厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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<<   作成日時 : 2011/10/12 10:34   >>

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いろいろな方の書かれているものを見ると、意外に知られていなかったのですね。多分外債をやっている人では知らない人はいないと思います。といってもワタクシもそれほど詳しいわけではありませんが、ちょっとウィキペディアなどを参考にしながら、どんな主体だったか振り返ってみましょうか?

新聞などでも報道されているとおり、この主体はベルギーとフランスのもともと政府系金融機関(GemeentekredietないしCredit Communale de BelgiqueとCredit Local de France)がくっついてできた巨大金融機関です。名前からもなんとなくわかるとおり、いずれの国でももともとは地方自治体あるいは地方共同体向け金融を取り扱う機関です。

もとの二つの金融機関も日本では外債の投資家にはなじみのあるネームで、もともと政府関係機関(50%以上政府保有)としてほぼ国と同じクレジットとして見られていました。すなわちもともとフランスはトリプルA、ベルギーでもAAの主体です。Credit Localのほうはフランスで1991年に株式公開しますが、それでも直接、間接(実質的に政府保証の突いているCaisse Des Depotの保有)を合わせると依然政府が50%以上を占め、実質的なクレジットは大きく変わりませんでした。ベルギーのほうはリテールにも大規模に進出しそれなりの規模となります。

両社は1996年に合併し、拡大路線をたどります。これも昔の外債投資家にはなじみのあるネームであるイタリアのCreditopを買収し、1999年にはベルギーとフランスでのダブル上場を行いました。とはいえ、それでも政府系であることは変わらず、ベルギーと同じAa1の格付を維持します。Dexiaはその後さらに海外に積極的に拡大路線をとります。トルコの銀行を買収したりし、アメリカではリーマンショックの前後に一躍脚光を浴びた金融保証会社のひとつFSA(Financial Security Assurance)を買収したりしました(そういえばあの時Ambacとかいろいろみんなでいじってましたねぇ)。あるいはその得意な地方自治体向けのビジネスにチャンスを見出したようで2007年ごろには日本にも事務所を開設しました。シンガポールなどにも人を置いてアジア投資家向けに債券の売込みを積極的に行っていました。

日本での行動を見る限り、彼らのビジネスの主体は中短期で調達した資金で長期、超長期の地方自治体向けの貸し出しを行う、というものです。しかし、これはリーマンショックで状況は一変しました。上記FSAの損失が予想されたことから、市場の見方が急速に悪化、とうとう両政府から64億ユーロの資本注入との救済を受ける羽目になり、その上債務について政府が保証するという事態になりました。つまり今回の騒ぎは二回目ですね。海外でも日本での調達が困難になり、せっかく希望を持ってやろうとした日本の自治体向けビジネスを早々とたたむ羽目になりました。正直言ってワタクシはDexiaさんが日本に登場したとき、日本でもカバードボンド市場ができるのではないか、とちょっとわくわくしたものですが、意外にあっさりとしぼんでしまいましたね。

ウィキペディアによると、当時NYオフィスもかなりの規模で活動していたようで、破綻が与える影響を考えると、政府が救済するしかなかったようです。その後もあまりよくない話ばかりが聞こえてきて、資金繰りは一向に改善しません。マードフ詐欺事件で7800万ユーロやられたとか、まあそんな話まで出たようです。しかし、2009年から10年にかけて、大規模なリストラ策が発表され、一旦息を吹き返しそうになります。一時期は政府保証をはずせる状況にもなりました。しかし、ベルギーがリテール中心でフランスが政府系中心という両社のいびつな構造が経営陣の中での対立を生みます。つまりリテールはそこそこしっかりとキャッシュを生んでおり、損を出したのはフランスのほうだ、ということでしょうか。

そんな矢先にギリシャ危機が顕在化します。苦しい収益を補うため、周辺国への投資を増やしていたのでしょうか、また大きなロスを出します。そして今回再び政府が直接救済に乗り出す羽目になったようです。

あくまで感想ですが、こういう国をまたいだ寄せ集めの主体が大きくなっていくとき、ガバナンスって相当難しいんだろうなぁと。そもそもベルギーそのものが国として分裂気味(フランス語圏とフラマン語圏など)で、そういえば、何年か前にはフランス語圏共同体(Communauté française de Belgique)が独自で資金調達してたことを思い出しましたが、日本で関西弁地域が外国から独自で資金調達始めたら、橋下知事も真っ青の状況だと思うのです。ベルギーでは昔から平気みたいなんですが、このあたりにもベルギーという国を扱うことの難しさはあります。もともと財政はかなり苦しいのですが、欧州連合の中心であり、EU本部もあるわけす。逆に言えばベルギーの危うい状況はEUというステータスでなんとか保ってこれたともいえるのではないかと思います。ところが、今回のようにユーロそのものの仕組みに危機が生じたら、それに連動するかのようにベルギーでいろいろ言われるようになってしまうということで、なかなか複雑だなぁと思います。

補足しておきますと、Dexiaは特別目的会社のDexma(Dexia Municipal Agency)の名前でおもに自治体向け等公共ローン担保のカバードボンドを発行しています。カバードボンドとは担保付債券で、発行体が払えなくても担保で払えるようにしているため安全性はいっそう高いと見られます(発行当時この辺はAAA格です)。カバードボンドの場合、どうして安全性が高いかというと、法律上かなり余裕のある超過担保の仕組みがきちんと決められており(つまり担保のヘアカットが大きい)、それを発行主体等がダイナミックにマネージしていく仕組みになっているからです。もちろん、この手のSPVは倒産隔離がなされている上、今回はこうしたオペレーションごと、救済する主体(Caisse de DepotあるいはLa Banque Postale)が引き取るであろうと想定されるため、一応今のところは問題ないと予想しているのですが、なにせ、こういうケースはあまり例がないので、事態の進展を見守る必要があると思います。まあこちらのポートはギリシャの占める率が0.5%程度なので、それほど実態的には問題とはならないでしょう。

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コメント(6件)

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Covered Bondは担保付き債券とのことですが、担保付きローンと同じようにSecured Bondとは呼ばれないのでしょうか?
UK
2011/10/12 11:18
UKさんコメントありがとうございます。カバードボンドというのは特別の法律で定められた債券の類型なので、一般の担保付というとはちょっと性質が異なります。特別のカテゴリーだと思っていただけたらと思います。
厭債害債
2011/10/12 19:44
また銀行がつぶれて、公的債務でどこにいくのでしょうか、さてソビエト連邦か、EUか、米国13州の独立性か、中央銀行は1つがいいのか、財政は統合すべきか。市場か計画か。最終的な人類の選択かどこにあるのでしょうか。
金融財政は、政策目標として有効があるやしや。
ノーベル経済学賞はそのへんを考えての選択でしょうか。
karu
2011/10/16 19:30
karuさんどうもです。おっしゃる通り、私たちは答えのない世界へとどんどん足を踏み入れているようですね。というか、旧来の制度の疲弊があまりにも目立ってきたということでしょうか。
厭債害債
2011/10/17 06:14
そうですね。金融財政政策は国境を越えて考えるという事態は、本来的な経済政策論では、議論していない分野です、すでに徴税権はタックスヘブンやら、多国籍企業という考えの中では、全く意味をなさない。ということでは、国民国家必然的に財政赤字ならざるをえない。という意味で誰が課税主体となるべきか。関税同盟という考え方を一歩進めて国際的なものにするといった発想がなければ、今回の危機は乗り切れないでしょう。
財政政策をドメで考えて、国内需要、及び企業行動抑制した結果は、どこにいくのでしょうか。独裁的なキジ国家に帰するとすれば、そんなものは今の情報統制が国際的に意味を満たない世界では、意味をさないでしょう。
本当の意味で財政金融政策が国境を超える中で有効な経済政策を管げえるべきしょう。そんな中で国内の財政バランスしか考えられない、この内閣及び財政省の方々はもっと頭を働かせましょう。
かる
2011/10/19 22:00
かるさんどうもです。金融政策の効果が国境を越えてしまうというのは、すでにアメリカがさんざん効果を示してきているのですが、財政については協力関係を深めれば深めるほど一心同体化する事態を最近見せつけられていますね。日米などの通貨介入と外貨準備の関係もそうだし、これはある程度やむを得ない緩慢なる劣化であり、それをリバースするためには、相当な覚悟が必要です。ワタクシとしてはそれをリバースするのはまあ自律的平和的には無理だろうと思っていますが。
厭債害債
2011/10/30 10:12

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