厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS エラリアン氏(PIMCO)の講演から

<<   作成日時 : 2011/10/22 14:15   >>

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PIMCOエル・エラリアンCEO兼共同CIOの講演に行ってきました。先週の木曜日にありました。
(Mohamed El-Erian・・・資料にはこう書いてありましたが、私にはエル・エライアンと読めます。日本での発音がちょっと誤解を招くと考えて表記をいじっているのか・・・(偉いやん・・・とか)・・・いやすみません、すみません。)

なんでも日本で生で話すのは初めてらしいですが。いわく、
「グローバル経済は構造的に毀損している」「深刻なバランスシート調整は今後数年にわたって継続する」

おお、なんと力強い宣言でしょうか。漢らしくて萌えました。約1年前、ビル・グロスが言ったニュー・ノーマルの中ではある程度そのことが前提となっていました。その後、彼らの投資行動においては散々な目にあった状況もあったようですが、ニュー・ノーマルについては以前ブログで取り上げていますが、基本的な見方は変わっていないわけです。ワタクシもそれからあまり考えは変わっていません。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201010/article_1.html

ただ当時はまだもう少し楽観的でした。しかし、欧州の混乱が追加され、少なくとも先進国は状況はどんどん厳しくなっていると思います。

今後の市場や世界の見通しについて、基本線(ベースライン)は「ニュー・ノーマル」でありながらも、ライトテール・シナリオとしてベースラインよりましなシナリオの実現可能性とレフトテール・シナリオとしてベースラインよりも更に悪いシナリオの実現の可能性について触れました。ここでいうましなシナリオとは、スプートニク・モーメント(アメリカの目を覚まさせるような出来事。ソ連が有人宇宙船発射に成功したことがアメリカの宇宙開発に火を付けた)とか決定的瞬間(欧州が財政統合を決めるとか)あるいは中国の消費者の解放などがきっかけとなりうると述べました。また更に悪いシナリオとは、米国のボロボロなバランスシートをはじめとして、あちこちでのバランスシートのごまかしが続けられなくなり、一気に問題が出てしまうケースで、混乱が生まれるといいます。米国の例をあげてましたが、家計、銀行のバランスシート毀損に始まり、それを救済するために政府が汚染され、さらにファンディングをつけるために汚染された資産を取り入れることでFRBが汚染されということで、国中が汚れており、どこまで汚れ続けられるかの問題になっていると指摘しています。

もっともこれから大事なことは従来の思考の枠組みやパラダイムから解放されることだ、と言っています。たとえば、インデックスをフォワードルッキングなものに変え、リスクファクターをより重視した配分を考え、明示的にテールリスクへの備えをアクティブに行うべきだと言っています。更に結果重視であるべきだと。つまりこれまでのように一定の期間後に必ず成長しているだろうという前提で、資産配分を組むこと(ワタクシなりに解釈すると、従来型インデックスに基づく株のウェイトが高いこと)、そしてそれを固定的に維持することは非常に危険であると述べているわけです。

言うまでもなく、彼らは米国を拠点とする主として債券の投資顧問会社ですから、債券に対して若干バイアスがかかるのは仕方ないのですが、今回はそういう問題を超えて、今の置かれている状況に対する不安感というか先行きの見通しのなさがにじみ出た内容となりました。講演のなかで米国の格下げや財政問題についても触れていますが、「大量の流動性供給は、短期的には有効な政策対応であったものの、多大なコストとリスクを伴った」と整理しています。今の状況が格付けに影響するのはやむを得ないという立場です。

この状況で、米国債が買われたことについては次のようなたとえで説明していました(意訳ね)
「皆さんが、長期出張に行くとしましょう、ワイシャツ数枚持っていきます。ところが日程が急に伸びた。ワイシャツは売っていない。その状況でワイシャツを着なければならないとしたら、きっと汚れたシャツのうちでも一番汚れが少ないシャツを選んで着るでしょう。アメリカというのは正にその「汚れたシャツのうちでも一番汚れが少ないシャツ(The cleanest dirty shirt)」なんですよ。」

ふーん、そうですかねぇ。ワタクシに言わせれば、ほかのと同じぐらい相当に汚いけれど、商売上ハッタリをかますためにベストブランドだから着てる、って感じがしますけれどね。

アメリカ自体に対しても最終的な楽観シナリオは描けません。今の問題は「構造問題」であり、みんなが考えを改めて苦労をいとわないか、何かの力で構造が破壊されやり直しになるか、どちらかでしかやり直しがきかないということです。待っていれば景気が回復するっていうのは幻想で、前にも書いたように、主な公的主体は持ち球を使い果たしてしまったため、ごまかしは続けられなくなっています。そのことがギリシャ危機(もっと言えばサブプライム危機)で明らかになったのだと思います。エラリアン氏の講演は経済の細かいことや金融政策などにはほとんど触れないものでした。焦点はパラダイムチェンジ。債券が買いだ、などとも言わず、そのことがかえって彼らの憂鬱さを浮き彫りにしていた感じがします。

「グローバル経済は構造的に毀損している」

なんと力強い言葉。エラリアン氏があえて断定的に述べた言葉が予言するものは非常に重いと思います。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
リンク先の『第4象限の入り口で』も印象的な記事でしたが、ニュー・ノーマルで起こっている出来事を受け入れられない人々がウォール街とかギリシアその他でデモとか起こしているのかなと思ったりしました。

どんな企業でも五年十年後にどんな経済環境になっているのか読めない時代に、国家も税収を読めるわけもなく、逆説的にお金が行き場を失っている事で金利がまだ低い状態で抑えられている、みたいな。

中国やインドなどの成長が一定レベルにまで達した後こそ、先進国は先送りしてきた課題に直面を迫られるでしょうが、それは通貨や市場や国の在り方なども変えるパラダイムシフト的な物になるでしょうね。
名無之直人
2011/10/22 22:39
大変示唆に富んだ内容の記事です。
ありがとうございます。

>>従来型インデックスに基づく株のウェイトが高いこと、そしてそれを固定的に維持することは非常に危険である

自分のポートフォリオの見直しも、
考えておかないと・・・

>>「グローバル経済は構造的に毀損している」

しかし、困った時代になってしまった、
そう思わざるを得ません。
mushoku2006
2011/10/23 08:06
名無之直人さん、どうもです。これまでの枠組みは少なくとも30年ぐらいは続いていますから、なかなか受け入れがたいのはわかります。しかも、いい思いをしなかった人々にとっては特にそうでしょうね。できるだけ、多くの人にやさしくするという政治の限界なのだと思います。

mushoku2006さんどうもです。本当に困った時代ですが、限界まできたら、まあ自律的にせよ他律的にせよリセットが必要になります。これまで長い時間にわたり非効率や非生産の部分にぶち込んできたお金とそれをごまかすために費やしてきた気の遠くなるようなごまかしを考えると、その際多くの犠牲が払われることはある意味仕方のないことだと思います。

厭債害債
2011/10/29 17:36

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