厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS ムーディーズは資本性証券の格付け手法を見直しへ

<<   作成日時 : 2009/07/10 17:25   >>

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Bradford & Bingleyが劣後債利払い停止でCDSのトリガーを引きました。すでに国有化されている英国の住宅ローン会社ですが、今回劣後性のものについては投資家に責任を負担してもらうという方針が英国政府から明確にされており、その結果として劣後はデフォルトになったということです。この結果CDSのポジションについてはオークションを経て精算されることになります。

ところで、格付け会社のほうでは、銀行についてはこれまでこうした劣後性を持った証券にも政府などによるいわゆるシステミック・サポートを考慮した格付けを付与してきました。かなり資本色のつよい優先出資証券のようなものについても、いわゆる「ノッチング」すなわち銀行の債務格付けから何ノッチか下の格付けをほぼ自動的に付与するというやりかたでつけてきたわけで、見方を変えれば個別の銀行ごとの事情よりもシステミック・サポートに重点を置いた見方といえます。

ところが、金融危機後の各国政府の対応においてシステミック・サポートは存在するものの本来損失を優先的に負担することが予定されている投資家層(つまり劣後性証券の投資家)にしかるべき損失を負担させる動きが明確になってきています。

ムーディーズさんがこの辺をまとめているのですが、今のところサブスクライバーオンリーのようなので、ここでは出すことができませんが、いわゆる「ハイブリッド」証券(債券的性質と資本的性質を併せ持ったたとえば劣後債とか優先出資とか)について政府が投資家に損失を負担してもらう可能性が強い事例を列挙しています。

こうした流れを受けて、システミック・サポートの要素を少なくした資本性証券格付けを目指すというのが今回の改正案の主眼と思われます。

ところで、そもそも論としてですが、資本性の強い証券における「格付け」はそもそも何を意味しているのでしょうか?資本性の強い証券ではたとえば永久劣後債とか優先出資証券とかそもそも「満期」の概念のないものが多くあります。この場合元本は当然のことながら支払われなくてもデフォルト(クロスデフォルトやコベナンツ等で引っかかる場合はありますが)にはならないのです。それでは利息や定率の配当金をミスした場合はどうかというと、「債券」はデフォルトの対象となりますが、優先出資などの配当の場合はそもそも(たとえば赤字とか)一定の場合に企業が支払うことが許されないあるいは払わなくてもいいという条項が入っていて、そうした場合不払いが債務不履行を構成することはないのです。こういう証券について、債務不履行という意味でのデフォルトはほとんど起こりえません。本来「元利払(が満額期限に行われること)の確実性」を示すはずの格付けの意味はたしかによくわからなくなります。この辺の概念整理が実はこれまで十分になされていないきらいはあります。この点については以前お話を聞く機会のあった格付け会社の方も同じようなことをおっしゃっていました。

それでも、こうした優先出資証券などに格付けが付与されているのは、これはワタクシの推測になりますが、投資家がそれを要求するから、ということではないかと思います。ワタクシなどはなっから永久劣後より強い資本性を持つ証券など株と同じで格付けなど意味がないと思っていますが、実際には多くの機関投資家では「債券投資」の部門がこれを扱っていると聞きます。そうすると、多分一定の格付けによる足きりがあって、どうしても格付けがあるほうが投資しやすいのだと推測されます。

これまでは、システミック・サポートがあるという理由で、たとえば銀行債務格付けがシングルA格ぐらいの(かつての邦銀としては普通ぐらいの)ところだと、結果的に優先出資証券の格付けでもなんとかトリプルB格となることが多かったのです。ところが、今回ムーディーズさんの見直しが実行されますと、(あくまで現状の案ですが)こうした証券の格付けはダブルB格またはもっと下へ落ちる可能性が出てきます。

まあほとんどの投資家においては賢明にも格付けだけを判断基準として投資しているわけではないと思いますので、こうした変化がいきなり売却処分につながったりしないとは思いますが、万が一実行された場合の市場への影響がちょっとだけ心配です。

いずれにしてもこれはまだ意見徴収の段階であって、今後検討を重ねるということですが、私見としては、そもそもはじめからシステミック・サポートなど考慮することが格付けとしてふさわしいのかどうか疑問であったわけで、これほど政治の対応がよく言えば柔軟、悪く言えば場当たり的となると、そうしたシステミック・サポート全体への信頼度は大きく割り引くべきであり、その意味では正しい方向を目指しているのではないかと思います。ただ、先にも述べたように、資本性の強い証券における格付けそのものについて考え方を整理しておく必要がありそうです。これは格付けをつける側もユーザー側も両方で必要だろうと思います。

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共有地の喜劇
2009/07/11 21:55

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
格付けの定義をどう置くかの問題ですね。血が騒ぎます!格付けは、デフォルトの可能性なのか、元本が毀損する可能性なのか。私は前者なはずだと思っているのですが、だとしたら優先出資証券はほとんどトリプルAレベルなはずです。
元IB現PB
2009/07/11 00:48
元IB現PBさんどうもです、おっしゃるように格付けの定義についても、優先出資などはどうもはっきりしない感じがしてますね。
厭債害債
2009/07/12 18:21
システミック・サポート初めて聴いた言葉なので、勉強になりました。で直感ですが、今回の危機に対する米政府の時間的な差異における対応、女王陛下の銀行をつぶしたBOEの当時の状況下での対応、最後に金融危機時の本邦BANKに対する極めて政策的な対応を考えつつ分析したら面白いですね。しかしこういう状況では多分こんな格付けは意味をもたないのでしょうね。まさにシステミックな状況の打破なのですから。後は政治の世界の計量化でしょうか。うーん
かる
2009/07/15 00:11
かるさんどうもです。本邦の危機対応の先例はきわめて有益な示唆を今回もたらしているはずですが、今回は資本性の強い部分についてこれまで以上に厳しい対応が予想されます。
厭債害債
2009/07/17 21:06

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