厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS ひっくり返されたちゃぶ台(金融安定化法案否決)

<<   作成日時 : 2008/09/30 12:54   >>

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一応2割ぐらいこうなる可能性はあるとは思ってましたが…。というのは、アメリカでは過去のいろんな投票行動でもわかるとおり党議拘束がないため、議会指導者がニギったからといって結論が保証されているわけではない。その環境で、もともと自主独立の思想を重んじる米国では自分の信念とか選挙区の意向とかによって個別の投票行動が行われやすい。日本でも最初は公的資金には猛烈な反対があった事を考えると、アメリカでも素直に通るわけはありませんから。

今回も、米国議員の中には選挙区から金融安定化法案に「反対」する選挙民からのメッセージを沢山受け取った人々が多いようです。俺の税金をウォールストリート救済に使うのはけしからん、というわけです。まあそれは心情的にも当然理解できますね。おれは、バブルで一つもいい思いをしていない、ってね。貧富の差の激しいアメリカでは1%の人が20%以上の富を握っている。数で言えばいい思いをしていないと感じる人が多いのもうなずけますし、ワタクシからみても、まだまだ金融機関関係者の責任の取り方は甘すぎで、国民が納得していないのも当然です。

日本の住専問題では6000億(円!です、ドルではなくて)の公的資金投入に国民が怒り狂いました。ただ、日本とアメリカでは大きな違いがある。日本のお金(税金)は「リアルマネー」であるのに対し、アメリカのは借り物だということです。日本が大幅な経常黒字国であったのに対し、アメリカの経常収支赤字は8000億ドルにも達しており、殆どを対外借入に依存しています。つまり、日本の金融危機に対する公的資金注入は、国債の増発にせよなんにせよ、最終的には自分たちのお金でやったということが出来ますが、アメリカの場合はお金を用意するにしても最終的に他国に依存せざるをえない、というところが大きな違いです。

膨大な累積赤字、つまり外国からの借り入れによってアメリカのインフラ投資や政府管掌保険制度とか公的補助とかが成り立ってきていました。その借り入れを可能にしてきたのは、実はアメリカの強さ(見せ掛けだったとしても)です。世界の人々が、アメリカのシステムはすばらしいとか金融こそアメリカの強みだとか、アメリカにとりあえずお金を置いておけば安全だ、とかそういう信頼の元にこのようなシステムが成り立ってきたわけです。諸外国は米国債投資や外貨準備やあるいはGSE債券投資といった形でアメリカの国内に回るお金を大量に供給してきました。場合によっては口車に乗せられたヘッジファンド投資も、資金供給という意味では同じです。結果としてそれが数年来の過剰な住宅ブームを生みバブル崩壊、金融危機につながったのです。ただ、お金に色はついていません。巨額の対外借入によって生み出されたインフラ、文化、生活水準の高さ(貧富の差はあるにしても全体として)などは顕著です。それは、米国基軸通貨を中心とする金融システムへの信頼があってはじめて成り立っていたと思います。お金は決して一部の人々だけを潤したのではなかったはずです。そして本来はその水準の生活を享受するためには払っていなければいけない税金が借り入れが出来ることで少なく済んでいるのです。

アメリカで「納税者負担で金融機関を救済するのはけしからん」という議論が出るのはまあやむをえないのですが、通常時であればともかく、アメリカ発でしかも「アメリカンドリーム」という国の基本が絡まった施策が元となったバブルの後始末のために世界に大きな被害を与えつつある状況で、「税金を使うな」という議論はあまりにも身勝手に見えます。「ちゃぶ台をひっくり返す」ことで筋を通したつもりでしょうが、アメリカの今回のバブルへのかかわり方と、アメリカが金融面で国際関係の中で持つ位置づけを考えた場合、そういう身勝手は通用しないと考えるべきだと思います。つまり、この問題はアメリカの民主主義の枠内では収まらない問題となっているんです。本来は日本や中国などほかのステークホルダー国が議論に参加すべきべき事柄ではないでしょうか?まあ無理なんですが。

で、まだチャンスは残っていると思いますが、マジで再度否決したらどうなるか。公的資金の直接注入が困難になります。まあ色々なオプション(時価会計凍結など)はあるにせよ、金融機関の相互不信や個人の守りの姿勢は増すことはあっても減ることはない。金融の厳しい冬が訪れ、ひっそりと一人また一人、凍死するところが続出すると思います。産業にお金が回らなくなって、経済は大きく落ち込むと思います。外国からの投資は大きく減るでしょう。とりわけ結局は国債の大増発と低金利でしか危機を乗り切れなくなって、金利が急騰、ドルが暴落、そのころには自分たちの税金を守ったつもりの米国民は、外国からろくに物も買えない状況に堕ち果てている可能性があります。しかし、それでもアメリカにはまだ石油も農地もある。生活水準さえ落とせば生き残りは可能でしょう。

実は問題はむしろそういう国にお金を貸し込みすぎた日本などのところでもっと深刻になる可能性があります。外貨準備にある膨大な米国債には巨額の含み損が生まれます。負債の外為特会借り入れが減るわけではないので、国の実体バランスシートが大きく毀損します。物が売れなくなり、景気を支えていた外需までが大きく落ち込み、金融機関は投資による損失で大きく毀損するという恐怖の連鎖です。これがデレバレッジの怖さです。日本の家計は貯蓄を取り崩しながら、事態が好転するのを待つしかないでしょう。

いろいろ考えても、やはりここはアメリカにケツを拭いてもらうしかない。今回の危機の規模は日本の住専とか金融危機とかとは比べ物にならない。その危機の下地をつくり膨らませ破裂させた責任をきちんと取る必要があるでしょう。(まあ、こんなことあちらの下院議員さんの前で言っても全く通用しないし、むしろへそを曲げてしまわれるだけだろうと思います。その意味で今回危機への対処は人間(の心理)のマネジメントそのものであるという印象をあらためて強くしました)。

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
日本は住専国会のドタバタの結果、「公的資金投入」の見返りに「経営者を獄中に入れる」という不文律が出来上がりましたね。これはこれで恐ろしい社会秩序で、その後の大手行への資本注入が遅れた原因にもなったわけですが、獄中に入れられた当事者の方には申し訳ないと思いつつ、結果的には「尊い犠牲」になったのではないかと思います。

アメリカは他国に対して「あーしろ」「こーしろ」と上から目線で正論を吐くのは得意ですが、自分たちの問題はなかなか解決できませんね。ベトナム戦争しかり、イラク攻撃しかり、そしてサブプライムによる金融危機しかり。こんなことを続けてると、本当に世界恐慌に突入するのではないかと、心と自分の財産の置き場所の準備を始めました。
おれ
2008/09/30 13:17
とうとう始まってしまいました。どちらにせよ、この最終決着は日本や中国がドル切下げによる大幅な損害を被って治まるのでしょう。それも米国内では暫くの信用収縮とドル安に伴う大幅なインフレの痛みに数年は耐えて貰わねばなりません。
まあ、日本は先に金融危機を乗越え、先進技術は米国並に進んでいますから少しのリセッションで済むのでは。
世界を見回して、暫くは投資できそうな国は日本のみとなりそうですから世界の富裕層から資金が流れ込んで、バブルにならねば良いのですが。
これからの財政・金融政策運営お手並み拝見です。麻生になるか、小沢になるか、どちらにせよ竹下の轍は踏んで欲しくないものです。
Hbar
2008/09/30 13:29
ご指摘、同感です。仮に将来、ドルが暴落した際、日本政府が円高防止のために介入すると、それが結果的に米国への流動性供給になりそうです。円高に耐えられるかどうか。耐えられなくて介入すると物言わぬメーンバンク(貸し手)になりますね。
本石町日記
2008/09/30 21:29
いつも本石町日記さんにコメントすることが多い植田日銀総裁と申します。おっしゃられていることに本当に同感です。確かに国民の税金だけれど実は海外から借り入れる資金。「俺は良い思いはしていない」と言っても実は実力以上の生活水準を享受してきた。ということも含めてアメリカ国民は外を見てこの問題を解決して欲しいと思います。
植田日銀総裁
2008/09/30 21:44
追加です。本石町日記さんのほうにも同じことをコメントさせていただいているのですが、各国によって処理の仕方が違うことが興味深いです。予想外にヨーロッパ諸国の処理は早いと思っています。フォルティス、デクシア、ハイポ・リアルエステート、B&B、グリトニルと矢継ぎ早に公的資本注入や国有化により処理されていきます。公的資本注入という根本的な方法というのもポイントだと思います。発覚するまでは良くわからずいきなり出てくるのだけれど、処理する時は早くしかも根本的です。国のあり方がアメリカと違うからなのでしょうか。アメリカに比べて政府の力が強いのでしょうか。王国も多いですし。政府が一声上げれば即処理完了(というか王家・政府・金融が一体なのでしょうか)。という印象です。ヨーロッパから分かれ出てきたアメリカは、一応理屈を通して自分たちの力で片付けようとしている。けれど混乱している。
日本の場合は結局は“その場の空気”が処理して来たというのが私の感想です。
金融処理にもお国柄が出ていると思います。
多少思いつきの面もありますがご容赦下さい。
植田日銀総裁
2008/09/30 21:53
おれ、さん、コメントありがとうございます。やはり納得させると言う作業は必要なのだろうと思います。人柱になったという観点はおっしゃるとおりだと思います。アメリカはいつも究極の「俺様」ですからね。

Hbarさん、どうもです。日本も投資先としてはどうでしょうか?いずれにしてもひとつ間違えば世界中で内向きのシュリンクが起こりそうです。



厭債害債
2008/10/01 00:39
本石町日記さん、どうもです。この際いっそのこと財布もいっしょにしちまえ、とかいう意見も出てしまったりして(爆)。

植田日銀総裁さん、コメントありがとうございます。欧州がなぜこれほどスムーズに処理してしまっているのかは、詳しいことはまだ調べてませんが、制度の違いかもしれないですね。アメリカは世界の中でもとりわけ納税者意識の強いところだということもあるのでしょうが、いずれにしてもこういう手続きを踏むのも民主主義の一つの現れでしょう。
厭債害債
2008/10/01 00:47
>世界を見回して、暫くは投資できそうな国は日本のみ

え、日本にジャブジャブですか?うーん、実需に変換できそうなのは、まずは太陽電池、薄膜シリコンだけでなく有機まで行ければ・・・次は自動車、エコカーですけど、濃厚なのが電気自動車に成ってしまうので、電気がエコで効率よくないと・・・バイオマスは液体ではなくガスに変換なら可能性あり・・・・ロボットの可能性もゼロでは無いけど・・・・薄いか。
日本に投資してくれるなら、ちゃんと技術革新を引き起こし、ちゃんとグローバルな実需に繋げますよ。(本当かよ!いえ、誠実にがんばります。本当にバブルは嫌です。)
金融業者には生活の安定くらいで無駄に高い給料は払わないことは約束します。
って、僕が日本な訳ないんですけど・・・・ただ日本人は記号の範囲などに留まらず暗黙知の領域を最大限駆使しても、技術革新と実需の拡大をちゃんと目標にします。(っていうか、して欲しい。)
kazzt
2008/10/03 01:24
kazztさんどうもです。製造業の力はまだまだ強いです。ただ、需要が一時的にせよ大きく落ちる事態は避けられそうにありませんね。
厭債害債
2008/10/05 21:49

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