厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 債券バブルの崩壊

<<   作成日時 : 2010/09/07 10:51   >>

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日本の国債金利が急騰している。10年満期の国債で言えば8月25日には0.9%を割れていたのが、昨日はほぼ1.2%となり短期間で0.3%も動いた。海外では最近それほど珍しい動きではないものの、日本のマーケットとしては久々に見る激動である。これに輪をかけてひどいのが20年満期の国債。6月末からのラリー(金利低下)の分をほぼ1週間で吐き出した格好となる。

一般に言われるのは「小沢ショック」である。まさかと思っていた民主党代表選挙への小沢氏出馬。しかも当選する確率はかなり高く、その場合の財政拡大が懸念されることから一気に売られた、という理由付けがなされている。

しかしながら、われわれのような投資家からみれば、バブルが短期間に膨らみ崩壊しただけである。バブルとは何か?それは資産価格が理由のつけられない水準にまで上昇することだろう。その意味で特に20年債はおそらく1.8%を切った水準からバブルに突入したとワタクシは判断していた。その理由は、20年という特殊なゾーンの性格による。このゾーンは長期負債とのマッチングニーズが高いゾーンなので、長期負債のコストより低い水準で買ってしまうと、そういう投資主体にとってはいわゆる「逆ザヤ」になる。だから金利が一定水準より下がれば普通は買わないし、それによって需給が再びバランスするのが普通だろう。20年国債で1.8とか1.7とかの水準はまさに、そこから先は保険会社などの最終需要家において、新規資金投資として逆ザヤかどうか(もちろん余裕を見ているけれど)のぎりぎりのところに近いのであるから、そこから先はなかなか買えないはずだ。

ところが今年は特殊な状況が展開された。

第一に上記のような投資主体もふくめた資産構成の見直しである。生命保険会社は来年度から新しいソルベンシーマージン基準が適用される。その基準において国内株式は従来の二倍のリスクウェイトがつけられることになった。国内債券のリスクウェイトも上昇するが、10%から20%となるのと1%から2%となるのとではインパクトは格段に違う。おそらく保険会社のような主体はどこも今年は資産構成の見直しを積極的に行っており、その中で株を減らし債券を増やしていると推測される。
第二に一部の保険会社で株式公開したところは、EEV(エコノミック・エンベッデッド・バリュー)を公開するのだが、これはある意味においてバランスシートの総体的時価評価という意味合いを持つ。つまり負債も一定の前提で割り引いて資産サイドと比較し実態的な企業経済価値を表示しようという試みだ。保険会社の場合、荒っぽく言えば、負債のデュレーションが資産のそれよりも長いことが多く、この場合金利が低下すると固定利付きの負債の現在価値が資産の価値よりも大きく上昇してしまい、EEVにはマイナスに働くといわれる。このため、一時期超長期の金利が下がれば下がるほどそういった会社が超長期債を買いましていかなければならないのではないか?という噂が広がったのである(本当のところはよくわからないが、みずほ証券さんのレポートではEEV公表会社におけるリスクフリーレート50BPの低下によるEEV変化率をマイナス14.4%と試算しておられ、株式・不動産の10%下落によるマイナス9.6%より大きいと見ていた。ただしここで言うリスクフリーレートが何であるかは確認していない)。
第三に、これが一番厄介なのだが、従来の投資主体以外の人々がこぞってこのエリアに参入してきたことである。公社債の投資家別売買動向をみると、今年4月以降は(上記第一、第二の理由もあってか)生損保の超長期の買いが例年以上に多いが、官公庁の超長期も多く、これは簡保によるものと推測される。これに加え7月以降は銀行、地銀、信金などがこぞって参入して、ただでさえ需給がよくなっていたマーケットが沸騰してしまったのである。背景には融資が伸びないので運用先に困っているという事情があるうえ、短いところでは十分に収益がでないとか、さらにはモメンタムとしてかなり強いものを感じていた、というディーリング相場的な発想も出てきていたと思える。

もちろん、銀行にせよ地銀・信金にせよ、20年などという超長期の負債は持っているはずがない。極端なミスマッチ運用で期間損益を取りにきたものと推測された。ちょっと前までは、たしか「アウトライヤー規制」みたいな金利リスクテイクに一定の歯止めをかけるような考えが流行していたはずなのだが、あれはどこへ行ってしまったのだろうか?(まあコア預金なるものの概念も相当「柔軟性」が高そうだが)。ワタクシがとりわけ恐怖感を覚えたのは、1.8%を切った20年債を銀行などの短期預金取り扱いセクターが買ってくるのは、明らかに持ちきりを前提としていないからだ。つまり、短期の期間キャリーに加えてキャピタルゲインも狙うというという投資であることが明らかに思えたからである。異論があるかもしれないが、債券なり固定利付き投資は本来キャピタルゲインを狙うべきではないとワタクシは考えている。これを積極的に目指してしまうと必ず高レバレッジ投資につながりバブルの発生をもたらすと思う。持ちきりによって収益を上げるべき人々が買えないような水準というのは言葉を変えて言えば、最終需要家が不在だから、最後はババの抜きあいになるのである。保険会社の予定利率などそう頻繁に変わるものではないし、今は外債という代替手段もある。金利が低くなりすぎれば国債の最終需要とりわけ超長期のようなマニアックな部分の需要はストップするはずだ。そうなれば決算期末までに必ず彼らは売りに来る。また、こういう流れの中ではトレンドフォロワーのような外人なども乗ってきたかも知れず、こういう人々もひとたび流れが変われば必ず巻き戻す。

そして、先ほどあげたEEVのストーリーが本当ならば、金利が上がり始めたらEEV主体は逆にデュレーションを短期化しなければならないはずだ。となれば一気に流れは逆転する(EEVストーリーについては本当にそれに従った動きが出たかどうかよくわかりません)。

というわけで、今回のいわゆる「小沢ショック」はたしかにきっかけは小沢さんといえなくはないのだが、実は単に急激なバブルの生成と破裂というミニチュア版だったという風に理解している。まあ、ようやく買える水準まで戻ってくれてありがとう、というのが最近の正直な感想である。

おまけだが、過去のVARショックや資金運用部ショックなどxxショックというのはそれぞれもっともらしい理由がつけられているが、いずれも直前に大きな債券の根拠無き熱狂が生じていたことが多い。今回も、実体的に意味ある価格をこえて資産価格が急激に上昇した場合に必ず起こるバブル破裂のひとつの例に過ぎないのだから、まあ冷静に対処していけばいいと思う。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
「ソルベンシーマージンの基準変更」なんてことがあったのですね。このところ、日本株の下落率が欧米に比べて大きい理由も、こういう制度変更にあったわけだ…。

日本の財務省・金融庁って、どうしてそういう税収が落ちる遠因を導入するのが好きなのでしょうか。以前から、企業間の株式持ち合いを解消させるように仕向けてきましたが、今度は生保が株を持ちにくくした。一体、誰に株を持たせたいのでしょうか。日本企業を安く外資に売り渡したいのかな?

市場が活性化すれば「率」を上げるという「増税」を導入せずとも「税収」を増やして財政規律を回復できるのに…
お染
2010/09/07 13:00
EEVは公開してもしなくても中の人が計算はしてるだろうから、株式会社化要因は小さい気がします。やはりソルベン新規制で保険会社が弱ってる所に、大人買いとディーリングが重なったことでバブルは説明できるのかなぁと。
motobridge
2010/09/08 01:06
長期金利が上がるのは、長期的に景気回復軌道に乗るという判断でもおきるのではないですか?

小沢氏は嫌いだけど、金利が上がったと騒ぎすぎる気がしています。
あんとん
2010/09/08 23:28
お染さんどうもです。まあ名目GDPが伸びない中、全体としての株のパフォーマンスがぱっとしない、というのはわかるので、規制だけではなく投資判断としても保険会社は株を増やすことにそれほど乗り気ではないと思われますが、なにもむりやり強制するようなルールにしなくても、とは思います。

motobridgeさんコメントありがとうございます。ワタクシもEEV要因は言われているようなものではないと思っています。8月は外人パワーさく裂のようでした。あと、一部の人は「赤い衝撃」とか呼んでます。まあわかる人にはわかっていただけるのかと。

あんとんさんコメントありがとうございます。今の状況で市場が景気回復を織り込んでいるとは思いません。おっしゃる通り、市場がやりすぎを修正しただけなので、騒ぎ過ぎるのは意味がないと思っています。
厭債害債
2010/09/09 01:42

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