厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS NHKの番組の雑感

<<   作成日時 : 2009/04/21 01:31   >>

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今回の金融危機を解きほぐしていこうという試みは賞賛されるべきですが、視聴者のレベルを意識しすぎるあまり、説明を過度に省略したり、感情的な部分をやたら強調しすぎているように感じました。なんだかはじめから結論ありき、みたいな作りで。まだシリーズは続くようなので、今後に期待です。

特に気になったのは、やはり金融というものの社会に対する意見の相違があるにもかかわらず、かなり一方的な立場から描かれていたのではないかということです。ワタクシ自身は実は番組(およびその中で紹介されていたカウフマン氏)と同じく「金融脇役論」に近い考えですが、これは必ずしも多数派ではないかもしれません。金融イノベーションによってこれまで資金が回らなかったところにまで資金が回って幸せになった人もいたでしょう。とりわけモーゲージ債(MBS)については、社会的に大きな役割を果たしたのだと思いますし現実に今でも大いに役立っているでしょう。(ぐっちーさんのブログにもありましたが、これが金融危機の元凶みたいないわれ方をするのはちょっとフェアではない)。そもそも、なぜ金融がこれほどまで前面に登場してしまったか?ということの検証ぬきには、今回の危機の真相には迫れないでしょう(いずれ放送されるでしょうけれどね)。個人的には、金融というのは消去法的に前面に登場してしまったのだと思います。先進国の総需要が落ち込み始めたときにどこに収益機会を見出せるのか?と考えたとき、「技術」と「売り方」によって割りと簡単に儲けられる金融が前面に押し出されてきた。これに金融緩和が定期的に後押しをして一つのモデルが出来上がった。地道な努力を必要とする製造業はその一方で片隅に追いやられ、米国経済のサービス化(すなわち高レバレッジ経済化)が進んだのだと思います。

経済にとって額に汗して働く産業(つまりモノの裏づけのある産業)はいわばエクイティーとでもいえるのではないかと思います。それは国を企業に見立てた場合、最後に確実に「食える」存在。最終需要をベースにするから、基本的にはバブルは起こらない。ところが金融やサービスというのはお客さんあっての、そして取引あっての存在すなわち取引のフローがないと儲からない仕組みでありその意味で他人資本であり「負債」なのです。ここを膨らませすぎたことが、すなわちバブルということでしょう。

ワタクシは額に汗することだけが立派だとは言うつもりもなく、むしろ金融を含むサービス業がスキルやノウハウを磨いた結果幸せになったこともあるはずだと思います。しかしながら、構造的にやはりサービスだけに依存するのは、そしてそれへの依存が無限大に高まりうると考えるのはやはり危険なのです。そもそも「金融立国」なるものの胡散臭さはまえから指摘していたことですが、最後は誰かがその過小資本のリスクに気付いて、逆レバレッジを取り始める。今回もアメリカではまさに住宅バブルの逆転が加速したのは、サブプライムなどのCDOの先物市場が暴落したことが一因ですが、結局そういうサービス化の進展が最後は自壊作用を起こすということを実は我々は味わったのだともいえるでしょう。

無借金経営、すなわちサービス(特に金融)に依存しない経営(経済)はそれはそれで立派ですが、結局のところ全体のパイが縮小する過程でバランスシートを縮小させなければならない。言い換えると生活の絶対値が落ちる。それを避けて成長しているという幻想を持たせるのが経営者(政治家)の仕事とも言えるでしょう。そのため、適度な負債を背負うこと、それによって将来の収益に期待することは許されるはずです。その将来の収益をもたらす一つの要因が「金融イノベーション」である可能性は否定できないのです。実際、それによって取引コストが減り、企業の収益性が上がり、それによって持続的な成長の一部を担保した可能性はかなりあるはずです。しかしそれにだけ依存してはいけない。過度な依存はあっという間に崩壊する、そういうことでしょう。

要するにバランスの問題だと思います。一方的に「だから金融は」というのではなく、役に立ったこと、たたなかったこと、有益だった面、有害だった面、それぞれをきちんと切り分けていく作業が必要なのだと思います。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
米国でも再現される失われた10年
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よく考えよう
2009/04/21 15:04
NHKスペシャルでさえ妄信してはいけません。
NHKスペシャルと言えば、クオリティーの高い番組という意識が私の中にも有ります。が、今回は完全にアウト、だった模様です。私は該当の番組を見逃しているので、ここで何度もご紹介しているぐっちーさんと害債さんの日記をご覧下さい。・大丈夫か、NHK(ぐっちーさん)・... ...続きを見る
ある日ぼくがいた場所
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【鷹鳩】超今更ですがNHKスペシャルを見た…
ソロモンの鍵で話題にしたNHKスペシャルマネー資本主義 第1回“暴走”はなぜ止められなかったのか〜アメリカ投資銀行の興亡〜をやっとこさ&... ...続きを見る
鷹くん鳩ちゃんの金融市場よもやま話
2009/05/09 23:42

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
NHKにはちゃんとしたアドバイザーがついていないのでしょうか?それとも、きちんとした説明を受けているのに、先入観からバイアスがかかった放送となってしまうのか?
私レベルの視聴者(普段からこちらやグッチーさんのブログを読んでるのに、知識が身についていない)だと、NHKスぺシャルともなれば、頭から信用してしていて、すぐ鵜呑みにしてしまいます。
それでも、後からなーんだ、ということになるんですが、ブログなどを読まれていない他の視聴者の方々は、そのままバイアスがかかったままになってしまいます。影響力が大きいだけに、なんとかならないものでしょうか?
39歳無職
2009/04/21 06:48
家でゆっくりしているときにこの番組が始まったので、2〜3分でチャンネル変更。昔の名前ででてます的業界人にインタビュー、しかも「目利き」役はマスコミ人…、結論デテますよね?
リラックスタイムに馬鹿な時間をついやしたくない。これなら「イロモネア」の録画を見てる方がずーっと健康的。
日経ですら中年にもなってアホ記事書いてる記者が結構いるのに、公共放送で金融テーマの深堀などできんの?
幸田真音に大金はたいて「責任編集」に就任してもらい1年半かけて取材して、放送前にベーシーック特集〜金融の仕組み、歴史、概ね2〜3の経済史観・学説を3回放送〜で、視聴者レベルを収斂させて…ぐらいお金・手間をかけないと迷走するでしょう。
私的"経済史"観としては、バブル崩壊を助長したのはNHK特集だと思ってます。90年8月に5回連続特集で「不動産価格」について特集組んで、その年3月の不動産に対する大蔵省「総量規制」に追い打ちをかけた"実績"があるから。放送の翌週から不動産市場は急激に冷え込み、マーケットは死にました。まだまだNHKを信じている人が多いから困りものですね。
お伊勢参り
2009/04/21 15:33
ぜひNHKの担当者に読んでもらいたい記事ですね。
名無之直人
2009/04/21 23:09
金融とは経済の血液でもあるお金を社会の隅々に溶かしていきわたらせる重要な社会の仕組みであり産業だと考えます。NHKにはもっと真摯に公平で基本的な理念を持って、素人にもわかりやすいくだらない主観で安っぽくかたずけてしまわずに、偏らない取材でまともなドキュメント番組を作って頂きたいものですね。
とおりすがり
2009/04/21 23:17
著しく同意です。
日本のマスコミは論調が偏りがちで、例えばちょっと前までは流行りのSWFを作るべきだと言っていたのが気がつけばどっかにいったりとか、結局流行の後追いですね。
マーケットに接していると実感するように、人の後追いはポジションを取った瞬間は居心地いいですが、結局儲かりません。
個人的にはNHKはマスコミの良心だとの期待を持っておりますので、次の局面を見据えて視聴者に意味のある(流行の後追いではない)インプリケーションを与える番組を作ってもらいたいと願っています。
HKPB
2009/04/22 01:47
おはようございます, どのマーケットも閑散としているようですね。
私もこの番組見ました。面白かったですよ、お年を召した方々を引っ張り出してくるのは、流石NHKと思いました。ただ、所詮結果が出ているものに対しての後追い番組なので・・・
犯人探しは、番組として見ているほうもわかりやすくなるし、作るほうも簡単でしょうからね。
もちろん、お屋敷を意図的に見せたり、今更ソロモンかよ??というちょっと解せない部分も多かったですけどね。(笑)
私の考えですが、高給取り=有名税だと思うんですよね、スポーツ選手や芸能人等と同様に。
金融関連に勤めている方は、世間一般と比較して高給を受取っている方が多いと思いますので、このようにアゲンストになった場合は必要以上に叩かれたり、偏った見方をされる事があるのではと思います。
自分としては、このような見方もあるのだなぁ位で眺めていたいと思います、自分が知らない事も多いですから勉強になります。 なんといっても、Nスペはわが国唯一のまともなドキュメンタリー番組と信じていますので。
フレッド
2009/04/22 10:14
単なる金儲け批判でおわっていないところは評価できるとおもいますが、なんだか一生懸命調べて、大御所に話を聞きに言った取材の努力は認めますが、、。製作者が実務やきちんとした言葉の意味を消化しきれなかったんだろうなあ、と思います。M&Aの大御所・ペレラ氏に何を聞きたかったんでしょうかね。
個人的には本で出てくるような有名人の今の姿を見れたのはよかったですが。
ttori
2009/04/22 21:14
39歳無職さん、どうもです。番組を弁護するわけではないのですが、事実そのものやインタビューの紹介にはそれなりの価値があったとは思います(興味深いという意味で)。ただ、おっしゃる通り、バイアスというか一定の結論ありき、というにおいが強く感じられました。

お伊勢まいりさん、コメントありがとうございます。バブルの崩壊は、まあだれがどうやっても起きるときには起きるとは思います。報道によって多少スピードの違いは出てくるかもしれませんが。視聴者レベルを収れんさせる、というのは面白いアイデアですね。

名無之直人さんどうもです。当ブログへのアクセスをチェックしたら、普段はあまりないことですが、ある時間帯に集中していろんな角度から検索がかかっていました。一応気にしてくださっているのかなぁと思いましたが。
厭債害債
2009/04/23 01:08
とおりすがりさんどうもです。個人的にはNHKはいい番組を作っていると思います。今後のシリーズに期待します。

HKPBさんコメントありがとうございます。報道の役割としては、目新しい切り口をいろいろ提供してくれるとうれしいですね。

フレッドさん、どうもです。おっしゃる通りNスペは全体的にはクォリティー高いです。今回も、一つ一つの事実やインタビューそのものには価値がある部分も多いでしょう。

ttoriさんどうもです。なんだか、過去の人も多く登場していましたね。まあそういう価値もありました。
厭債害債
2009/04/23 01:16

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