの測定期間が一月とか3ヶ月とか1年なのですから、その測定期間の中で起こった細かい動きは後からはパフォーマンスデータとしては無視され、あくまでいろいろなイベントでどのように行動したかが問われるだけです。たとえばですが、それをさらに細かく1日単位でパフォーマンスを見ていくということになると、運用機関の側もそれに合わせた行動をとらざるを得なくなり、ノイズが増幅するだけなのです。そしてそれが増幅しすぎるとノイズに影響された参加者が市場自体を壊してしまう。

今回の市場の混乱も始まりはサブプライムのデフォルト増加で、サブプライム関連商品の価格が下落したことですが、それが瞬く間にヘッジファンド危機になりデレバレッジを生み時価評価に耐えられなくなった機関が解約やら投売りにはしり市場を崩壊させた。まあ証券化商品そのもののデレバレッジにかかわる部分はそもそもがいんちきな部分が多いので致し方ないのですが、倒産の恐れのない企業のCDSが異常に高いとか国債金利がスワップを上回るとか、こういう壊れた状況まで時価として受け入れることに抵抗を覚える人は少なくないのではないでしょうか?市場価格というのはひとつの客観的指標「だった」のですが、それがほとんどない世界での時価をむりやりとることは構造そのものにかかわる危険があります。

ではこれに代わるものがあるのか?といわれると言葉に窮します。言わせてもらえば、この時価主義というのはある意味投資の世界における「民主主義」であるということができると思います。それは二つの意味において。ひとつは常にポピュリズムに陥る危険があるという点において。そしてもうひとつは主観的な価格付けを行う一種の「独裁」よりはましという意味において。ただ、いくら民主主義がましだといっても、しょっちゅう選挙してはいけないのです。民意(市場価格)の測定頻度を細かくしすぎると政治(市場)が混乱してしまうことは、同じような選挙制度で2院を選んでいる日本の状況を見れば明らかではありませんか。

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コメント(8件)

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300人委員会(オリンピアンズ)
http://elbaal.hp.infoseek.co.jp/olympians.htm
なぜ反ロスチャイルドなのか(4)−銀行という名の搾取システム−
http://www.anti-rothschild.net/main/04.html
zowgenさんの動画一覧 | 無料動画・おもしろ動画のムービーポータル-AmebaVision[アメーバビジョン]
http://vision.ameba.jp/search/user.do?user=zowgen
4489−12 ロスチャイルド考
http://www.marino.ne.jp/~rendaico/seito_palesutina_yudayaginmondai_roschaild.htm
通りすがり
2008/03/23 16:55
通りすがりさん、コメント欄ですので、コメントにてお願いします。ワタクシは過度の陰謀史観に与しませんが、そのような見方をする人がいるという意味で削除せず残しておきたいと思います。
厭債害債
2008/03/23 17:19
米国会計基準において公正価値の測定および開示について定めたSFAS157を読みますと、公正価値は「出口価格」つまり資産であれば売却可能価格により測定することとされていますが、現在のように流動性の危機的状況になると、証券化商品を無理やり売却しようとすると叩き売り状態になり、そこで成立した取引価格が更なる価格下落を誘発してしまっているような気がします。
SFAS157には、他にも負債の時価評価なども出てきますが、見積もり要素が多くなりすぎて、信頼性や理解可能性といった実務での適用可能性に大きな問題があるように感じます。
大昔のようなガチガチの取得原価主義会計が良いとは決して思いませんが、最近の時価会計は少々行き過ぎなのではないかというように思います。
政治において、純粋な資本主義も共産主義も失敗したように、時価主義も技術の進歩等を勘案しながら適当な落としどころを探っていくべきなんじゃないかと思います。
SOS
2008/03/24 00:06
SOSさん、どうもです。ワタクシの言いたいことを的確に捉えていただき恐縮です。思い出したのは、2001年以降のアメリカのハイテクバブル崩壊での株価急落後、企業年金の積立不足(要するに負債サイドが金利低下でむしろ増えているときに資産が減るという事態が生じた)への対応として負債の割引金利を国債から社債に変えたことが思い出されます。要するにあまりエエカッコせずに、長期的にみんなが幸せになる方法を考えればいい、ということなんでしょうね。
厭債害債
2008/03/24 00:41
厭債害債さん、いつもいろいろな情報をありがとうございます。時価会計=民主主義=選挙はうまい事いいますね、おっしゃるとおりです。ただ、選挙は民が選ぶのに対しプライシングは、基本的に勢いのある方向に流れがちで・・・・難しいですね。ところで、BSの株価見直しの話には驚きました。$2.00といいながら、やっぱ$10かもしれないなんて、笑うしかないですね。
フレッド
2008/03/24 16:35
日本人はこの概念に対して極めて対極的な反応しまよね。時価は公正に天から与えれれるように、一意に決まるべきもので、それにもとづいて会計処理が厳密でなければならないという、欧米にはない馬鹿な潔癖主義。
で方や他の財の世界では、そんなだまされたほうが、まけやんという世界。でこれは金融の世界以外では普通の話で、でニーちゃんいくらでんねんっていう世界で、公正時価なんて資本主義社会ではない正確にいえば、一物2価は常に存在するということ。そんなことにこだわるのはまさに統制、計画経済そのもの。
でおっしゃつように年がら年中決算してたら、人はノーローゼになるでしょう。
時間軸で運用形態いくらでも変わるのですよ。昔年金運用評価やってたときに、あるアクティブで採用した運用期間がVARを使って一ヶ月ごとにポートフォリオを最適化しますといったので、あきれた記憶があります。
時価はすし屋の値札
2008/03/25 01:09
ITの進歩で、データベースさえ整備しておけば、毎日決算する事は可能になりました。こういう状況では、毎日決算をするのは決して不利益ではないはずです。日本の企業間持合と異なり、サブプライムローンの保有有価証券への取込みはあくまで利殖対策ですから、他の経営問題と同様のITを駆使した利殖チームの創設が問題となるでしょう。どうもニュースだけしか情報源は無いのですが1人の優秀なトレーダーに任せているのが間違いであってチームで利殖に対するプロジェクトで対応する必要があるのではという問題点を浮き彫りにしているように感じます。
日本型の持合にしても然りです。持合っているという事は互いの会社は友好的なはずですから、そういうチームが合同で互いの経営内容の解析情報の交換が可能であり、そういう行為をしてこそITが有効に活用されたと言えるのではと考えます。
ITのより本質的な利用を望むものであります。
現在の表面的な利用のみというのは、まだまだITが利用されていない証拠なのではと見受けられます。
hbar
2008/03/25 06:07
皆さんからコメントをいただいたのですが諸般の事情でお返事が遅くなっております。申し訳ありません。

フレッドさん、そういっていただけるとうれしいです。ところでベアスターンズの株価ですが、買収がもともとFEDが裏にいることが明らかですから、合併そのものが流れることはないので株主も強気に出られたのだろうし、その結果こういう結果になったのでしょう。ま、これ以上は無理でしょうね。

時価はすし屋の値札さんコメントありがとうございます。まさしくおっしゃるとおりで、たまたま「閉店在庫一掃ぶん投げ大安売り」している店を例に挙げてほかの商店もその値段で収益計算しろって言うようなことはやっちゃぁいけないんだと思いますね。

hbarさん、どうもです。決算は今でも毎日やろうと思えば可能ですが、私が言いたかったのは、それが意味のある情報となりうるかどうかということです。投信や特別勘定などでは毎日出入りする可能性のある顧客の持分を厳密に計算する必要がありますが、普通の事業会社ではあまり意味があるとは思えません。
厭債害債
2008/03/28 03:21

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