厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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<<   作成日時 : 2010/12/14 23:46   >>

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今年ももう終わりに近いが、債券市場はかなり大きな変動を経験したと思う。ひとつの特徴はそれぞれのセグメントにおけるプレーヤーにかなり偏りが目立っていたということだろう。とりわけ預金取り扱い機関による長期債、超長期債の買いとその処分は、ひとつのハイライトだっただろう。

預金取り扱い機関は、一部大手は自前で中長期の調達も行ってはいるものの、大半は預金にその運用資金の大半を依存している。そしてその多くが流動性預金だから、負債サイドのデュレーションは本質的に短い。しかしながら預金取り扱い機関の経営が健全である限りほとんどの預金は滞留していくから、それを見越したコア預金を考慮したデュレーションは実際にはかなり長くなる。ALMとか言いながらも融資や長期債投資ができるのはそういう理屈である。

今年の上半期の決算をちらちらと見れば、金利のリスク量は当然のごとく増えていたところが多いと思う。それは収益難と貸出先の見つかりづらい環境の下で、預金取り扱い機関が債券とりわけ長期債や超長期債に多くのお金を投資して収益を稼ごうとしたからである。一部信用金庫が有名になったがメガバンクのような規模の大きいところも当然のごとく動いていたから、その動きは両方向で激しいものとならざるを得なかった。

こういう市場商品で運用している金融機関ならどこでもリスク管理のシステムを導入しているわけであるが、きわめて単純化すれば、リスク量が一定のリスクバッファーを越えたときにはリスクマネージャーからリスクを減らすように指示が来るはずだ。とりわけ国際的な活動をしている金融機関においては予想されるバーゼルIIIなどの影響もあって今は従来にもまして厳しいリミットコントロールに服しているに違いないと想像する。四半期などの短期でそれぞれ資本の充実度が評価されることを考えると、従来以上に敏感なリスク管理を要求されていることは想像に難くない。

貸し出しがなかなか伸びない中で、預金取り扱い機関の資産配分は多かれ少なかれ有価証券、特に債券に傾きつつある。多くの金額を処理できるのは日本の国債であり、場合によっては米国債である。こうしたところに銀行経由で今年大量のお金が流れ込んだのだと思う。それはそれで当然の行動ともいえる。しかし、問題は、一部かもしれないが買った預金取り扱い機関の同じ人々が11月以降大幅に売りに回っているということだ。そして、相場の下げがさらに損切りあるいはあわせ切りといった更なる債券売りにつながり、暴落といって良いくらいのインパクトをマーケットに与えたことだろう。

長期保有の機関投資家としてはまあ金利は多少上がってくれたほうがありがたいから、積極的に文句を言う筋合いはないのだけれど、一般にこれほどまでの大きな変動が一部のプレーヤーによって引き起こされる市場はあまり好ましくない。ある意味システム的なリスクにつながるからだ。

現場の人々は必死で職務をこなしているのだろう。問題はそのような行動をとらせる仕組みである。現状のリスク管理の仕組みは、いくら「統合的リスク管理」などというかっこよさげな言葉を使っても、所詮単一組織のリスク管理という発想を出ない。自分たちのPLやバランスシートがこういう状態になったらこういう行動に出る、というそういうのを今リスク管理としてやっているのだけれど、その行動がさらに引き起こす二次的な効果についてはまったく考慮されていない。さらに問題なのは、金融機関が効率化や競争力強化のためにどんどんくっついており、メガバンクという範疇だと3つになってしまったのだが、それぞれが十分にマーケットインパクトのあるポジションを抱えている中で、単独でのリスク管理を強いられるところに問題がある。ひとつの大きな主体のリスク管理行動がマーケット全体を混乱に陥れるリスクであり、それはどこからも管理されていないとしか思えないのである。これまでも何度か見てきた光景だ。ワタクシの知る限り、リスク管理の仕組みには市場の流動性のデータなど加味されていない。また規制がもたらす特殊な効果も考慮されていない(期末要因で金融機関が今回はさらに米国債まで巻きこんでさらに醜い展開になっているようだ。)

この辺の議論は本石町日記さんが「ゲロ」をたとえに巧妙に言い表しているが、忘年会で暴飲して腹いっぱいになって満員電車でゲロを吐くようなものだ。乗り合わせた人もそれなりに飲んでいたり気分が悪かったりして、ついつい「貰いゲロ」をしてしまって、電車の車両(市場)を使い物にならない状態にしかねない、ということだ。

こういう行動の背景にあるのが「自由競争」の概念だ。それぞれの金融機関が自由に投資やその処分を行い、成果を競わせるというものだ。しかし、それも時代によりけりだろう。今の時代は資金需要が少ない中での貯蓄余剰の状態であり、その余ったお金が市場性ある債券とくに国債やその他商品などに流れている。まあコモディティーの先物がいくらバブルになっても実体経済にそれほど大きな影響が出るとは思えないが、国債金利は経済全体に大きな影響が及ぶし、多くの保有主体の経済パフォーマンスにも影響する。そのようなボラティリティーの発生を少数の主体の行動にゆだねてしまっているのが今のリスク管理の枠組みであろう。

昔からのマーケット参加者なら、そういう行動を「みっともない」とか「恥ずかしい」とか断罪するのだろうが、今の仕組みではそういう行動が当然のこととして是認される。このようなボラティリティーの発生のリスクを甘んじて受け止め続けるのかどうか、すなわち個別機関のリスク管理の結果システムワイドのリスクが増大することをどのように理解するべきか、リスク管理の「思想」が改めて問われるところだろう。

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