厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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<<   作成日時 : 2009/03/05 00:56   >>

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バーナンキFED議長ではないですが、確かにこの金融危機のエピソードの中でももっとも腹立たしい出来事の一つでしょう。ワタクシにとっては仕事上もさまざまな理由はあるのですが、それはおいておいても、きわめて中途半端な形で米国政府がお金を出し続けさせられ、あのかつて山の上にAAAの旗を立てるコマーシャルを日本のテレビで流し続けて同業他社を馬鹿にし続けたALICOがそれを撤回することも無いまま、のうのうと「国営」化してビジネスを継続するというのですから。まさに「ゾンビ」。

昨日ブルンバーグを見ていたら、さらに腹立たしい話が。それは30年以上もトップとして君臨して不正会計疑惑で辞めさせられたグリーンバーグ氏がAIGに対して訴訟を起こしているらしい。しかもその理由が振るっていて、自分が退職金としてもらった株の価値が大きく値下がりしたため損をしたのは、もともと退職金としてもらう株の評価を高くしすぎたからであり、そのために時価の下落部分を失った上、税金上も相当余計に払わされることになった。その損失部分を支払え、というものでした。

今日の日経新聞にも出ていましたが、AIGの計上した巨額損失は90年代からの利益の総額を軽く超えています。つまりグリーンバーグ氏の在職期間に稼いだものの多くが消えてしまったうえに、米国経済のみならず世界経済に大きな負担をかけている。しかし、過去30年以上君臨してきたのですから、AIG=グリーンバーグであり、この会社の行動様式は彼のビジネススタイルないし経営そのものといっても過言ではないし、昨年の損失も別に昨年突然違うことをやって大損したのではなく、少ない引き当てで過剰な利益を狙いにいくというスタイルの延長上にあっただけである。そしてそのスタイルはまさにグリーンバーグ氏が培ってきたものではなかったのか?という疑問があります。

その中で出た会計疑惑は、まさに彼の経営スタイルが限界に達していたことの一つの表れだったのでしょう。そしてその結果の辞任でもらった退職金。在職中の報酬の10年分以上返還してちょうどいいぐらいだと思うワタクシの考えとのギャップはこの段階でかなり大きいのですが(まあ制度上払わないというのは無理なんでしょうけれど)、その退職金にかかる税金やら価格下落やらまでけちをつけるとはいったいどういう根性の持ち主なのか?それも会社が政府から救済されているさなかにアメリカ国民だって神経を逆なでされるのではないでしょうか?

最近の海外ブログの論調をみても極めて厳しいものがあります。Naked Capitalismさんのところでは、これまで穏健な表現だったブログでも最近グリーンバーグ氏個人に対する過激な論調(「資産全部没収だぁ〜」とか)が目立つという話が出ています。(びっくりしたのですが、このブログは最近ブルンバーグにも配信しているようですね)。

すでにAIGへの支援額は1500億ドル規模となっており、アメリカの人口を3億人とすれば、赤ん坊から老人まで一人当たり500ドルすなわち約5万円がAIGに支払われることになります。今回さらに300億ドルの追加支援。ニュースからの引用ですが、独立系調査会社グラディエント・アナリティックスのアナリスト、ドン・ビックレー氏は、政府によるAIG救済の規模が最終的に2500億ドルに達し、そのほとんどが返済されない可能性があるとの見方を示しているとのこと(ロイター)。グリーンバーグ氏自身によれば、彼自身、今回の金融危機で20億ドル以上損失をこうむっているとのことですが、このさなかにこういう訴訟のニュースが表ざたになるということは、国上げて彼を血祭りに上げようという機運が高まってきているということでしょうね。一人の独裁者の末路としてはまあよくある話ではありますが。

ただ、問題はもっと大きなところにありそうです。それは、AIAとかALICOとか「主として海外で事業を展開している」保険会社を米国政府がコントロールしてしまったこと。せっかく簡保とか民営化しそうだと思ったら、今度はアメリカ国営保険ですか?という猛烈な脱力感にさいなまれそうですね。今回のスキームではALICOなどの株をFRBが作る別の特別目的会社に移しそのSPCにFEDが最大260億ドル程度を優先株で資本提供する。その代わりFRBが9月の段階で用意したリボルビング信用枠600億ドルを優先株に見合うだけ削減する。ですから、ALICOなどに事実上米国政府の資本が入るわけで、事実上の国有化というのは決して誇張ではないでしょう。しかも、ファイナンスコストは救済のたびに引き下げられ、当初の懲罰的コストはどこへやら、今度はLIBORフラットだというではありませんか?

日本では保険会社が破綻したら大和生命のような運命が待っているだけで、政府は救済してくれません。今回確かにALICOの問題ではないとはいえ、AIGの裏づけの無いALICOの信用力はどの程度のものでしょうか?このような個別保険会社に対しての政府支援が米国法域内でおこなわれるならそれは各国マターなんですが、日本で営業している会社に事実上の支援をつけて営業を継続させるというのはいかがなものなんでしょうかね?スジとしては、保険契約者の保護を各国の政府と協議した上で、各国のオペレーションを現地の企業に投売り譲渡するべきなんじゃないかと思いますけれど。(決してポジショントークではありません)。まあ今回の出来事の結果として、今後100年ぐらいはアメリカ様におかれては、他国の非関税障壁とか不公正な貿易慣行とか補助金がどうのとか一切口にされることはないと信じておりますが。

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内 容 ニックネーム/日時
厭債害債様、このAIGの$100Bの損失にはあきれ果てて物も言えませんね。CNBCのDavid Faberも、「これだけの損失は、相当なCreativityが無いと生み出せない」と言っていました。

初めの頃は、ビッグ3はけしからんと思っていましたが、このニュースを聞くと、何か、GMの方が人の役に立つ乗り物を作っているだけ、まだ良心的だとさえ思います。(品質はともかく)

CNBCでグリーンバーグがインタビューされているのを見ましたが、彼が去った後も問題は雪達磨式に増えていったようですが、本当の所はどうなのか・・・。

GM・クライスラーではレイオフ、UAWからの妥協を引き出すなど、多少の努力が見られるのに、AIGからはあまりそうした話を聞きません。(ちゃんと聞いていないだけかも知れませんが)
NJ Resident
2009/03/05 05:35
NJ Residentさんどうもです。まあうがった見方をすれば、意図的にスケープゴートになっている可能性はありますが。CDSだけが損失の原因ではないですが、やはり基本的には金融保険リスクに対する引当不足だろうと思うので、その流れはグリーンバーグ氏のときからできていたはずです。
厭債害債
2009/03/06 01:30
>まあ今回の出来事の結果として、今後100年ぐらいはアメリカ様におかれては、他国の非関税障壁とか不公正な貿易慣行とか補助金がどうのとか一切口にされることはないと信じておりますが。

2009/4/1
かんぽ保険問題に懸念表明=貿易障壁報告
−USTR
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&k=2009040100086

厭債害債様の皮肉があまりに的確で驚きました。
 どういう理由づけを行えばアリコはいいのにかんぽはだめなのか?彼らは何かしら言及しているのでしょうが私の想像の域を超えています。
通りすがり
2009/04/01 12:18
通りすがりさん、コメントありがとうございました。おそらく、米国においては細かいロジックとか構っていられない状況と思われますね。
厭債害債
2009/04/06 05:33

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