厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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<<   作成日時 : 2009/11/27 00:21   >>

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円そのものが買われる理由はないが、この状況は通貨市場で「遊んでいる」人々にとっては楽しい見世物となっている事だろう。12月の高値87.10近辺まで近づけて米国がサンクスギビング(感謝祭)で参加者がほとんど居ない事を認識した上で、東京時間の昼休みにバリア系のトリガー(一定の価格に達すると大きく損益が変動するタイプのオプションのその一定価格)をたたきに行くというのは、藤井財務大臣が何の予告もなしに介入できない事を完全に見透かされているからこそ可能な取引だ。

午前中には副大臣がわざわざご丁寧に介入に否定的とも取れる発言をしてくれている。少し動きが出始めたお昼ごろに藤井大臣の否定コメントが出、また何らかの措置にも言及することとなったが、為替相場の水準については「絶対に」コメントしない、とヘッドラインが打たれた結果、やや冷静さを欠いていることがミエミエで、これがまた付け入られる余地を与えているように思える。

今年度に入って、これまで外債投資の主役だった保険会社の取り組みは、あまり為替リスクをとらない方向に変わっている。為替リスクをとらない以上、相場つきにあわせたヘッジオペレーションが少なくなっている。とりわけドルについては、なにせ中期ゾーンまで金利差がそれほどない状況だし、6ヶ月LIBORまでは日米逆転しているのだから、金利狙いで米ドルに投資するインセンティブはまったくないから、短期スペック以外でドルをロングにする理由はまったくないのだ。
それでも、ちょっと前まではインフレ懸念とかバブル懸念とか、意外に早くFRBが引き締めに走るかもしれないという思惑があり、ドル売りの手を押さえていたのだが、23日に発表された11月のFOMCの議事録の内容が結構大きかった。

それは、かなりの紙幅を割いて雇用の問題を取り上げ、結論のところで低金利を維持する理由の前提となる景気判断として「今後2年間は失業率は高止まりし、インフレも長期にわたりFRBの目標の範囲に抑えられる」と明言していることだ。一般にインフレを抑える事が中央銀行の目標とされているうえ、これまでのFRBの金利操作(特に不況時の緩和からの引き締め転換)は失業の改善がかなり大きな要素である事、しかも過去の例では失業がピークアウトしてから1年以上たって引き締めに転換しているということを考えれば、このコメントは「今後2年ぐらいは利上げはないです」と宣言したに等しいインパクトがある。

もっともこんな事はいまさらはっきりしたわけではなく、市場参加者のほとんどは今年度に入ってドルに対して見切りをつけている。

そのひとつの姿が、オプション市場のインプライドボラティリティーの状況だ。今年3月ぐらいまでは機関投資家もヘッジやらなにやらで動いていたし、ヘッジのためのドルの通貨オプションの需要もそこそこあった。それは、多少なりともドルが急騰する可能性をまだ考えていたからだろう。万が一踏みあげられたら困るから、オプションにしておこうという需要が残っていたのだと思う。ヘッジのためのオプション需要があるから、ドル安になればオプション料(=インプライドボラティリティー)が上がりドル高になれば下がった。しかしそもそもオプションというのは相場が上にも下にも動く可能性があるから意味があるのであって、一方的に片側に行くということが極めて高い確率で見込まれる場合、オプションではなくその資産そのものを売ってしまうべきなのだ(つまり時間的価値は無駄)。しかも今はヘッジコストがほとんどゼロであるから、先物で売ってもコストはほとんどかからない。

下のチャートを見ていただければ、今年の3月以降はドル安なのにオプション料もさがっている。これはこれまであまり見られなかった情景だ。極論かもしれないが、市場がドル上昇の期待をほとんど失っていることの現われかもしれない。言い換えると現状におけるオプションのボラティリティーの低さは、すでにドル(という通貨)に関して市場がほぼ投資対象としての関心を失っていることの現われではなかろうかと勝手に理解している。これは金の値上がりと根っこが同じものだろう。
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本日は明らかにドル対円の相場となっている。おそらく実需も一部あわてて為替ヘッジに走っている可能性はあるが、明らかに場にさらされたポジションを狙って薄い相場の中投機が動いている感じだ。それゆえ反転の可能性も高い。しかし、不気味なコンセンサスは依然として消える事はない。ところで、一方で中国は、おそらく巨額の介入によって事実上のドルペッグを最近維持しているから、このドル安局面では円に対しても自国通貨安となっている。日本が輸入するものに関してはデフレを輸出していることになるわけだ。そういう政策によって、中国は競争力を維持し、景気維持につなげている。いろいろいいたい事はあるが、これほどまで明確に自国優先のスタンスを示されるとかえって清清しい。

翻って、日本では株がぼろぼろになろうが為替がドル安になろうが、政治のほうからはマジメに考えている雰囲気が伝わってこない。やはり首相がお金持ちだとまったく世の中で起こっていることが理解できないのだろうか?

介入は無駄だというのはある種の正論だ。株だって名目成長をすぐに引き上げる手段が悩ましいのだから、即効性のある対策などないというのもその通りだろう。しかし、あらゆる局面であらゆる手段を使って国民の利益つまり国益を守る事が政治の最優先課題だと思う。今の政権には「国益」という観念が希薄なように思える。CO2排出問題もしかり、金融機関の自己資本規制ルールについてもしかり。外交の究極の目的は「自国民の保護」であり「自国の権益の維持拡大」だ。交渉は様々な手練手管をつかいギブアンドテイクを繰り返しながらも、最後はそこに行き着くべきなのだ。良い格好とか名誉とかは副次的なものであり、あくまで自国の利益が守れて始めて成立するものだという事を忘れているのではないか?よその国を押しのけてでも日本国民がハッピーに暮らせるような状況を作るという視点、それが裸の外交の姿だろうと思う。今の政権からはそういう気概がまったく伝わってこない。それがワタクシにとって実は最大の不満である。

一両日のドルの下攻めは、ワタクシの目には、投機筋がニヤニヤしながら政治の対応能力を試しに来ているように見える。早い話がなめられとるんだと思います。

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円高関連とかの続報とか参考記事
害債さんが非常に参考になる記事を書かれてましたのでご紹介。・試されている日本現政権から『国益』を守ろう、という姿勢が全く見受けられないというのは同感です。右翼的な領土問題どうこうではなく、国民の利益の最大化という政権にとって避けては通れない課題から目を... ...続きを見る
ある日ぼくがいた場所
2009/11/27 14:50

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
今朝の値動きも強烈でした。
元からの投機筋の思惑に、ドバイショックという絶好の口実が重なったのでしょうか?円が買われる理由がないというご意見にまったく同意なんですが、それにしても・・・
もしかしたら、私の知らない円の魅力があるんじゃないか?妙な勘ぐりを入れたくなりますが、そんなもんはないですよねえ・・・
39歳無職
2009/11/27 11:00
>今の政権には「国益」という観念が希薄なように思える。

選挙前から国益なんて考えてないのは、はっきり見えてましたね。
外国人地方参政権なんて話も選挙前からありましたし。
献金問題等で、鳩山政権が年内持つかどうかも問われてます。
mikura
2009/11/27 17:35
某にっけいにも書いてありましたが、独裁国家だからできる徹底した国家、人民の為の「経済政策」が今回は当たってるわけです。
それにひきかえ、欧米本邦は口先では、市場の暴走を許さない規制だの、会計処理の厳密化だの、M&Aだの小手先まがいをやってきましたが、全く20年にわたって何の経済成長の役にはたっていないかったのは明白ですね。
結局こういった規制だのなんだのやっても、方やその影でわけのわからんインチキで金を儲けた振りをしてきただけで、国民経済はぼろぼろです。
で仕分けもいいが、今やることは、財政再建ではなく積極財政での下支えだろ。こんなことをやって官僚いじめても景気はよくならんことをアホな国民は気がつけよ。またマスコミもちゃんといえよ。
かる
2009/11/28 00:10
39歳無職さん、どうもです。次のエントリーになぜ円高かというのは書きましたが、それゆえいずれは円安というも我々のコンセンサスではありますが、当面はスパイラル的にオーバーシュートする危険がありますね。

mikuraさんどうもです。おっしゃる通りかなり政権の問題がクローズアップされてきそうです。

かるさんどうもです。金融の果たす役割についてコンセンサスというか本来あるべき共通の意識が欠如していたことがここにきて問題として顕在化しているような気がします。今回の事件で金融が持つインフラとしての重要度が改めて認識されたわけですから、おのずからそこにかかわる人々の行動に関する制度設計が改めて問われなければいけないし、ルールもそれに沿ったものに改めるべきだと思います。
すでに何度か書いた通り、バブルやレバレッジの根っこには時価評価によるBS/PL作成が深くかかわっています。それが逆転しただけのことです。そういう妙な変動性(リスク)を避けるには、時価によるBS/PL表示をもっと制限し(ディスクロは別)急激な変化にさらされないようにすべきだと考えています。
厭債害債
2009/11/29 12:24

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