厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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<<   作成日時 : 2010/06/10 13:26   >>

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ご存知シェイクスピア悲劇です。黒人の勇敢な貴族オテロが、副官に有能だが単純なカッシオを据えたことから、昇進を期待していたイアーゴウから二人は強烈な嫉妬と恨みをうける。またオテロが若くて美しい妻デズデモーナを娶ったことも嫉妬を増幅させた。
イアーゴウは酒に弱いカッシオを泥酔させて乱行を働かせ罷免させられるようにしむけたりするなど、相当ワルに描かれているのですが、なによりもオテロに耳打ちして妻デズデモーナとカッシオとの不貞関係がさもあるかのようにオテロに思い込ませ、底なしの悲劇へとこれらの人物を放り込むところが真骨頂であります。

実体がない不貞にもかかわらず、オテロがイアーゴウの耳打ちに加え、イアーゴウがそれに符合するかのような事実を強引に関連付けてオテロに提示するので、単純な人物として描かれるオテロは簡単にそれを信じてしまい、最後は本当に純真で貞淑な若妻デズデモーナを殺してしまい、その後に真実を知って自刃してやはり死にます。単純な人物がとらわれる「不信の連鎖」がいかに恐ろしいか、を示したものといえます。

今の欧州の状況というのはまさにそれに近いのではないかと思います。そもそも人にしても国家にしても、表には出ていないけれど何らかの底暗い面というのはありがちで、たとえば男性が女性を見る時多少性的な想像をしてみたり、会社で地位のある人が実は思想的には相当な人種差別主義者だったり、とか。国家で言えば、まさに本当は赤字だらけでもなんとなく信頼してもらって借り換えがスムーズにいっていても、どこも将来返せる目処など立っていない、とか。

こういう状況で「本当の姿」とか「内心の邪悪さ」とかを誰かから耳打ちされ、相手の「本当の姿」なるものを見たような気にさせられてしまう、というのはある意味大変不幸なことだと思います。仮に自分の周りに普通に歩いている人々の内心が漫画のフキダシのように頭の上に全部文字あるいはイメージで表示されたら、それこそ満員電車とかは大変な騒ぎになるでしょうし、それこそ家庭でも職場でも、その新しい体制に順応するまでまともな人間関係が構築できないことが結構増えるのではないでしょうか?実は人でも企業でも国家でも「本当の姿」とはそれ自体かなりあいまいなものです。内心でいくら邪悪なことを思っていてもそれを一切行動に移さない限りその人は邪悪な人とはいえないのと同様、企業でも国家でもたとえ赤字がおおきくてもそれをカバーできるファンディングが続く限りある意味ではいい主体だと思います。そういう流れを支えるものが「信用」であり、信用が世の中を支えている部分がかなり大きいことはきちんと認識しておかなければなりません。

特にお金の世界は完全に「信用」の上に成り立っているのに、それを壊そうとしてしまうのが今の世の中です。まさに今のマーケットはイアーゴウに毎日のように耳打ちされるオテロのようなもの。これが「アイツ」の内心でっせーとか、これが奴の本当の姿ですよといった話をいかにも状況証拠っぽいデータやアネクドータルなものと同時にさまざまな人々から提示されているわけです。生半可な信頼など簡単に吹っ飛んでしまう。そして一度信頼が失われてしまうと、今度は不信が自己増殖していきます。あらゆるネタが不信をあおる。先日のハンガリーの話など、その典型でしょう。規模が小さくすでにIMFが介入しており、コンディショナリティーを守ることだけが問題なのに、いまさら前政権がごまかしたかどうかなど関係ないのですが、これを契機にまたどこがハンガリーにエクスポージャーが多いかとかつぶしあいが始まってしまいました。

こういう仕組みにはどこか歯止めが合ってしかるべきなのですが、オテロに出てくるデズデモーナは最後まで夫を信じしかも最後の瞬間は夫の変身を知りつつ慫慂として死ぬ。一方邪悪な人間として描かれるイアーゴウにはなかなか良くできた妻がいるのだけれど、こうしたきちんとした身近な人々の存在も、悲劇を防ぐことはできなかった。彼らは逆に「知らなさ過ぎた」のです。とりわけイアーゴウの妻エミーリアは無知ゆえに見事にイアーゴウの先棒を担がされてしまい悲劇に加担してしまう(そして最後は夫に殺される)。このミスマッチも悲劇を余計に際立たせる要素ではないかと思います。ユーロ圏でも周りの愛情だけではどうにもならないこともある、そして単純で無知な情報の仲介者がその悲劇に加担するという面まで示唆されているようで、怖いですねぇ。

にんげんだもの・・・個別に信用崩壊することはやむをえない部分もありますが、問題はそれは自分自身できちんと判断しましょう、と言うことに尽きるんだと思います。間違ってもイアーゴウが闊歩して人々を不幸の連鎖に陥れるようなことがないよう、参加者がきちんと自覚を持つ必要があるのだと思います。

そういえば、オテロの舞台もキプロスあたりでやはり南欧なのでありました。人間と言うのは厄介なもので、それほど進歩しないものらしいです。

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2010/06/18 00:30

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