厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS パリの街で感じる「非実用主義」

<<   作成日時 : 2008/05/08 05:34   >>

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前回のエントリーでパリの話を書いたが、滞在中いろいろと微妙なところで非実用の香りをたっぷり味わってきた。

(例1)ホテルのトイレにて。用を足した後、水を流そうとするがそれらしきレバーも紐もボタンも見当たらない。唯一これかなと思われたのが、個室の奥の壁にあった縦20センチ横30センチぐらいの巨大な板状のもの(写真とってくればよかった)。押したら水が出た。どう考えてもこれだけの面積は必要ないのだが。

(例2)メトロの駅のホームにある椅子が駅ごとに形状が異なる。しかも、ぜんぜん実用的ではない。ある駅では長さ5メートルぐらいの横棒のうえに、椅子が両端と真ん中の3つだけ。もちろん、デザインとしてそうしている。

(例3)セーヌ川にかかる1つの橋。チュルリー公園から道路の下をくぐって橋に行くのだが、通常は一回地上に出て橋があるというのが普通の形。ここでは地下からいきなり橋がはじまって、途中で反対側の歩道に下りる橋と合流する作りである。

いずれもデザインの問題だが、総じて実用性よりデザイン性を重視する風潮を強く感じる。

そういえば公園の木々が全部きれいに同じ形に刈り込まれていて、しかもすべて等間隔に並んでいる。木はつねに一直線であり、ほとんどの場所が左右対称である。また、アパートの窓の位置もよく見るとほぼ同じ高さにくるように設計されていて、町並みがすっきりしている。

パレロワイヤルのなかの円柱も、ルーブルの三角形も(小説ダビンチコードのなかの説を信じれば別だが)、こういうのはどうしてもそうあらねばならないというものではないし、実用とも無関係である。しかしそこへのこだわりが文化として染み付いており、結局美術を中心とする芸術や哲学はこうした非実用を重んじる背景をぬきにしては考えられないだろう。

しかしながら、非実用が実用をおしのけて存在するためにはゆるぎない信念が必要だろうと思う。実用というのは魅力的であるし、時間の節約や思考の省略という実利をもたらすだろう。しかし、其の実利をおしのけても非実用の美を追求していくには、それが最終的に人に認めてもらう、あるいは最低限許容してもらうということが必要だ。そのためには、議論し説得するというプロセスが必要になるだろう。其の前提として非実用を貫く人々が自分なりに考えて考え抜き議論に備える必要があるだろう。

フランス的な議論の文化みたいなものは、こういう非実用を重んじる文化と表裏一体なのではないかと思った。そして他人にはあまり干渉しない文化というのもその派生商品みたいなものではないか。

ところで、日本でも非実用的なデザインのビルとか設計とかグッズは山のようにあるが、これらはなぜ感動を呼ばないのか?それは、全体との関係で本当の意味での「思想」が欠けているからだとおもう。ビルであれば、町並みとかそういった全体との関係でやっていいことと悪いことがある。抑えるところと抑えなくていいところのメリハリ、つまり思想の欠如が決定的な差をもたらしているのだろうと思われる。作る側と受け入れる側がお互いに考え抜いたうえ、長い期間を経て真価をみるという姿勢があるからこそ、歴史に残るものが生まれるのだろう。

ただ、一方でこういうフランスが日本文化に強い興味を持つこともまた事実で、お互い足りないところを補うような相性のよさがあるのかもしれない。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
なぜだかわかりませんが、
すこし感動してしまいました。(笑)

わたしは、
ムダのない洗練された機能に美を感じる方ですので、
非実用の美を追求するフランスの文化に驚きの感を持ちました。
(えー、フランスってそうなんだ。)

>非実用が実用をおしのけて存在する。
それが、あたりまえのように受け入れられている社会。
実に、おもしろいです。

ありがとうございます。
なんとなく人生観や仏経済の理解が深まったような、
複雑な気持になりました。
(しかし、ちょっと得した気分です。)
隠れファンです。
2008/05/09 04:10
隠れファンです。さんどうもです。日本とヨーロッパの違いのひとつは思考の時間軸の違いとでも言うものかもしれないです。そして、高温多湿で地震と台風などの自然災害が多い日本では、建造物に長期的な視野をもてないというのもまあ仕方ないのかもしれません。
非実用って、ある意味余裕の表れでもあると思うのですが、彼らが農業資源にすごく恵まれていることと何か関係あるかもしれないと思ったりします。(じゃあアメリカはどうよ、って言われると、うーん・・・)。
厭債害債
2008/05/10 15:33

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