厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

アクセスカウンタ

zoom RSS 階級闘争

<<   作成日時 : 2008/04/15 23:53   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 2 / コメント 7

今回の金融危機の中心にある問題の一つがCDOなど証券化商品の流動性欠如と価格下落であることはご存知のとおりですが、CDO内部では投資家による「階級闘争」が始まっているという記事がFTに書かれていました(4月15日付け”’Tranche warfare’ breaks out over CDOs”)

ご存知のとおりCDOなどの証券化商品は多数のアセットをプールにしてそこからのキャッシュフローを束ねて投資家に分配するものです。一般にいくつかのTranche に分けられ、上位のもの(最上位はSuper-senior)は下位のものより優先的に定額のキャッシュフローの配分を受けられ残余財産分配においても当然優先します。言い換えれば上位の投資家は下位のTrancheの投資家が先に損失をかぶってくれるために安全性が高いとしてAAAなどの高い格付けを得ていたわけです。気をつけなければいけないのはシニアと称してトリプルAの格付けを持ちつつも、スーパーシニアに劣後するトランチが存在するということで、わずかばかりスーパーシニアより利回りが高いことからこういう下位シニアのトリプルAを購入して社内的には「シニアのトリプルA」と説明して通してきたところも多いはずです。スーパーシニア以外の下位の投資家はそうしたファーストロスを引き受ける代わりに相対的に高い利回りで運用できる。最下位のエクイティーホルダーはそれより上位者に定額で配分したあと残余で儲かった分を全部もらえる、これがまあ共通の約束事です。

ところが、きちんと目論見書などに書かれていながら見落とされたというか無視されてきた条項が最近問題になっているのです。それは一定のイベント(例えば一定以上の信用不安事由とかCDOそのものの格下げとか)が生じたときにデフォルト事由となり、上位の投資家がCDO全体のインカム(キャッシュフロー)についてコントロールを持つという条項です。その結果、格下げされただけでキャッシュフロー自体にまだ深刻な影響が出ていなくても、それによって大きな評価損を蒙った銀行などの最上位債権者によってコントロールがにぎられ、CDOの中身のliquidationすなわち売却、精算という方向に行きやすくなるのです。持ち続けていれば多少なりともフローがあったはずのものが、安値で投売りすることで当然下位の投資家にはお金が配分されない事態(つまり全損になる)が生じるのです。まさに階級闘争。大貧民ゲームとでもいいましょうか。そして、liquidationが選択された段階でまさに”game over”ということです。これについて今後異なる投資家クラスの間での訴訟が増える可能性もある、と記事には書かれています。

ところで、意外に多くの投資家がそういう事態が生じるリスクについて、目論見書に書いてあってもちゃんと読んでいないかあるいは意図的に無視していたようなんですね。後から文句言っても遅いのですよ。そういう手間を惜しむならばこういう金融商品には投資しないことです。今回の金融危機の根源として金融工学の濫用という面はあるにせよ、書いてあることを読まないのは投資家サイドとしてはあまりにも無防備というか甘すぎるのですね。


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
欲の皮
大体、人間と言うのは欲の皮の突っ張ったと考えておけば良い。 その欲の皮を最大限に突っ張らせて成功を収める社会が資本主義だ。 その上澄みが金融と言う世界の本質だろう。 ...続きを見る
よく考えよう
2008/04/16 06:02
証券化商品の時価評価を考える場合にはこの手の条項の有無をどう勘案するのか:保有しているCDOの契約条...
このエントリーは公開時刻自動設定機能によりエントリーしております。 今までのサブ ...続きを見る
法務の国のろじゃあ
2008/04/17 13:33

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
攻めるのは簡単なのですが、自分の守るというのはとても難しいと最近ようやく気が付きました。今、改めて実感です。
うさこ
2008/04/16 00:46
おはようございます。
FTの記事、直球で面白かったです、にやにやしながら読めました。 
購入時の不動産バブリ〜真っ盛り時、同じ格付け(特にAAA)であれば、高い利回り選んだのは仕方ないと思います。思いますが・・・正に今回の教訓は”うまい話には裏がある”ですかね。
東証の売買高、あんなに細くて大丈夫ですかね? 8千円割ったときでさえ、もっとあったような気がしたんですけど?
フレッド
2008/04/16 09:19
 元証券化チームの人間として弁解させていただくと…
デフォルト時のシニアコントロールは、証券化商品にはしばしば付随してくるクローズなので、私がバイサイドとしてメザニンを買う場合には、かなり初期段階でチェックしてます。半ば常識ともいえる項目だと思ってました。機関投資家クラスが認識してないなんてことがありうるのでしょうかね。日本で言えば、雑金や財団が証券営業のいい加減な説明のままにノーチェックになっちゃったイメージなのでしょうかしらん。
元IB現PB
2008/04/16 10:02
遠まわしにこの条項のことをエントリーではにおわしていた部分があったのですが・・・表の議論になったのですねこれで。
ということは、契約内容次第では「持ち続けていればいつかよくなるかもしれない」とは言い切れないことになりますよねえ、こういう条項がある場合は。
ろじゃあ
2008/04/16 13:48
うさこさん、どうもです。その立場になってみないとわからないことって確かにありますねぇ。お仕事がんばってください。

フレッドさん、どうもです。証券化商品に投資するぐらいの人は、いろいろなケースを想定して置く必要がありますね。東証の売買高、外人が逃げているうえに日本人が内向きになっていますね。

元IB現PBさん、どうもです。すみません、気を使わせてしまって。まさにおっしゃるとおりなんですが、海外でも相当いい加減な慣行が横行していたということです。

ろじゃあさん、どうもです。そうでしたか、このことでしたか。やはり専門家の方々にはこの辺は気になっていたのですねぇ。




厭債害債
2008/04/17 01:10
機関投資家としてかのんきなこと云ってる人は、何もわかっちゃいないですよ。この危険性は誰もわからないままつっぱしっているうちは、誰も読まない。従ってそんなのおかしくなって最後のあがきで倒産先に殺到して、植木ばちまでもっていこうとするのと、同じこと。あんたらだってつい先日まで誰もわからなかった振りしてたでしょう。あーあいつもと同じですよ。こういったお話は。
そんなの読んだって誰もわからんでしょう
2008/04/19 18:57
そんなの読んだって誰もわからんでしょう、さんどうもです。そうですよね。後になって大騒ぎしてからでは遅いのですよね。ただ、今回元IB現PBさんのコメントにもありましたように、プロにとってはこうした条項は基本のはずなのに、なぜこのような問題が大きくクローズアップされたのか、もう少し調べてみたいと思います。もしかしたら問題はプロ以外のところにも波及していたのかもしれないですね。
厭債害債
2008/04/21 20:01

コメントする help

ニックネーム
本 文
階級闘争 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる