厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

アクセスカウンタ

zoom RSS 再び日経経済教室

<<   作成日時 : 2008/06/23 19:08   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 10

書く事がないからいちゃもんつけまくってるだけ、という説は横において…

本日の経済教室では慶応の小幡准教授が政府系ファンド(SWF)について寄稿されている。おっしゃる事も理解できるのだが、現在最も大きな論点となっているポイントを意図的に外しておられるようだ。そもそも議論の出発点が、有り余るドル建ての外貨準備の積極運用(とくにサブプライム問題以降の混乱期を日本にとってのチャンスと捉えてやるべきじゃないかという意見)にあるのだが、その段階で、そもそも日本が持つ巨額の外貨準備の見合いとして政府は円建てで短期借り入れを行いその資金で外貨を買っている(介入中心)ことが問題になった。

ある意味ではすでに相当リスクを負っているわけであるが、それはそれとしても、こういう状況で一層のリスクを負う運用がふさわしいのかどうか、という点は考慮しておく必要があるだろう。この流れの中で、運用の資金を外貨準備で保有している米国債などの利息部分に限定したりするというアイデアが生まれてきたわけだが、小幡論文ではこの辺のいきさつが一切描かれていないのはなぜだろうか?

「SWFを広く定義すれば、国家の資産を財源とした運用機関ということになる。そして目的は、一時的であれ、長期的であれ、余剰となった国家資産を効率的に運用することにある」とSWFを定義されるのであれば、今の日本のどこに「余剰となった国家資産」があるのかをまず示すべきだろう。外貨利息という部分は確かに一般会計への寄与があるが、全体で見れば大幅な財政赤字の中で、「余剰」があるとは思えない。論文で示された海外のSWFは筆者も意識されているように資源国、独裁国家、財政黒字国しかない。ここまで意識されておきながら、結論が「本来すべき議論は、SWFは理念的には作るべきだが、それをどのようにつくるか、ということなのである。」となるのが理解できないでいる。

日本という国におけるSWFの必要性の議論は、埋蔵金の議論も含めもっと豊かな議論があちこちで展開されているのに、そうした議論を一切とばして、はじめから設立が必要だと結論付けているように読める。唯一検討しているのが、「リスクが高いかどうか」という点で、世の中に「ファンド」という名前によってリスクが高いと誤解している人がいるような書きぶりだが、少なくともこの議論にかかわっている人々の中で私が拝見した中でそういう風に考えていた人はこの筆者が初めてだ。現状のままでリスクがないとは誰も思っていないし、むしろ裸の外貨や政府証券だけ持っていることは確かにリスクが高いのだ。だからこそ、SWFではなく、ほかの方法で何とかリスクエクスポージャーを減らす方向に行くのが財政赤字国日本のとるべき道ではないかと思うのだが。
もちろん外貨準備とは別に、政府がわざわざ金を出してファンドを作る方法もある。ODAみたいに発展途上国に出資し長期の高リターンを狙ったりしてもいいだろう。しかし、それは「余剰資金」ではないから筆者の言うSWFにはならないだろう。

結論は実は概ねワタクシが批判した金曜日の経済教室と一緒だ。「実現可能な組織構造の下でのSWFと、年金をはじめとする様々な国民の資産を政府の内部組織や外郭団体に不透明なままで委託していると、どちらがより非効率性が小さいか、ということが真の論点なのだ。」という。

ワタクシはSWFに対しては反対だが、賛成の意見も当然ありだと思う。ただ、こういうところに書くのだから、少なくともSWFにまつわる議論をきちんと踏まえた論旨を展開した上でやってほしいし、結論を強引に運用者の問題に捻じ曲げるようなことはしないでもらいたいと思った。願わくは、日経の経済教室が特定の勢力のプロパガンダの場になっていないことだけは祈りたい。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
再び日経経済教室 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)/ウェブリブログ
本日の経済教室では慶応の小幡准教授が政府系ファンド(SWF)について寄稿されている。おっしゃる事も理解できるのだが、現在最も大きな論点となっているポイントを意図的に外し... ...続きを見る
トレフォ - 投資家のためのソーシャルニ...
2008/06/23 20:50

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
SWFということを考える前提として、財政投融資という制度について考える必要があるのですよ。まー皆さんご存知の第二予算ですが。まー今盛んにおっしゃっている議論の延長線上に特別会計ってなもんがあって、そのあたりのごっちゃになっているのではないでしょうかね。
で特別会計が変わって、年金、郵貯、簡保とも自主運用なのですが、さすが一気に非効率で儲からん財投やめます何ていえないもので、財投債ってわけのわかんものを引き受けてるわけで。もともと郵政民営化議論の背景には、このあたりの明確化という議論があるのでしたよね。
そういう意味では、郵貯銀行やら簡保生命だっけ。が本気で自主運用したら、そら怖いでっせ。
日本国債全部売って、海外投資やりますってのはどうでしょう。でもやったとたんに円安で海外投資できねーか。
かるパース
2008/06/23 23:22
私も借入して運用していますが、長期調達・長期運用です。

日本の外貨準備は、調達と運用間の期間のミスマッチはどれ位なんでしょう?
レバレッジ君
2008/06/24 00:36
アメリカやイギリスなどは、国(政府と言う意味ではない)に金がないのに、外国から借金して運用しているように見える。
他人の金で上手くリスク回避して、金儲けする方法がないものですかね?
K
2008/06/24 02:10
この准教授の本を以前読んだことがあるのですが、あまりの内容の酷さに速攻でゴミ箱行きにしました。
ちゅう
2008/06/24 08:01
おはようございます。
ご指摘のとおり、日経がSWF賛成派の片棒担ぎしてない事を望みますね。なんか経済教室というよりは”○○先生の資産運用教室”みたいになってしまっている気が・・・ 昨日のNHKスペ、GSからBS救済依頼電話を放送できるとは、流石NHKですね。びっくり&感心しました。
フレッド
2008/06/24 10:23
日経の「経済教室」に論文が掲載されると、準教授の場合は教授昇格審査でかなりのプラスになる。このため論文を売り込む準教授が多い(ある記者談)。大学教員に限らず、経済教室は相当数のビジネスマンや研究者が見るので、野心家の「売り込み」が多いらしい。持ち込まれた論文は、日経の社内検討会で採否が決定されるが、採用基準として、@他社他紙で既発表でないこと(日経のプライドにかけてこれは絶対)、A斬新な視点で論旨にインパクトがあることが重視される。採用が決定されると、斬新性やインパクトの観点からかなりの書き直しが要請される。良心的な執筆者は、この時点で「僕の主張する論旨と違う。」と言って辞退することもあるらしいが、ほとんどは功名心に打ち勝つことができず、修正要求を受け入れるという。今回の論文がどれだけ原型をとどめているか不明だが、「経済教室」はそのようなものと考えて読むべきでしょう。そもそも実務経験のない学者が、この手の政策提言を行うことには無理がある。(もっとも実務家は自分の立場があるので、別の面で困難でしょうが…)フレッドさんの言われるように、この論文は日経が片棒を担いだのが真相でしょう。
いつも見てます
2008/06/24 12:53
NHKスペ、GSからBS救済依頼電話を放送できるとは、流石NHKですね。びっくり&感心しました。


フレッドさん、私はこの番組見逃しました。もう少し詳しく説明していただけますか。
レバレッジ君
2008/06/25 00:17
かるパースさん、どうもです。おっしゃるとおり、財政投融資の議論も絡ませる必要があると思います。自主運用については、マーケットも疑心暗鬼になってますね。

レバレッジ君さん、どうもです。外貨準備の満期構成については公表されていないようですが、理屈の上からはかなり短いものが多いと思います。負債は円の短期資金(政府証券)ですが、問題はそれよりも負債を円で調達して外貨で資産を保有するというところのミスマッチであろうと思われます。
厭債害債
2008/06/25 12:23
kさんどうもです。それが出来る国がまさに強国ということでしょうか。赤字でありながら投資を呼び込めるという意味で。

ちゅうさんどうもです。この方のご出身は財務省でご専門は行動ファイナンスのようですね。

フレッドさん、どうもです。おっしゃるとおりですね。最近の流れの中で、ちょっと気を許すとそういうことがおきやすくなっているのかもしれません。
厭債害債
2008/06/25 13:02
いつも見てます、さん、どうもです。貴重な情報をどうもありがとうございます。様々な専門分野の視点から政策提言をされることについては決して否定しませんが、今回の記事は筆者の方の専門分野ですらないところからの記事でしたから、ちょっとどうかな、と。まあご出身からは関係はないわけじゃあないのですが。
厭債害債
2008/06/25 13:05

コメントする help

ニックネーム
本 文
再び日経経済教室 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる