厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 期末に向けて気になること

<<   作成日時 : 2011/01/21 01:04   >>

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すでに多くの方が取り上げられているはずなのでいまさらなのだけれども、今回の2011年の法人税率引き下げがほぼ本決まりとなったことで、3月末決算における「繰延税金資産」の取り崩しの問題が現実化している。

繰延税金資産というのは、税法と会計ルールが微妙に異なることから生じるいわゆる「税効果会計」からもたらされる「資産」である。たとえば、ある会計年度である資産に実質的な毀損が生じたとしよう。会計的には保守的にそれを損失計上することになるとしよう。一方でそれが税法上の「損金」に計上できなければ、会計上は損失、税法上は損失ではない、ということになる。財務諸表はもちろん会計ルールをベースに作成されるので、損失は計上するのだが、その損失計上分は「損金」ではないので法人税率分の税金は取られる。しかしこの税金は実際は損失にかかっているので、逆に将来利益が出ている場面ではその損失ぶぶんについては逆に税金を払わなくて済む、すなわち「還付」が生じる。

「繰延税金資産」とはそうした将来の還付の予定を「資産」として計上しているものである。もちろん税務上の欠損金の繰越控除も一定の基準を満たせば繰延税金資産を計上することができる。

このテクニックは、平成11年度から全面適用され、不良資産で苦しむ多くの金融機関を助けた。なぜなら税金は確かに持って行かれたが、それは費用ではなく「資産」として計上し、税金部分だけでも損が減らせたからだ。4割弱最終損失が減ったわけだ。不良資産処理やさまざまな損失処理を大量に迫られた時期についてはこの金額は大きくなっており(もちろんそれだけの理由ではないけれど)、いまでも多くの金融機関のバランスシートには巨額の「繰延税金資産」が計上されている。
(もちろんこの反対のケースでの繰延税金負債も生じることがある)。

この繰延税金資産の計上にはいくつかの前提、要件がある。

一つは、将来の利益が見込めることだ。合理的な見積もり期間内に利益が見込めないと、税金の還付という前提が崩れる。その場合は会計士が繰延税金資産の計上を否認する。具体的に何を持って見込めると判断するかは会計士さんの裁量がかなり働くところだが、いずれにしても、それが見込めなければある時に取り崩しを迫られる。会計士さんの一応の判断基準としては次の内容のガイドラインが生きているようである。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/pdf/00965-003102.pdf
大変細かいのだけれど、それだけ裁量の余地が多いから慎重に認めるべきだということだろう。

もう一つは、一定の税率が維持されていることである。還付は利益の出た期の税金(税率)を元にするので、将来税率が下がるのであれば、計上した損失に対応する還付の期待値である繰延税金資産は減少せざるを得ず、減少分は取り崩さざるを得ないのである。

取り崩すとは、資産が減る分、資産の減損(損失)として現れる。したがって、法人税率の低下は今の多くの金融機関にとっては資産の減損を生じ、当期利益を損なう現象となるのである。

じつは先日ある政府関係の方(かなりえらいかた)のお話を伺う機会があり、その方がぼろっと「金融機関が期末にたいへんだ」みたいな話をされていたので、たぶんこれの話かな、と勝手に想像した。法人税引き下げ自体はまあいい話かもしれないけれど、期末近くになってやると、色々と対応を迫られるところもあるだろうから、なかなか微妙な話ではある。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
期末に税率が下がると大変というお話ですが、実は期末でやってもらったほうがいいんではないかと思います。
仮に税率が下がることが確定する時期が第一四半期ならば、例え3ヶ月間の第一四半期でも一時の費用として繰延税金資産の取り崩しの影響がでてしまいます。
四半期決算は大赤表示となるでしょう。
なので、何時取り崩すかのの問題で言えば、この第4Qが一番いいのです。
税効果会計の欠点でもあるんですが、長年計上してきた繰延税金資産であっても、取り崩しの原因が確定すればその瞬間に全て必要な取り崩しを求められるところにあります。
特に金融機関は巨額の繰延税金資産を積んでいますから、その影響は大きいです。
最悪なのは見積りの見直しによるものですね。足利銀行のように破綻に追い込まれたりします。
今回の税率変更による影響は日本中の企業が条件一緒ですから、金額の多寡はあれ、多めに見てもらえるのではないでしょうか(甘いですかねw)。
コナン
2011/01/21 17:43
コナンさんどうもです。最近ある地方金融機関でもしれっと取り崩しの事例があり、見積もりの見直しがうかがわれました。会計士さんはなかなか厳しいようですね。時期については、1Qにやってくれた方が4Qにいきなり出てくるより「対策」という点ではやりやすいと感じます。
厭債害債
2011/01/31 03:27

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