厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS デリバティブ損失(サイゼリアの例)

<<   作成日時 : 2008/11/25 18:01   >>

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某消費者金融会社の実質デフィーザンスによる損失の発生は以前のエントリーで書いたとおりだが、最近その他企業においても金融技術の利用がうまく行かずとりわけデリバティブの利用(誤用?)による損失の発生事例が目立ってきたようだ。直近の例ではアーバンコーポが資金調達と組み合わせたスワップで破綻においこまれた。また駒澤大学も妙なスワップで巨額の損失を出した。金曜日はファミレスのサイゼリアがやはり為替スワップで140億円もの損失を計上した。同社はメラミン検出事件でも話題になってしまっており、踏んだり蹴ったりである。

サイゼリアの事件は為替にリンクしたスワップ(FX参照型豪ドルクーポンスワップ)であり、一定以上の円高にならないことを前提に「有利な調達」(おそらく豪ドルの買いという意味)が出来る仕組みになっていたようだ。詳細はわからないが、ニュースのヘッドラインを見る限りこの取引は一種の長期輸入為替予約(業界的に言うアベレージ予約)に類似する感じであり、それを円安水準で沢山取りすぎた、というイメージを受ける。月当たり百万豪ドルの調達に1円円高で5億円の損というところから逆算すると、大体30年ぐらいの輸入為替を取ってしまったような印象をうける。

(追記:下記コメントで2年分の契約であるとの指摘がありました。ちょっと思い込みで書き込んでしまった点、お詫びします)

アベレージ予約の危険性は、長期になればなるほど、特に高金利通貨については、金利差が効いてくるので一見安く見えてしまうことだ。例えば豪ドルのスポットが100円/ドルとして金利差が5%あれば単純に計算すれば10年先のレートは100*(1/(1+0.05)^10)=61.3となる。30年平均としたらスポット100円のときでも65円ぐらいのアベレージは出来ただろう。しかし、この差は直物で購入して金利を受け取ることを放棄し将来に購入することを選んだ対価にすぎない。スポットが100円なのに当期の調達コストが65円で済んでしまうように見えるこの仕組みを「有利な調達」と勘違いしていたのではないか。この30年分のポジション全体がスポット価格の変動に同様にさらされていることが理解できていただろうか?65円より円高になって突然損失が出るわけではないはずで、ここまで円高になるとは想定してなかったというのは単なる言い訳に聞こえる。
(追記:上記追記と同じく、思い込みによるものであった点、お詫びします)

さらに、具体的な外貨建の資産や負債との対応でのデリバティブ取引であれば「ヘッジ会計」によってフローの発生する時期まで損益を繰り延べる(あるいは時価変動を相殺する)ことが可能となるが、こういったタイプのスワップ契約では将来の漠然とした外貨建フローをイメージしているようなのでヘッジ会計が使いづらく、おのずとデリバティブの損益だけが当期に計上されてしまう。そのようなリスクが理解されていなかったのではないか?(このケースの場合どちらにしてもヘッジ会計が使えるような印象はなく、為替変動が直ちに損益計算書に跳ね返る仕組みであった可能性が高いと思える)。


同社は輸入企業であるため、こうしたデリバティブの利用目的そのものについて違和感はないのだが、ちょっと期間や量についてやりすぎた、ということなのだろう。為替の世界ではこういう「まさか」の状態は実は頻繁に起こるので、こういう事態になったときにどうするかというコンティンジェンシープランを常に頭の片隅に用意しておく必要があると思われる。

あとは、今回はともかくとして、事例によってはビジネスに適合しないデリバティブ(たとえば駒澤大学のケース)によって損失を出しているケースもあるが、この場合販売する側にも責任の一端はあるだろうと思われる。いわゆる適合性原則の問題はやはり重要であろう。

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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
IRをの重要開示事項を見たら、サイゼリヤは2年分を2契約みたいです。

最近の豪ドルのボラリティで計算して、
とんでもない損失になったんでしょうね。
約定レートにかなり不利なノックイン条項が。

BNPパリバはアーバンの件といい、関わると、ろくなことないですね。

otherwise
2008/11/25 19:43
実質オプション売りのようなリスクの取引を、為替ヘッジ目的に勧める(嵌め込む?)のはどうかと思います。ヘッジどころか、リスクおもいっきり増えてます。営業員が「リスクヘッジになります」と言って売ってたのなら詐欺に当たるのではないかと。

BNPパリバのような、企業を潰して利益を得るような銀行は、日本に存在して欲しくありません。

新省庁まで作って蒟蒻ゼリーを規制する暇があったら、ワケワカランデリバティブを一般企業に売りにくくなるように規制してもらいたいものです。
aoiro3gou
2008/11/25 22:28
otherwiseさん、コメントありがとうございます。開示資料をちゃんと読んでなかったため、誤解があったようです。本文を訂正しておきます。

aoiro3gouさんコメントありがとうございます。今回の案件がかなりのオプション売りを伴っているようなものであれば、やはり販売側にも慎重な対応が望まれたと思います。
厭債害債
2008/11/25 23:02
で今回の金融庁主体の法改正からすれば、こいつらはみんな塀の内側に落ちるはずなのに。徹底的のやってくれよ。また例によって不平等条約よろしく害しに弱いってさー。情けないkYUU庁、これからはあんたらが国家戦略として日本経済を守る気概をもってくれよ。まーあんたらには、キャリア(官僚)としての気概も根性もねーだろ、うちわをいじめてるだけで、それが国家経済与える影響なんて考えてもいない、憲兵隊よろしくわけのわからん理由で、進歩的な国民をしょっぴいるだけ。その点は某官庁はどんなに批判されようが、がんばっている人たちとは違うね。そういえば憲兵隊出身者は、戦後アメ公の手先になって、日本人MPとして戦犯しょっぴいたって親父がいってたよ。ということで。「私は貝になりたい。」
かるぱーす
2008/11/25 23:03
かるぱーすさん、どうもです。アーバンの件で内部調査委員会から限りなくクロに近い評価を得てましたから、いずれは何らかの処分対象になりうるかもしれませんね。金商法の趣旨からも、とりわけ複雑な金融商品については適合性原則について企業対企業レベルでもある程度厳しく見ていく必要があるかもしれません。
厭債害債
2008/11/25 23:19
早々にありがとうございます。後半戦はちょっと趣味の世界ですが。セルサイドにもいた方はおわりかと思いますが、最初は大手機関投資から始まって、地方の機関投資家にいって、財務といって知ったかぶりした一般法人にいって、誰もいわない学校法人で多分宗教法人で最後の個人にいくのです。
ということで、確かにデリバティブは悪くないです。原爆も原子力発電も一緒です。でもちゃんと日本語で説明しないといけないですね。
で「売ってはいけないオプション、うけちゃいけない信用リスク」といってあげましょう。
かるぱーす
2008/11/25 23:31
スノーボール、というやつですね、会社のリリース見ると。債券仕立ての場合、最悪ゼロクーポンになって償還までがまんすればいいのですが、クーポンスワップでこれをやるのはえげつないですね。上限レート1豪ドル600円、どこまで強欲なんよあんたらは。
パットメセニー
2008/11/26 08:54
かるぱーすさん、どうもです。裾野が広がりすぎたことも、ある意味金融ビジネスが行き詰っていたことの一つの表れかもしれませんね。

パットメセニーさん、どうもです。開示資料をみてワタクシも恐ろしくなりました。
厭債害債
2008/11/26 10:06
いやあ,2007年10月22日と言えば既にサブプライム問題が顕在化していたときでした。さらに今年の2月に念入りに2回目を…明らかに情報の非対称性の中で丸め込まれて契約されたのだと思いますね。78円どころか69.90円もしばらく遠いですね。
EURO SELLER
2008/11/26 15:49
TBさせていただきました。アーバンの件といい、サイゼリアといい、パリバもお痛が過ぎたようですね。ちなみにこの案件は10mioEURくらい儲けたらしいですよ。。。。。。
鷹鳩
2008/11/27 22:58
そろそろ「リスクを取る事は素晴らしい事だ!」なんて(金もらって)発言していた連中は、こっそり話を変えている頃なんだろうなぁ。
ロシアンルーレットで「弾が出なかったら1億円もらえる。出たら即死。シリンダーは6穴。試行回数は3回。」こんな感じの金融商品ですね。
通行人
2008/11/28 01:40
ラチャット、ノックアウトだの横文字使って、同胞をだますのはもうやめたら。で皆さんこいつらはそのあたりを見越し価格設定しますので、必ず強引に相場をそこにもっていきます。なので次のターゲットは日経6000円と為替90円なんてとこなので、こういう商品は絶対買わないように。特にきりのいいラウンドプライスのストライクプライスには要注意です。
でkYU張様も貸し渋りの厳格な検査とかいって、資産査定との整合性を何も説明もせず裁量行政で普通の金融機関いじめてる暇があったら、もっとこれから被害がでそうな分野でこういったやからを取り締まらんといかんよ。
かるぱーす
2008/11/28 23:32
慶応大学、駒沢大学の件は驚きました。
海外有名大学ではこの種の資産運用が本格的に行われていると聞きましたが、その原資がどういう資金なのかは明確にしてもらいたいと思いました。
toroika
2008/12/01 23:40
EUROSELLERさんどうもです。まさに情報の非対称性ですが、なによりもこの仕組みの厳しさときたら・・・

鷹鳩さん、どうもです。ようやく行政処分になりましたが、やはり同じ会社の名前がこう次々出てしまっては、なにか体質に問題があるのでは、と思わざるを得ないと思います。

通行人さん、コメントありがとうございます。ロシアンルーレットの例は、弾がないと思っていたら実はあった(量子論的に存在した)ということでしょうか。
厭債害債
2008/12/04 19:34
かるぱーすさんどうもです。政府がもっと金を貸せと金融機関にたきつけているのですから、金融庁さまでもきっと査定をむやみに厳しくするなんてことはありえないと信じております・・・はい・・・。

toroikaさん、どうもです。巨額の年金資金を預かりその動向がマーケットそのものを左右しかねない主体は、市場にも大きな責任を負うのですから、とくに米国の学校などは気をつけてもらいたいものです。
厭債害債
2008/12/04 19:40

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