厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 米国の格下げを考える

<<   作成日時 : 2011/08/09 12:37   >>

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先週は休暇をとっていたのだが、どうせデットシーリングの問題はぎりぎりのところで合意するだろうし、最終的にはドル安で債務を軽くしたいわけよね、うんうん、ということで、そのあたりは予想していたのだが、格下げは正直言ってこれはやらないと思っていたからちょっと意外だった。いまでも格付け会社が米国をトリプルAから引きずり落としたことの意味を考えあぐねている。

もちろん、米国の財政赤字の状況はひどいし、何よりも対外債務が多い。普通の国ならこの状況での格下げは当然かもしれない。しかし格付けの意味が「債務不履行の可能性の大小」という意味であれば、米国については格下げというのはやや違和感がある。

第一に、米国の債務が不履行になった場合、世界経済はどのような状況になるのか、というイマジネーションが十分に働いていないのではないか。米国の債務を国のバランスシートの中に大量に抱える国はどうなるのだろうか?決済手段としてのドルはどのような扱いを受けるのだろうか?短期米国債の担保価値が否定されたら、レバレッジを前提にしている金融機関や投資家はどうなるのだろうか?

もちろん、結果が重大だから債務不履行はない、といえるものではない。しかし、現状でトリプルAという米国より上の格付けを持つ国や企業は存在するのであり、それらは米国が債務を履行しなくなってもまだ生き残る可能性があると格付け会社が考えていることになる。本当にそうだろうか?

第二に、米国債の値動きに見えるように、結局のところ安全資産は米国債になってしまうのが現状だ。金は買いたいけれど、投資家として利息を生まない金は買いづらい。お金の運用を任された機関投資家にとって、欧州もドイツも巻き込んだ混乱の中にある状況で、チョイスは極めて少なくなっている。

多くの取引でいまだに決済通貨としての地位を持つドルをベースに考えるなら、米国債の需給は単なる資金循環の問題に過ぎない。お金がジャブジャブで、なおかつほかに買えるものがなければ、世の中の投資家は米国債を買う。そういう状況だと思う。リスクが高いときほど米国債のデフォルトリスクは少なくなるかもしれない。まさに今の状況がそうだ。

もちろん金やコモディティーは揺らぎ始めた管理通貨制度にコミットし続けるリスクを回避する手段かもしれない。そして、管理通貨制度ははっきりいってかなり限界に近づいていることも事実だろうし、金やコモディティーが買われる現状は、まさに管理通貨制度への挑戦であろう。しかしながら、次の新しい軸はなかなか見えてこない。金本位制などという記事も散見されるが、そう主張する人には、どれだけ生活水準を落とす覚悟があるのか、という観点が抜けている。中国がいくらえらそうに言っても、経済的には米国といろいろな意味で一蓮托生だ。次の新しい軸が見える前には、暴力的な制度破壊などを前提にしなければ、今の体制を維持していきながら解決を模索していくしかない。仮に暴力的な破壊が起こりそうになっても、そのときのセーフヘイブンは、紛争に巻き込まれないで自力で生きられる国ということになる。その意味では確かに北欧はその候補となる可能性はあるのだが、本当に確実にイメージできるだろうか?その場合においても軍事や食糧生産でアメリカは依然として優位に立つ。お金がアメリカに集まり続ける可能性は、危機になれば高まると思われる。

ワタクシの知る限りでは格付け会社のうちS&Pはモデルとか定量を比較的重視するように感じていたので、その意味で真っ先に格下げしたのは納得感はあるのだが、逆に、それによって彼らが拠って立つ世界の大きさに思いを及ぼせていない。というか、それを崩したらそもそも格付け全体の前提って狂ってこないのかな。ワタクシのイメージしていた格付けというのは、天釘みたいなところにアメリカのトリプルA(基軸通貨と世界最強の軍事力を背景にしたもの)があって、そこにそれ以外の国やら企業やら団体がぶら下がっているという、ドル基軸管理通貨制度を前提にしたものだったので、アメリカのトリプルAというのは格付け体系の一種の基点だと思っていた。ワタクシが格下げで感じた違和感はそれがどうもS&Pでは違っていたんだね、ということが原因だろうと思われる。

いずれにしても、今後、「格付け」の持つ意味合いは当局の規制の面からも人々の受け止め方の面からも、大きく変わらざるを得ないだろう。今回S&Pは、意図してかどうかはわからないが、存在感を大きく示すことと引き換えにそうしたリスクを背負ったような気がしてならない。つまり公的な権威をバックにした体系としての存在から、ひとつの情報提供業者になってしまうリスクなのだが。


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
凄い実に凄い。最強通貨国の引き下げ勧告。で理由は政治の不安定化とか。で中国と一緒で、イタリア、スぺイン以下、基準が全然わからん。長期国債格付けだよね。
まー米国とジッパひとからげか。
政治の安定性でいえば、やっぱ中国共産党一党独裁を評価するかムーちゃん。ちなみに、国債も短期から30年まであるが、全部ワンカテゴリーなのでしょうか。
やってくれました。JGB格下げ
2011/08/28 21:45
やってくれました・・・さんどうもです。ムーディーズは比較的政治の問題を重視する傾向があると思うので、中国はもしかしたら・・・ですが。レーティングは期間の概念は一定期間以上については取り入れていないとおもいます(基本的には成績評価なのであって、倒産確率は結果論という建前でしょうか)。
厭債害債
2011/08/30 08:44

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