厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS メディアを裁判官にするな−野村インサイダー事件から学ぶべきこと

<<   作成日時 : 2008/04/24 11:02   >>

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野村證券のM&A部門でのインサイダー取引が発覚し、大きなニュースになりました。機関投資家レベルでおそらく各社とも対応の検討を迫られたはずです。というのも、ここ数年の流れとして、不祥事は取引発注停止ないし保留という投資家各社のルールが確立しつつあるからです。

ワタクシのところもミーティングを開いて一応の結論を出しておりますが、世間一般には新聞報道にあるように同社に対する株式や債券の発注を見合わせているところが多いのではないかと推測されます。

最終的には行政処分かどうか、が一つのメルクマールになるのですが、現段階では一つの基準にされるのが準公的機関の対応であり、例えば読売新聞4月24日の報道では企業年金連合会が発注を一時停止していると書かれています。そうなりますと、連合会と関係のある機関投資家はそれに反する判断をすることは事実上不可能となります。直接こうした年金基金と関係のないところでも、様々な社会的影響を考慮して一定のルールを定めているところが多いと思います。しかしながら、とりわけ今回の場合、投資家サイドは慎重に対応する必要があると考えています。つまり、本当に野村證券という会社そのものの体質に問題があったのかどうか、という見極めなしに、メディアの報道だけで勝手に我々が「裁く」のはいくらなんでもやりすぎだろう、という思いがあるからです。もう一つの問題は、発注停止にする方は、例えば外資などの世界中の不祥事まで本当に把握しているのか?もちろん行政処分などはわかるでしょうが、メディアが騒いだ段階で発注停止にしているでしょうか?これをやっていないのであれば、ダブルスタンダードといわれても仕方ないと思います。

日経の記事(24日)にもありますように「野村は国内金融界で『最も厳格で模範的な内部管理体勢』(大手監査法人)」とされていたことは我々の眼から見ても確かなことです。投資家の事務部門から最も畏敬の念を持って見られていたのが野村の事務部門です。間違いもほとんどなく、出来ないことは出来ないといい、まさに信頼の置けるカウンターパーティでした。その遺伝子は今なお受け継がれていると思っています。一般的に責められる理由として、管理の怠慢とかあれば当然なのですが、同じ記事が同業他社の法務担当役員の話として「同じことが起きれば防ぎようがない」と書いています。同社は「誓約書」まで出させていると聞きました。個人の他社勘定での取引など、到底監視できるものではありませんから、事後的な対応はともかく、事前に防ぐのは殆ど無理でしょう。
唯一責められる点があるとすれば、過去の事例が多いということです。しいて言うなら社員の私生活に渡ってきちんと監視していなかったということでしょうか?もちろん、我々もそうですが、投資のフロントの人間は個人の株取引については厳格なルールがあって、私など事実上個別株取引は全く不可能です。M&A部門なども同等以上に厳しいはず。そのルールを破って他社の口座で取引した社員がいたことを責められるとしたら、企業では社員の日常生活すべてにわたって監視せよということになりますね。では、皆さんはそういう会社で働きたいと思いますかね?

今回ちょっと奇異に思ったのは、メディア側の対応がかなり前のめりであった、ということです。メディア側から翌日に取材があって取引を停止するかどうかをいきなり聞かれたところもあったそうです。そして読売の見出しが『「野村離れ」加速』となるのですが、今回の読売の動きは、なんとなく結論ありき、という印象を受けます。いずれにしても、国際的にはどうかわかりませんが、今回の事案についての機関投資家などの発注停止というのは、やややりすぎというか過剰にコンプライアンスを意識しすぎた保守的な対応だと思います。言い換えるとこれも「コンプライアンス不況」の片棒を担ぐ行為なのです。その背後にあるのは事案の本質を見極めない事実上の判断停止なのです。

これまで日経新聞社員などのインサイダーなどが報じられたこともありましたし、NHK職員のインサイダーが報じられたこともありました。メディアの持つ影響力といういみでは社会的責任という意味では、これらの事案のほうがよっぽど重大なのです。今回発注停止を決められた機関投資家の方々にお聞きしたいのですが、これらの事案が発覚したとき、日経新聞の製品の購読をやめたのでしょうか?NHKを見ないで視聴料を不払いにするよう従業員に指示されたでしょうか?

ちょっと本題からずれましたが、言いたかったことは、本当に裁かれるべき行為かどうかを実態的に判断する義務は投資家サイドにもあるということであり、メディアの報道だけで軽率に行動すべきではないということです。それはある意味メディアへの盲従とおなじことであり、情報操作されやすいということです。市場の参加者の大人の対応が望まれるところです。

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内 容 ニックネーム/日時
『そのルールを破って他社の口座で取引した社員がいたことを責められるとしたら、企業では社員の日常生活すべてにわたって監視せよということになりますね。』

誓約書を出させていたというのは何の防波堤にもなりません。私も、もし本当に再発を防ぐのであれば、私生活も含めて全て監視する以外に方法は無いと思います。

そこまでやらなければ防げない違法行為を本気で防ごうとした場合に企業や会社や個人が支払わなければならないお金や労力や時間その他のコストを本当に受容する覚悟があるのかどうか。

そういった具体的な議論をオープンに進めていくしかないと思います。

『では、皆さんはそういう会社で働きたいと思いますかね?』

もうこれは本当にその通り。あまりに厳しくしすぎて金融/証券業(の労働力)は全て規制の無い国に移動してしまうという事態さえ想定しておく必要はあります。

ただ、先日の害債さんの『なんとなく釈然としません・・・』の記事の様に、責めるべき事は責めておかないといけないとも感じますが、バランスが難しいですね・・・。
つめられるべきはCommitmentの在...
2008/04/24 13:57
インサイダーは、当事者が利益を得たからインサイダーになるわけではなく、行為そのものが損得にかかわらず、問題なわけです。雇用リスクという点もあるのですが、監視制度にしても、イタチゴッコの要素が強くあります。ミッション、そして、ブランド・プライド、精神的視点になりますが、本来はそういう教育と並行したマネジメントが必要な気がいたします。リチャード・ワーグマンでしたが、「情報選択の時代」まさに目利きが求められる時代ですね。では。
阿難
2008/04/25 09:11
おはようございます。
よく不祥事は、起こした後の対応が最も重要だと言いますよね。今回も事後対応は悪くないですよね、NHKの時とは比べ物になりません。
ただ個人的には、ある程度の発注停止等は仕方ないと思います。(セールスの方はきついでしょうが・・・)運用資金≠自分のお金なので発注者の一存はいかんともしがたいですから。でも野村ならそれを倍にして跳ね返してくるでしょうね。ただ、中国人に対する風当たりが必要以上に強くなって、以前北系の方が受けられてたような差別が、日本で再発しない事を願います。
フレッド
2008/04/25 09:17
 現段階での発注停止は疑問、と言う趣旨には同意します。ちょっと防ぎようのない事件ですしね。
 無理筋を承知であえて野村の問題点を指摘するとすれば、「容疑者がポジションの割に多くの案件を知りすぎていたのでは」という点です。案件はコードネームを使い、部内でもPTを超える報告は行わない、アシスタント格は本来のPTをまたぐ場合は重要ページには触らせない、と言うのはM&A部署の基本ですが、日系の企業(少なくとも私の勤めていたとことは)は、こと「部内」「アシスタント格」の話となると、どうしてもその辺はルーズなことが多い傾向にはあったと思います。まぁ、これで同様の事態が防げるか?と言っても、インサイダー銘柄数が少し減る、くらいの効果しかないでしょうが。
元IB現PB
2008/04/25 14:52
コンプライアンスで見抜けなかったことからすると,厳罰で後に続く犯罪の見せしめにする米国式がよいと思いますが,
野村的には誓約書で十分と考える甘さがあったのかなと…友人の場合は防げませんが,同業他社の社員の口座開設には所属証券会社に照会をとるなどの業界全体でのインサイダーを防ぐための共同コンプライアンス連絡網などがあってしかるべきかと思います。
EURO SELLER
2008/04/25 21:29
少なくとも社員はそれなりの人でしょうか。しかしその国は資本主義国家ではない、未だに食品問題を認めないし、人権も認めていない。得たいの知れない身分で他国に行って、政治運動をやる人をその国の主権侵害して、平気でぶちのめす人たちに西欧流のメンタリティーを求めてもな。
私は国際人
2008/04/25 22:51
この事件は、企業風土の問題だと思います。企業のDNAと言い換えてもいいです。残念ながら野村と言えでもそうした状態なのでしょう。こうした事が起こる企業風土が問題であり、テクニカルな管理を強化することで解決する問題ではないと思います。テクニカルな管理を強化しても全ては防げませんし、むしろ弊害も多いでしょう。*ちなみに今回の手口は巧妙でも何でもなく、証券会社においては古典的な手口の一つです。

今回の手口は巧妙でも何でもありません。
Capri
2008/04/25 23:34
まとめてコメントのお返事で失礼します。改めて自分の考えを申し上げるなら、インサイダー自体は証券市場の信頼性を失わせる許しがたい行為です。阿難さんのおっしゃるように、行為自体が問題であること疑いありません。当事者はそれこそEUROSELLERさんのおっしゃるように見せしめ的厳罰でもいいと思います。ただ、会社への処罰というのは今後会社の管理体制に欠陥があったか、言い換えると現状で防止できたのに防止できなかったかという点をきちんと詰めてから判断すべきだと思っており、新聞がかなりバイアスのかかった方向性で「取引停止」とか「野村離れ」とかいうガイダンスを積極的に行っているときに、関係者が安易に乗ることは非常に危険だと思ったのです。
その意味で、確かに誓約書では不十分かもしれないと思いつつ、いまの環境ではとめようのないこういう行為が発生したときの言い訳として用意していたのも仕方ないと思います。
厭債害債
2008/04/27 13:49
続きです。
結局インサイダーなんて元IB現PBさんのおっしゃるように防ぎようがなく、個人がやろうと思えばやれる人はいくらでもいるのです。Capriさんのおっしゃるように今回の手口も巧妙なものでも何でもありません。その上でなおできてしまうというのが実情なのです。事後的に個人を処罰するしかないというのがワタクシの考えです。
フレッドさんや私は国際人さんのおっしゃるようにこれが民族的な観点で捉えられないことを祈りますが、やはり違う価値観の人々を教育することの難しさもひとつテーマになります。
厭債害債
2008/04/27 13:49
つめられるべきはCommitmentの在...さんのコメントにありますように、まさに、防ぐためのコスト、厳しさのレベルによる萎縮効果によるマイナスなど、をいろいろ考えた上で妥当なレベルの内部統制を模索する作業が必要になると思います。
厭債害債
2008/04/27 13:53
この件についてもうひとつ補足させていただきますと、いろいろな人がやはりcapriさんのおっしゃるように野村の企業風土の問題ではないかともおっしゃってます。たしかに、そういう面はぬぐえないし、昔は平気で「ファイナンス銘柄」と称したインサイダー情報の流布があちこちでありましたしね。
一方で同業他社の執行役員クラスでも、本件で会社が責められることに関してはきわめて同情的意見が強いです。自分の立場がそういうものに近ければ近いほどそういう意見を持つと思います。この辺のバランスがやはり難しいところですね。
厭債害債
2008/04/27 21:55

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