厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 一人の市場参加者から見た、原発リスク管理のまずさ

<<   作成日時 : 2011/03/31 11:58   >>

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福島原発の事故収拾のめどは立っていない。それどころか発表されるデータや状況はあまり芳しくないものが目立つ。この状況がいつまで続くのかという不安が人々の行動に大きな制約になっており、復興への道筋に大きな障害となっている。

リスク管理の観点からは、今回の事件はまさに失敗のオンパレードのように見える。

第一の問題点は、過去の成功体験や経験則に依存しすぎた「自信過剰」であろう。初期段階で官邸はフランスからの支援の申し出を断ったという。自力で何とかできるとおもったのか?その背景はわからないが、ともあれ首相が現地視察といういきなりのパフォーマンスにつながったのは、やはり裏を返せば自力で何とかできるという過信の表れといえよう。保安院は全国の原発に対して、今回のような事態があった場合(想定外の津波で緊急用電源まで使えない事態など)を想定した対策の見直しを指示したそうだが、それは裏を返せばこれまでそのような事態を想定していなかったということになる。原発事故のストレステストとしては甘すぎるシナリオといわざるを得ない。

また、資産運用の世界では「集中リスク」を避けるのは当然だが、今回4基の原子炉が同じ場所で同じ津波の被害によってもたらされた同じ原因で枕を並べて討ち死にである。もちろん原発の立地が大変難しい問題であることは十分わかっているけれど、なにもこれだけ固めてリスクを増やして、災害時の対応を困難にしてしまうことはなかったのではないか?効率の点からはもちろん集中が優れているわけだが、こういう高リスク資産の場合(実際に効くかどうかは別だが)もっと分散を考えるのは常識だと思う。

さらに、情報の出し方にも問題がある。なにか新しい物質の数値が急増したとき決まって「直ちに人体に影響の出る数値ではない」とコメントがつくのだけれど、それを読むたびにしらけてしまう。どうみても長期的には人体に影響の出る数値であることが多いからだ。誰を安心させようとしているのかわからないけれど、東電の副社長の陰気な顔を見ていれば、事態が深刻なことは誰でもわかる。社長など本当に泡吹いて倒れたのかも知れないような事態だとみんな思う。そして、きっと官邸も電力会社もこの状態で出来るだけ引き伸ばしたいのだろうな、と推測してしまう。つまり本当のことは教えてもらえないのだ、とわかってしまう。そのこと自体が余計に不安を増幅させている。

一般人は素人だが利害関係を有している。最大損失の推定がまったく出来ないばかりか、それを意図的に妨げているような印象を受けるのである。その挙句が、大丈夫といわれていた圧力容器がどうやら破損しているようだ、とか、避難の範囲の外で高濃度の放射性物質が見つかったとか、はじめはほとんど意図的に隠していたプルトニウムの問題が出てきたとか、とにかく人々が受ける印象がどんどん悪くなっている。後で書くように織り込ませ方の問題でもある。

損失事例ではロスカットを行うことが重要だが、今回の場合のようにロスカットが出来ない場合というのは、金融市場で言えばマーケットが消滅してしまったサブプライムCDOみたいなものだ。この状況で落ち着かせるために重要なプロセスというのは次のことをきちんと市場(人々)に織り込ませるプロセスである。

・ 最悪の状況とはなにか?
・ その最悪の状況においてどれぐらいの被害(損失)が発生するのか
・ その被害の連鎖において社会(市場)を維持するために最低必要な守るべきものは何か?あるいはもう維持不能なくらいなのか?
・ それに対して政府や担当当局がどのような方策を採るべきか?
・ 社会(市場)のパニックを抑えるためにどういう手段を提供すればよいのか?

サブプライムの例で言えば、比較的早い段階で当局の予想を超えた損が出ると警告していた人びとが何人もいて、それこそ1兆ドルだのといった数字がちゃんと理解されていた。これが「最悪の状況」の設定である。続いて実際に守るべきものとして市場機能や決済機能の維持というのが金融市場のテーマとなったので、必要な銀行などに資本注入するなどして安心感を出した。これが市場維持のための方策、あるいはパニックを抑えるための方策である。その過程でどこの銀行や会社がどれだけ損が出るかがだんだん明確になってきて、それはそれで事態の明確化に役立っておりリスクを減らす方向に作用した。

こうしたプロセスを経て、市場や参加者が(一定の淘汰を経て)生き延びることが出来るのである。今回の場合それぞれのステップにかかるコストを算出し、「政府」が主導してある程度強権的に指示を与える必要がある。そのためには当然法改正が必要なものが多いから、それを必死で通す。これらの一連の作業を政治家が行うのが本当の「政治主導」ではないか?それがまったく行われていないのが問題だと思うのだ。官邸はあきらかに「政治主導」の意味を取り違えているように見える。

とりわけ、この状況で専門的知見にもとづく「最悪シナリオ」がはっきり見えていないことが一番の問題だ。つまり事態がコントロールされていない以上「最悪シナリオ」の可能性は存在するのであって、それに対する備えは絶対に必要だ。もちろん、おそらく関係者の間では準備が進んでいてパニックを起こさないという配慮でとめているのだろうと思うが、こういう大きな問題は準備が出来てからとかいっていると事態がカオス的に変化してしまうリスクもあるので、市場(人々)に「織り込ませる」ことも必要だと思う。金融市場関係者からみて、この織り込ませ方がとてもへたくそで、結局もっとひどいパニックに結局のところなるんではないかと、ちょっと心配なのだ。まあサブプライムのときも最初のころの大本営発表はことごとく過小表示でしたがね。

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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
管首相の現地訪問は、自国による問題解決の自信の表れとかパフォーマンス(これは多少はあったかもしれませんが)ではなく、一国の首相として、以後の決定プロセスの決意を確認するために、地域の惨状の酷さを実感したかったのではないでしょうか?行かなかったら行かなかったらで、たぶん高い確率でマスコミから叩かれていると思います。

2011/04/01 08:17
目に見えることは人間の力で改善できるが、目に見えないことを解決しなければ、真の復興にはならない。そして、それ以上の惨劇を繰返さなければならなくなる。
私たちが、今、しなければいけないことは、『救世主スバル元首様』に、救いを求めることだ。
  もう、時間がない!!
http://www.kyuseishu.com/tanuma-tu-koku.html
hikaru
2011/04/01 22:36
「最悪の状況」というのは、たぶん社長だか会長だかに対して、赤旗の記者が聞いた話だと思いますが、東電側が普段から予想していたかというと、やってなかったんだろうなという気がします。

 素人は、最悪というのが広島被曝直後程度なのか、長崎程度なのか、それともスリーマイル程度かチェルノブイリ程度なのか見当つきませんが、プロを抱える会社はむしろ「考えるのが怖い」と思考停止に陥ってたんじゃないかと。
 まぁ反原発グループも神経質過ぎる部分はあるんでしょうが、治療法無しで危なっかしいこと明白な道具を使うというのは、あまりにも行動が楽天的すぎてましたね。

 政府については、素人が変な手出しせずに、解決のプロを動きやすいようにサポートしてくれと思うのですが、変な手出しばかりでこれもまた困ったものです。
まるふう
2011/04/02 00:28
お久しぶりです。
私の家族は今回の件で、ロスカットしようとしてます。
退職して、再度雇用された父は、とりあえず休みを取って母と避難(問題の地(避難圏内ではないんですが)にすんでいることもあり)。辞めてもいいんじゃないかとすすめました。
私も主人は三月中は仕事を休みにして(主人は自営なので)私と避難。少し落ち着いところでこちらにきて片付けしてます。
ただ東京に戻って思う事は何事もないように日々が過ぎ自分が考えすぎのような気にすらなってきて自分が馬鹿なのかと思ってきてしまいます。
私は色々な諸事情があり会社を休職し、また関東からでます。主人は仕事の関係で関東に残ります。
一年かけて仕事を閉じ他の地でもう一度やり直すのか、悩みます。暮らしは貧しくなるかもしれませんが。これがロスカットです。
だけど、東京に戻りまわりをみてるとなにひとつ地震前と変わらない光景を目にし、このロスカットが出来ないような気がして来ました。
私はいがいといろんな意味でチキンかも。
最悪期が過ぎていればいいですが。
うさこ
2011/04/02 19:35
イギリス、フランス当局、あとMITの有志などが「最悪の事態」を想定したレポートを出してますね。
フランスのは、どうも政治臭がするんですが、それでも周辺地域以外の影響は軽微なようです。

軽微と言うのは、統計的に意味のある健康被害がおきないだろうと言うことです。
今日のNHKでも言っていましたが、日本人の半分は癌に罹患するわけですから、食生活や喫煙に気をつけるほうが、健康全体のリスクを下げるのではないかと思います。

むしろ心理的ストレスによる健康被害の方が大きそうです。
周辺の被災地への物流の問題も深刻ですね。

これも電力会社に責任を問うべきと思いますが。
あとは、政府とマスコミ。
抑制され、かつ啓蒙的な報道は、ストレスによる健康被害を抑える意味で必要でしょう。

健康被害が限定的であると予想できる中で、経済的な被害がどこまで行くのか、どうやって抑制、反転させるのか、その辺はどうでしょうか?
Cru
2011/04/02 23:14
犬さん、コメントありがとうございます。おっしゃる通り行かなかったら行かなかったで確かに色々いわれたかもしれませんね。しかしながらその後の対応を見る限り、十分に視察が生かされているように思えないのです。
hikaruさんコメントありがとうございます。ちょっとお答えしづらいですが。
まるふうさんどうもです。想定外といえばそれまでですが、もともとそういうリスクがあるという前提で行動しておく必要があったように思います。
うさこさんおひさしぶりです。ご家族も皆さんも本当に大変な思いをされておられるようで何とも申し上げようがありません。東京と被災地の雰囲気は全く異なると思いますし、東京にいると本当の厳しい現実はなかなか体感できません。現地でまだ大変なご苦労をされている方々も徐々に厳しい現実に折り合っていかれるしかないのかな、と。都市住民としては受け入れなどを含めた協力を惜しまないつもりですが、これも厳しい雇用の現実など考えなければならない問題は多いです。ともあれ、お体に気をつけられますよう。お力になれることがあればなんなりと。
Cruさんどうもです。海外の分析も参考にして、最悪の事態が大したことないのなら、そのことを早めに出せればいいのですが。
経済的な損失は多くのエコノミストの方々の分析でもなかなか不確定要素がおおいので予測が難しいといわれます。ストック部分の損失以外に計画停電で生産効率が著しく落ちるなどの効果を読みづらいのだと思います。
厭債害債
2011/04/03 11:07
別のところで申し上げたように、想定外の事象の場合は、別組織による対応の即時初動が必要になります。現場の人間は自己保身に走るなど、全く客観的判断ができなくなります。ここのところは平時マニュアルではない自己の判断で操作を出来る人間がいる組織に切り替えるタイミングを誤ってはいけない。
原発では、まったく手探りで次々と起こる対応にその場しのぎではあるが、何とか対応できる人間がようやく出てきているということでしょう。(もしくは海外の専門家集団が指揮とってるかな)破局的状況になって、当該組織の思考停止した偉い?方々がいなくなって、ようやくまともな人(別に平時では多分かわりものか、ぼんくら)が出てくるのが、日本の悲劇です。
マーハリウッド映画のパニック映画ではこういうヒーローが悲劇を救うのでは、あながちアメリカではその辺はわかっているのかもしれません。
で、昨日の地震の後の女川原発ですが、電源が喪失されてちょっとやばいというところですが、今朝のニュースの上空映像見るかぎりでは、現場には誰もいない。(というふうに見えましたが)少なくともあの朝の段階で学習効果があれば、電源車もしくは、自衛隊等の支援部隊もいない。当然余震の可能性があればそれなりの対応としているべき初動もしくは準備ができていなかった、ということがいけないことです。ハイ。
karu
2011/04/09 00:30
害債さんが仰せの通り、この事象ってリスク管理の市場にそのまま当てはまります。言葉を変えればそのものずばりです。ハイ。
かる
2011/04/09 00:35
ついでに言うと、海外から見ればいまだに、この事態(東北電力管内もしくは別会社の原発に対して指示ができていない、それを1事業体に任せている)を見ても日本政府は被災地域の原発全般に対して事態をコントロールできていないということになります。
コントロールできている(と思われるのは)、東京電力管内だけということが、今回の事態で明白になったからです。
ということで、非常事態に対してマニュアルだけでコントロールしようという組織の限界がここでも露呈しています。組織崩壊という意味では、先の大戦でもそうでしたが、日本の統制型組織はいまだにその弱点を露呈しています。ただし、ようやくまったく新しい対応をようやく現場がやりつつある中で、既存の機能不全組織の最後の仕事は、この新しい組織に権威と権限を与えることしかありません。保安院の最近のコメンテーター(メガネのおっさん)と枝野さんは、スポークスマンとしては合格です。
かる
2011/04/09 23:23
かるさんどうもです。おっしゃる通り今回の事例は、一民間会社の取り扱える範囲をはじめから超えていて、処理や対策にスピード感を出すためには政府が前面に立つしかないのですが、いろいろ大変な手続きが必要なんでしょうが、やはり責任の所在をめぐって政府がチキンになっているように思えてなりません。
厭債害債
2011/04/11 06:00
返信ありがとうございます。今回チェルノブイリ並み7というレベルの発信が、非常に安易に発信されましたが、さてその根拠はどこにあるのでしょうか。保安院の発表を無視していきなりテラバイトを発表するその、政府の体質が問われていることをわかっていません。
さてその根拠は保安院以外の誰がどういう前提(当然最大の過程でしかないのは、間違いないですが)テラバイト。7レベルということの意味を垂れ流すアホな政府は、国家としての総合的な政策意味を理解していないのでしょうね。間違いなく他の政策官庁がやっきになっている国際的な風評被害は無味になるでしょう。内閣官房とは何のためのあるのか。
ここからはバカな政治家より、あなた方まともな官僚の政策調整能力にかかっています。
かる
2011/04/12 21:49
ついでに言いますと、私は今50才ですが、今の危機的レベルというのは、同年代の方々ならわかるように、核実験をアホは大国がガンガンやっていた時代にくればれば、全然問題ないということを、もっと世界の喧伝すべきです。
という意味のことをまとも原子力科学者がいっているのに。バカマスコミが不安をあおるあおる、ちなみ私たち50代の人は核実験が大気圏内(信じれないが、今でいえば、チェルノルイ原発事故並みの放射能を平気で何十回もまき散らしていた、第5福りゅう丸もみてもわかるように)をやっておる時代にワレワレは政府から何を言われていたかといういうと。「雨の日は核実験があると頭が禿げるからでるな」なんてもんだったですよ。
で以来数十年、いまだに放射線被害はないし、子供もちゃん生れてます。この意味をちゃんとした数値的な科学的な根拠に基づいて責任ある機関は対外的に発表する責務があります。
ちなみにIAIAの観測地点てどこで、どうのような気象条件等とか客観的なデータがないので、国際機関の査察は信じられないのは、イラク北朝鮮しかりですので、あてにするのはやめましょう。
karu
2011/04/12 22:11
すみません、もう一言、経団連会長の一言は素晴らしと思います。数世紀だれかを悪者にして何もしなかった日本という国家に対する言葉として。
かる
2011/04/12 22:29

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