厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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<<   作成日時 : 2009/05/08 17:20   >>

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ストレステスト

毎朝仕事場でブルンバーグを立ち上げてログインすると、最初の画面には「本日の名言」(たまには迷言)がでます。古今東西の人々の言葉を毎日一つ紹介してくれるのですが、今日の画面には次のような名言が…

「データはあらかじめ予想した結論に合うように整うものだ。」
―ジョージ・E・リーディ(元米大統領報道官)―

ストレステストの結果発表の日にこのようなものを持ってくるとはブルンバーグさんもなかなかお人が悪い…

というわけで、ストレステストの結果自体はほぼ事前にリークされていた通りの内容で、バンカメさんとウェルスファーゴさんが結構大きな追加資本の必要を指摘されたわけですが、もともとバンカメさんなどは公的資金はもういらんと大見得切っておられて、今回も優先株の普通株転換とか株の売却とか利益から捻出出来るからということでそれもまさに市場の見立て通り。官民一体でうまくソフトランディングしましたね。金融株がそれを織り込んで上昇し相場を牽引してましたから、リークとあわせてまさに官製相場。

ストレステスト結果要約の原本
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20090507a1.pdf

必要追加資本額:前日ブルンバーグに出たリークの数字と実際との差(主要なところのみ)

前日の「リーク」   結果(億ドル)
BoA   340        339
ウェルス 150        137
GMAC  115       115
シティ    50        55
モルスタ   0        18
GS      0         0

ま、想定する損失率がわかれば大体算出可能ではありますが。

しかしながら、すでに多くの人々が指摘している通り、ストレステストの前提となる経済シナリオがすでに「ストレス」ではなく「現実」になっているということは見ておかなければならないと思います。今回のシナリオでの失業率8.9%なんて今日出てしまうんではないかとか。それでも今後2年間のローンポートフォリオの損失率は世界大恐慌時より上で見ているようではあります。
もう一つは、これも多くの人が指摘している通り一部の金融機関について時価会計の緩和によって必要額が過小評価されている可能性。個人的にはそれでもいいとは思いますが、ありていに言えばこれに関しては「ストレス」かけてないじゃん、という批判は十分成り立つところです。この辺はまあいろいろ意見があるところでしょう。ワタクシは所詮世界で協力して機能不全になった市場や信用を回復するための「政治的ショー」だと考えているので、何やってもかまわんと思っております。

一応公平を期すために書いておくなら、ローン全体の想定損失率は9.1%と1930年代の大恐慌後の水準並のかなり厳しい目の想定となっており、上記リンクの6ページにあるように今後2年間で最大6000億ドル程度の損失を銀行システム全体として予想するのですが、これを「資本以外のリソース」によって3629億ドル吸収するシナリオとなっています。これは注記にあるようにローンロス控除前のネット収益で吸収するということで、その太宗は業務純益と想定されます。ご存知の通り業務純益とは銀行にとってはその最大の要素が負債コストと運用益との差であり、要するに一般的には長短金利差ということですね。そうでしたか!最近FRBが長期債買い入れをサボって長期金利の上昇を意図的に放置しているかに見えたのはそういうわけだったのか、と勝手に納得してますが思い込みが過ぎますかそうですか。いずれにしても、この金額はイールドカーブがたっているほど出易いから、長期金利が高いほうがよろしいということになってしまうのですけれどね。

とはいえ重要なことは、今回公的資金の追加投入がストレステストの結果自体からは直ちに必要といえるほどではない、という結論に持っていけたことでしょう。もし必要となればまた議会ともめたり、当局者と金融機関との関係とかいろいろ言われたりするネタを与えますから、まずはほっとした人も多かったでしょう。今朝のモーサテで東京短資の加藤出さんがお話になっていた通り、当局の信頼性については周りの目が結構厳しいのです。5月5日のWSJはNY連銀会長(chairman)であるStephen Friedman氏が株式を保有しゴールドマンの役員を兼務していたことが問題となっていることを報じています。もともとFEDの監督の下になかったゴールドマンですが、昨年普通銀行化してFEDの監督の下に入ったため利益相反の疑いが出た。本人は今年終わりには辞任するとの意向を示していますが、やはり株を持ったり役員であり続けたりしたければ、普通銀行化した段階で辞任すべきだった、というのが大方の意見だろうとは思います。
別件では、ガイトナー財務長官も銀行幹部と頻繁にこそこそ会いすぎだとか言われているとか。(事の成り行きを考えると頻繁に会っていて当然だと思うんですが)。事の当否はさておき、こういう事件はいまだに政治ネタとしては格好の材料になるでしょう。

問題は、揉めるのを恐れるあまり、当局者が必要なときに関係者と接触したり話し合ったりすることまで控えたり、要するに正しいことまで周りの目を気にしすぎてやらなくなってしまうことです。こういうときだからこそ、正しいと思うことは信念をもって実行してもらいたいと思いますね。


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ストレステスト不勉強(6)
で、ようやく出ましたね。内容についてのコメントは、以下厭債害債さんのエントリが素晴らしいので、素人はコメントを控えます。何が素人かというと、Fedが長期金利の上昇を故意に放置している、というのは僕は全く気づかなかった。テスト結果のリークも、明らかに故意にやっているのにも関わらずガイトナーは馬鹿じゃねえの程度の評価しかできなかった。今にして思えば、あれは非常に高度な市場との対話戦術だった。 ...続きを見る
ずんちゃか株式投資雑記帳
2009/05/09 13:40
ストレステスト
米政府と米連邦準備理事会は7日、大手金融機関19社の健全性を審査する資産査定(ストレステスト)の結果を公表しました。景気が一段と悪化した場合の潜在的な損失が来年末までで計6000億ドル弱になると予測するとともに、バンク・オブ・アメリカやウェルズ・ファーゴ、シティグループなど10社について計746億ドルの資本不足の恐れがあると査定しました。 ***♪やさしさで溢れるように♪ ...続きを見る
歌は世につれ世は歌につれ・・・みたいな。
2009/05/11 21:31

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
失業率あっさり8.9%達成してしまいましたね
損失見込み額は持ってる資産と損失見込みの比率で額がFixされてしますと思うので
ロビイストたちはがんばってうちの銀行はもっと稼げるはずだ交渉しに行ったんでしょうかね?
キュン
2009/05/08 23:12
>別件では、ガイトナー財務長官も銀行幹部と頻繁にこそこそ会いすぎだとか言われているとか
これは4月27日のNYTに出た下記の記事のことですね。
http://www.nytimes.com/2009/04/27/business/27geithner.html?_r=1&scp=10&sq=Geithner&st=cse
どこから手に入れたのかNY連銀総裁時代のガ氏の日程表(誰と会ってメシを食っていたのか等々、中には日本財務相ご一行なんていうのもある)を延々とリークして「コイツの正体はこうだ!」とやる暴露物です。
報道の時期がちょうどビッグ3のチャプター11申請あるかないか、喧々諤々の時期だったので、ガ氏(財務省)の主張を疎ましく思ったさる筋が「警告」のつもりでリークしたのではないかしらん・・などと勝手に憶測逞しくしてしまいました。
Quad Sculls
2009/05/09 02:14
今回の金融危機の発端となったCDOを初めとしたデリバティブズの損失はどうなっているんですかね。

素人目にはCDOなんか買い手がいないんだからゼロ、甘く見積もっても20%位で損失確定させなければ、
規模から言って失われた30年になりかねない。

そりゃあれだけFFレートを下げれば、業務純益は急増しますね。一方不良資産は簿価近くで目をつぶる。

専門家ではないので、勘違いもあるかとは思いますが、1Qの決算、今回のストレステスト。官民上げての粉飾ではないですか?
株価を吊り上げて早く増資させようってんですかね?

Eishin
2009/05/09 09:56
ストレステストの結果、たびたびリークされた数字として色々なメディアで出てきましたが、以前FOMCの結果が事前に漏れたという噂がマーケットで流れたとき、アメリカ人の同僚が‘アメリカに限ってそのようなフェアでないことが起こるわけがない’とむきになって否定していたのを思い出しました。
色々な面でアメリカという国が急速に変質してきているのを感じます。。。
DD
2009/05/10 09:32
失業率など「どこがストレステスト?」という感じですね。リーク合戦といい、自動車産業への対応といい、オバマ政権、いろいろな動きを見ていると(あほな株屋な私がいうのもなんですが)”小賢しい”という感じなんですけど、どうでしょうか。
ttori
2009/05/10 10:35
キュンさんコメントありがとうございます。ロビイストたちは資産査定や負債査定など様々な面でいろいろ活躍されたみたいですね。
Quad Scullsさんコメントありがとうございます。まさにそれではないかと思います。(ワタクシも伝聞でして失礼)。
Eishinさんどうもです。粉飾というか協力というかは言葉の問題にすぎないのだと思います。結局のところ信用や信頼というのは目に見えないものを相手にしているのですから、余計な事実は知らなくてもいい部分はあるのではないかと思っています。ただし、過ちを悔い改めるならば、という前提ですが。
DDさんコメントありがとうございます。おっしゃることはワタクシも痛感します。10年ぐらい前までは少なくともアメリカという国に対するゆるぎない信頼がどこかにありましたが、ブッシュ政権が根本的にぶち壊したのだと思います。
ttoriさん、どうもです。あるいみ、今回は開き直っているって感じかもしれませんね。

厭債害債
2009/05/11 00:46
CEBSの発表によると、EUもストレステストを行うみたいですね。丁寧にも、個別行を審査して資本増強の必要性をチェックするものではないと言っています。IMFの推計のように、マクロ的な試算ならいいですが、個別行の積み上げとなると、今度は欧州で米国ストレステストの時と同じくリーク合戦が起きるかもしれませんね。そのときはいよいよ天王山でしょうか。
blue^2
2009/05/13 22:14
blue^2さんどうもです。米国の息のかかったIMFからの強い圧力でしょうかね。欧州はダメなところはすでに事実上国有化されているし、もともとフランスなどは国有化に何の抵抗もない(社会党政権時代は国有銀行)し、すでに世の中は米国も欧州も「何でもアリ」を織り込んでいるのでそれほど大きな話にならず、アメリカの単なる嫌がらせにしかならないと個人的には思います。むしろマクロの状況がこれからどうなるかが焦点だと思います。
厭債害債
2009/05/13 23:37

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