厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 金融機関のお金は他人のお金!!!

<<   作成日時 : 2011/05/13 14:38   >>

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このことだけは強く枝野某氏に申し上げておきたいと思います。法的根拠もない中で政府の要職にあられる方が、東電への貸付金の「債権放棄」を口にされることに対し、強い違和感を持ちます。もちろん多くの金融機関にとって一部の債権放棄は数字の上では可能でしょうが、それは金融機関に損失をダイレクトに与えバランスシートを痛めいずれ間接的に国民負担となる可能性があります。

いずれは東電は自分だけではお金が足りなくなるから(社債を除く)一般貸付金はどのみち一部返済不能になるかもしれません。しかし、そのこととこの段階で政府要人が「債権放棄」を口にすることとはまったく次元の異なる話です。金融機関のお金は、小口も含む庶民のお金でもあります。政府が他人事のように、庶民のお財布から被害者のお財布へとお金を移し変えようとしているだけで、肝心の政治家や官僚がまったく責任を取っていないことに不信感が募ります。

被災者への賠償優先というのは気持ちとしてわかりますが、銀行の預金者や保険の契約者が自動的にそれによって損失をこうむらなければならない理由はひとつもありません。東電のような相手に金を貸している経営判断はどうか?と聞かれれば、それではあの危機のさなかに行われたメガバンクの緊急融資がなかったらどうなっていたのか?とか、そもそも今後おかねを誰が貸すのか、とかそういう議論を整理してからでなければ、このような大胆な発言ができようはない。そもそも融資債権者に単純に負担を負わせれば済む話ではないはずです。

結果として債権者が負担をかぶるとしても、もうお金にかかわる少し利害の調整は必要なのではないか、というのがワタクシの意見です。菅政権はどうも妙なところで格好つけてリーダーっぽい演技をしたがる癖があるようで、それがまた全部見事に「ポピュリズム」という一言でまとめられるぐらい単純なのがとても悲しいのですが、本当に自分が正しくてあらゆる(多数ある)反対を押しのけて即断したければ、憲法を停止しつつ国家総動員法をまず国会で通して、金融のことは内閣が全部決める、民法やその他経済関係のすべての前法は無効となる、国民の財産権を含む基本的人権は政府の意思によって制約を受ける、とか決めて、反対するものは警察権力を使って弾圧するぐらいの覚悟が必要なのですが、まあ若いときにゲバ棒振り回してそれと反対のことを言いつつ官憲と向き合っていたような方々で埋め尽くされた内閣にそのような度量はないでしょうなぁ。で、要するに「むちゃくちゃ」なんですよ、手続きが。政治主導と独裁とは根本的に違うのに、さすがはこの政権、それを見事にごっちゃにしている。世の中でも平然と社債にも損失を負わせるべきだとかいう議論がでているのは、まあ政権がこんな調子で世の中をポピュリズム一色に染めてしまったことが原因でしょう。法治国家なんだから、まずはルールにのっとった議論やりましょうよ。どうしてもそれがいやなら、さっき書いたように独裁にふさわしいルールを作りましょうよ。国民がそれを納得した上で、菅さんに全権委任するんならそれでも仕方ないですよ。ワタクシにはとても恐ろしくてできないけれど。

別の観点からは、そもそも、政府がどうしてここまで他人事でいられるのか不思議です。ワタクシの感覚では、事故を起こしたのは東電ですが、その事故を起こさせたのは国家です。国家=国民がこの原発事件の張本人です。安全だと触れ回り、国民の多くだってそれを信じ原発を推進しろくに管理もしなかった政治に投票してきたわけです。1月ごろの地震予測で福島は0%だったとも聞くし、それを元に原子力行政やっていたし、その原子力を当てにしてCO2削減公約もやってしまっているし、自民党だって民主党だって同じ穴の狢だし、国民だってみんな同罪です。俺は反対していた、って言う人がいるかもしれないけれど、民主主義なんですからその所属するメンバーは結果的に責任を取らなければならないのです。いやなら原発を使っていない国に帰化するしか、責任を逃れる道はない。そのなかで被害者にどのように償っていくか、という問題は結局のところ国民の間での分配の問題に過ぎないことをよく理解する必要があると思います。

責任の所在がほぼ全国民にある以上、東電ができるだけのことをするのは当然として、その先は税金でカバーする、というのが筋です。東電はさすがにオペレーターとしてオペレーションをとめるわけには行きません。資金繰りをつけて存続させつつ長い期間賠償金を返していく。当面は国家がそれを立替え、東電が長期間返していく、というやり方は理にかなったものだと思います。そのためには電気料金の値上げも必要でしょう。どちらにしても今後高価な化石燃料を使ったり新たな代替エネルギーへの設備投資が必要となることは明らかですから、電気料金値上げ(あるいは特別税)も必要です。国民全体で広く負担すべきものなのです。

政権の立場からは、民間企業に責任をおっかぶせたい気持ちはわかりますが、金融機関に負担を求める前にまずは過去の原子力行政に携わった関係者全員の給料戻入と年金削減(国会議員も同様)ぐらいはやってくださいな。完全に東電と同罪なんですから。国民が全員負担すべきですから、増税も宣言してくださいな。簡単なことじゃないですか?首相か官房長官が記者会見で発言すればいいだけでしょ?

ちょっとテクニカルな話にも触れておきます。金融機関の一部はまだ決算を発表しておりません。財務諸表の注記として「後発事象」なるものがあり、要するに基準日(3月末)以降に発生した事象で会社経営に影響の大きいものについては、後発事象としてできるだけバランスシートや損益計算書に取り込むことを要求されます。この後発事象、実は決算発表のかなり直前まで見ることになっておりまして(理論的には発表直前までということでしょうか)一応は後発事象について会計監査人のヒアリングを経てようやく固まることになります。もし、まだそのヒアリングが済んでいない会社とかですと、こうした「債権放棄の可能性」について無視するのは難しくなります。債権放棄するような相手先ですと、債務者区分も変わる可能性があり、引き当ても積み増す必要があります。さらに多くの会社の査定基準では、融資と有価証券を同じ相手先に両方持っている場合、債務者の信用度にいわゆる「横串」をいれる必要があり、どういうことかというと融資先としての信用度によって有価証券の査定も変わってくる必要があるということです。多くの場合さすがに3月末の段階では東電を「破綻懸念先」にはしていないでしょう。外形的にはそれにふさわしい理由が発生していないからです。しかし債権放棄を強制されるとなれば、それは債務が全額返済されないという意味で「破綻懸念先」の資格を満たします。となると多分ですが、社債の評価損がそのまま「減損」となります。そういう内容を決算数字に入れなおすひつようがあり、ありていに言えば決算をやり直す必要があります。まあ現段階ではあくまで民間同士の話し合いで、ということですので、まだ後発事象とまではいえないとはおもいますけれど、今後話が急に進めばそういうこともありうる。きっと枝野氏はそこまで考えて日本の企業をシバキあげるためにこのような時期にこのようなことをおっしゃったのでしょう。さすがというか。(こういうことを書くと、被災者の痛みをわかっているのか、オラ!!とかぶち切れる人がいるかもしれませんが、ワタクシはワタクシなりに精一杯協力しているつもりです。ただ、企業というのはそう単純なものではない、とだけ申しておきましょう)。

念のため申し添えると、借入債務の一部放棄となれば、それはリストラクチャリングとしてCDSのクレジットイベント(リストラクチャリング)には該当しそうですが、社債については目論見書を見る限りそのこと自体は「期限の利益喪失」事由にはなっていません。つまり社債のスプレッドよりCDSのスプレッドがワイドになる可能性がありまして、思いっきりアービトラージのチャンス。こういうアイデアを外人が吹き込んだか根も葉もない思い込みによってまた陰謀説で盛り上がれるネタとなります。今夜もおいしいビールが飲めそうですわ。

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
庶民の預金?銀行の株主及び銀行の経営者・社員が負担すればいいのでは?
いきなり債権者(預金者)に負担させると主張はまるきり枝野さんと同じロジックではないですか?国や政治家にも責任があるというのは同感ですが、金融機関にも貸し手責任はあるでしょう。これまで安全と思い込んで東電へのローンや社債からリターンを得ていた以上、フリーランチはないでしょう。
枝野さんが暴論なのも同感です。だからこそ法的処理で債務をすっきりさせるのがシンプルでいいのでは。
だからこそ法的破たんを
2011/05/13 20:26
ワタクシが預金者負担と言ったのは、結果的にそうなる可能性があるという意味です。株主が先に負担すべきは当然のことであり、だからこそ株主代表訴訟のリスクが残るわけです。
ワタクシも本当のところは破綻処理した方が物事はすっきりするとは思いますが、きちんとオペレーションが継続する枠組みを作る必要があります。そして、早期に破綻処理すればとりあえず社債権者が優先弁済をうけてすっきりするだろうと思います。この件に関するワタクシなりの答えは非常にシンプルで、最後は国が面倒をみるべきだ、ということで、破綻処理をすれば結局そういうことになるでしょう。むしろ東電に賠償させ続ければ無駄に金額が増え続ける危険もあります。どうせ最後は国民負担です。
厭債害債
2011/05/13 22:17
厭債害債さん、さっそくの返答ありがとうございます。
もう一つ素朴な疑問ですが、バブル後に金融機関はよくゼネコンの求めに応じて債権放棄をやりましたよね?身軽になったゼネコンがライバルより競争力が強くなるという不公平な状況も生まれました。その時銀行の経営者は贈与とか背任に当たらないのですか?枝野の暴論はともかくとして、東電と銀行の任意の交渉による債権放棄の可能性は本当にあり得ないのか?当時の状況との違いはなんでしょうか?
先ほどコメントした者です。
2011/05/13 23:05
正直なところ、今回も債権放棄の可能性はありだとおもいます。それはまさに本当に逝ってしまわれたら困るかどうか、という結構大人の判断になるでしょう。ただ、当時は経営判断として、今回は国策として出てきており、アプローチが全く異なります。結果として債権放棄をやるにしても、最終的に回収できる金額を最大化できるのではないか、と考えるのが経営者ですが、今回はそういう判断抜きで強制されるニュアンスがあります。
厭債害債
2011/05/13 23:45
まぁ常識はずれですね。
弁護士もっていても経済常識あるわけではないし、そういう政治家や官僚が牛耳っているこの国は、もともとカントリーリスクは高いんですよね。
東電の処理も、無意味に民間企業の枠組みを生かそうとするから変になるのでしょう。
潔く法的破綻処理をして、発電・送電は新会社に移行して、損害補償は国家主導で責任を取ればいいのです。
国策として原発を推進してきたのですから当たり前のことです。
東電管轄以外の庶民が反発するとしたら、「じゃあお前らの管轄で事故が起こったら当該管轄ユーザーだけで負担するのか?」といえばいいでしょう。
合理的な方法は「エネルギー税」とかなんかを新設して、日本の全電力会社に負担させる方法です。
損失補償を一般会計でやろうとすれば、法人税や所得税や消費税の増税といった方向になってしまうので、特別税にして、庶民の負担感がないように実施するのが得策です。

最悪なのが、銀行などの債権放棄を強要する方法です。
今回の震災でも、真っ先に復旧に必要な資金を融資してくれたメガバンクなどに、損害を押し付けたら、将来、同じような災害が起こったときに、メガバンクは必要な融資を躊躇するようになるでしょう。
そうなったら国民の負担はどんどん巨大化します。
こなん
2011/05/14 23:44
こなんさんどうもです。国民負担については、ワタクシはやむなし、というかむしろ必要、という考え方です。原発推進は国民が選んだ政府の国策として行われた以上、地域として関係なくても電気料金が上がったりするのは、仕方ないと思うのです。それは税金という形でももちろんいいわけです。金融機関の立場としては、もちろん平等に負担を被るという意味で、JALのように最終的に立ち行かなくなったときに債権が毀損する結論はありですが、それはあくまで民間企業として東電が賠償を続け債務超過かな、という結論になって初めて可能なのだと思います。当然、その前提としてオペレーションを続けてもらうために公的資金投入や株主価値の100%毀損が必要となります。そこまできちんとされていない中での、枝野発言なので、違和感が強かったのだと思います。
厭債害債
2011/05/15 11:42
弁護士どうこう以前に、ただの素人集団が内閣を構成しているって事でしょ。というか、普通は素人でも組織を維持運営できるように、事務方が存在していて、彼らを上手に使うことがトップのお仕事なんですが、彼らは素人だけで運営できると豪語されていますので。しかも、それを指して「市民目線」とか「国民感覚」とか言って、誉めそやす風潮もあるので、困ったものです。

褒めてる人たちは、後で責任取れるのかな。また「俺も騙された。被害者の一人だ!」といつものように責任回避するだけだろうけど。
通公認
2011/05/15 20:28
通公認さん、どうもです。今回も「政治主導」の履き違えが表面化したみたいですね。
厭債害債
2011/05/16 00:32

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