厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 英国の状況が示唆するシナリオ

<<   作成日時 : 2009/01/20 12:16   >>

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英国のRBS(ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)が極めて厳しい決算内容で、株価が一日で66%も下落し11ペンス台という殆ど無価値に近い状況になっています。3兆円を越える損失など貧乏人のワタクシには想像もつかない。もっとも株価の下落は、同時に政府保有優先株が普通株に転換されるという決定によって普通株の大規模な希薄化が生じたことも一因ですが、どっちにしても根っこは同じです。(但しRBSにとっては優先株配当に資金を回す必要がなくなり、資金やコスト負担は若干減るから本来はプラスのはず)。英国では週明けに早速新たな金融システム安定策を打ち出しました。(以下某銀行さんからいただいた情報より。)

・ 政府保証資金調達のissuance windowが当初の本年4月9日までから2009年末までとなる(但しEUの認可が条件)。保証対象の3分の1は2014年4月までロールオーバーでき、残りの3分の2は2012年4月までとなる。

・トリプルA格のABSに対して政府保証を付与する(不良債権化を防ぐ)

・SLS(特別流動性スキーム)についてBoEのディスカウントウィンドウを通じた貸出は1年まで延長される。

・事業債、CP、シ・ローン、一部のABSにくわえて政府保証債を含めたGBP50bnの直接資産買取スキームの創設

・資産/資本保護スキームの創設=Bad Bank構想

ところでBad Bank構想を利用するためには一定以上の自己資本比率を要求することになるため、RBSに関しては、政府保有のクーポン12%の優先株が普通株に転換されました。政府がより深く介入することが明らかになり持ち株比率が70%にまで高まり、すでに事実上の国有化といっていいでしょう。他の銀行についてもBad Bankスキームを利用するにあたって、自己資本比率を上昇させる必要性から、既存の優先株や優先証券の扱いが問題となりそうです。とりわけティア1に属する優先証券については、普通株扱いになる可能性があるため、RBSと同じく普通株の株価が暴落する可能性がありそうです。まあこれも織り込み済みということでしょうけれど。

この英国のプランが意味することは、以前個人預金保護の流れで多くの国が右に倣えしたように、多くの欧州諸国で同じことが起こるということです。端的に言えば多くの銀行でより政府の関与が強まり、政府出資の優先株が普通株になってダイリューションが生じ、多くの国で政府支出が大幅に増える。その結果単一通貨の基礎を成すべき共通の財政規律がないがしろになり、最悪の場合単一通貨を維持できなくなるのではないか?昨日のユーロの下落はまさにそれへの恐怖でしょう。

財政の問題はご存知のとおりユーロ圏でも各国マターです。単一通貨の枠組みを維持するために必要とされた財政規律をいじらないことにはどうしようもないところに来ているのですが、それをないがしろにしたとたん、ユーロは通貨としての信任を失うはずです。日本で地方議会が勝手に外国から借金しまくって地元の銀行を救うことを認めたらどういうことになるか?日本の場合は地方自治体は一応政府の監督下にあるのですが、ユーロの場合なにせそれぞれの国が「独立国」ですから、他の国は責任を負わない。

ECBは当然のことですが、各国マターに深いコミットは出来ず、「全体」の金利を決めるだけです。ECBが金利を下げ渋っているのは(そしてゼロにしないと明言しているのは)彼らには金利操作しか事実上仕事がないからともいえます。ゼロにしてしまったら当面失業するしかない。
というわけで、なかなかしびれる展開となってきております。

RBSは昨年ABNアムロを買収したのですが、いわばバブルのピークにラスベガスの郊外高級マンションを一棟買いしたようなもので、まあ時代の読みについてそういう判断で行われていたのでしょうから、仕方のないところといえます。他の金融機関についても似たり寄ったり。結局銀行という公的役割を担う機関に収益プレッシャーを与えてしまったことが、無理な経営につながったわけです。米国的にいえば今の事態はグラス・スティーガル法廃止(1999)の副産物でしょう。すでにいろんなところでコメントされているように、1933年に成立した同法は証券業務と銀行業務を基本的に分離すべしという法律で、実は元をただせば大恐慌時代の反省から出ているのですが、グラム・リーチ・ブライリー法によって99年に一部の重要な部分が廃止されました。金融持ち株会社が極めて広範な金融業務を営めるようになったうえ、国法銀行にも持ち株会社経由でなく子会社を通じて証券業務が営めるようになった。金融機関が収益拡大のために積極的に利用したのはいうまでもないでしょう。しかしコントロールが効かなくなり、反省を失ったとたんにこれですからね。結局のところシティはリテール証券業務から撤退せざるを得なくなりました。

さて、どこまでお金を出せば収まるのか?昨日WSJで見たゴールドマンの推計値では米国の証券化商品関連の損失額はRMBSだけで1.1兆ドル、全体で2.1兆ドルになるとのことです。住信基礎研の伊藤さんがニュースレターで書いておられましたように、現在認識されているのはその半分に過ぎない。すでに市場は相当の悪化を織り込んだ心理状況とはいえ、最大これまでと同じ規模のショックを受け入れなければならないということになります。銀行がこうした資産を償却しなければないとすると、一気に貸し出し余力が収縮するわけですから、経済の機能を維持するためにはどうしても政府がその分を資本注入するしかない。そして損を確定させるために(そして市場に損が拡大しないという認識を持たせるために)政府が金を出して不良資産を直接買い取るしかないだろうと思います。ポールソンが途中で迷走してしまったことが悔やまれますね。

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オバマを就任前に直撃
ワシントンでは今日のオバマ大統領就任演説を見る為に200万人の聴衆が集まっていると言う。 ...続きを見る
よく考えよう
2009/01/20 17:08
英ポンド歴史的安値をつける英国格下げ観測通貨危機説も
イギリス金利はやや落ち着いたがポンド安がとまりません。歴史的安値を更新しポンド円はとうとう123円台を示現。RBSはじめイギリスの銀行が安定しても血税投入に異論もあり、英国格下げ観測通貨危機説も。スペイン格下げ後アイルランドポルトガルも金利上昇。メキシコも金利上昇株安。スペインからみも売りですか。アジアに飛び火しないといいですが。MZDも6年来の安値。フィアットとクライスラーの提携はまとまり米国の追加支援を催促しているようです。日本でも自動車会社の株価が下落し他人事ではありません。欧米リート特に... ...続きを見る
Star Prince JUGEM
2009/01/21 20:14

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
ポールソンの迷走と言うのはリーマンを救わなかった結果と言う事ですか。もし、水際で政府資金を出していればどうなっていたでしょう。何れにせよバブルで踏込んではいけない爆弾を抱えているのですから、誰かが破裂させているのでしょう。何れにせよ避けられない事態だったのかも知れません。逆にこのクラッシュと言う安全弁(被災者には大迷惑)が働く事で資本主義が護られているのでしょう。
Hbar
2009/01/20 16:06
Hbarさんどうもです。ホリコキャピタルの堀古さんがきちんと説明しておられますがhttp://www.rakuten-sec.co.jp/ITS/investment/wallstreet/in05_report_wallstreet_20081125.html ポールソンの迷走とは、要するに当初不良債権買取ファンドとして7000億ドル用意したのを方針転換して資本注入にしてしまったため、損失を確定しない状態が継続し被害が広がったということです。
厭債害債
2009/01/20 17:50
難局に際して金融財政のポリシーミックスを総動員する場合、「政府・中銀」が一人格化した状態でも難しい舵取りを余儀なくされますが、欧州は「多数政府・中銀」で財政サイドのグリップを握る船頭が多過ぎ、しかも誰がが規律を突破すると船頭が暴走する状態です。まあ、独仏枢軸をコアにした遠心分離機で付いていけないところが離脱していくイメージでしょうか。
本石町日記
2009/01/20 20:10
RBSとバークレイズの株価はひどいことになってますね。よくよくみると、おとついの引けにかけて大陸欧州の主要行も軒並み売られたチャートをしていました。大規模に銀行のポートをはずしにいった人がいたんではないか、と思います。しかしスペイン債とかたいへんな値段になってますね、、。国債って徴税権があるので「なんでこんな値段?」って感じです。
ttori
2009/01/20 20:25
財政規律を加盟国に要求し単一通貨ユーロの通貨価値を維持するという根本構想が、既に破綻ということですか。基本的にEU加盟国がその所管する金融機関に対する規制を含めた上で共通政策を実施することを含めた財政政策との整合性を軽視した結果ですかね。
でちなみに最後GSのコメントは何の根拠ですかね。ここまで悪化させた本人が言う意味では説得力はあるにせよ、彼らがヘッジF化しているということであれば、ポジショントークにしか聞こえませんが。
かるぱーす
2009/01/21 21:27
すみません。そういえば英国とEUって政治レベルと経済統合とレベルって違うってすっかり忘れてました
。ECBとBOE、ECUとポンドって別でしたよね。いやーすっかり忘れてましたよ。で規制はどっちでしょうか。
かるぱーす
2009/01/21 21:55
ECBも不時着の飛行機ほどではないですが,金融政策のみという片肺飛行を強いられて無念でしょう。各国がどこまでEMS2にとどまれるかですが,各国の財政規律の差や景気の差を均してくれていたものが為替変動だったはずですから,それが変わらないと一番苦しい国から「圏外離脱」なんでしょうね。
EURO SELLER
2009/01/22 00:37
本石町日記さん、どうもです。まさに遠心分離機にかけられる状況というのは言いえて妙ですね。もともといろんな国が入りすぎてたのはみんなわかっていたのですが、景気のいいときはそういう話は誰もしませんからね。

ttoriさんどうもです。国に徴税権があるので普通は自国通貨建て格付けってそう簡単には落ちないのですが、今回は通貨が共通しているというのがミソで圏外離脱リスクというのが織り込まれているのだと思います。つまり長期的には事実上外貨建債務ではないかということで。
厭債害債
2009/01/22 19:48
かるぱーすさんどうもです。財政安定化協定は若干モラトリアムがありますが、いずれにしても大国からして守れない状況で、もともと脆弱ではありました。
GSの件、たしかにポジショントークという見方もありそうですが、それほど余裕はないと思います。ちなみにイギリスはEUに入っているため、例えば政府保証などを使う過程で生じる補助金などに関してはEURO諸国と同等のルールに服するはずでいろいろ気を使わねばならないことも多いですが、金融や財政問題は完全に独立して動けるはずです。

EURO SELLERさん、どうもです。まさに為替で調整する機能を失ったところが結構悲劇の基だったりするわけですね。これはカレンシーボードとかペッグとかそういう通貨統合系の歴史に共通した問題のはずなんですが、人は時に現実を無視した理想に走ってしまうということでしょうか。
厭債害債
2009/01/22 19:56

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