厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 金融リスク管理の現場(西口健二著)(読書感想)

<<   作成日時 : 2011/12/05 05:33   >>

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金融リスク管理の現場」は京大の理学部数学科の助手まで務められた西口氏がその後の三井住友での経験をベースに書かれた本である。

帯には「入門書」などとあるが決してそのような印象を受けなかった。読み方によっては数式などを一切使わず平易に理解できるという意味で入門書ともいえるが、ある程度現場で悩みながらリスク管理をやってきた人々にとっては、「そうなんだよねー」と思わず膝を打つところが多い本でもある。読む人がそのレベルに応じて読めるのが名著の一つの特徴だとすれば、(著者はそのレベルに達していないと謙遜しておられるが)この本は間違いなく名著である。数式こそ使われていないが、概念的にどのように取り組むべきかという点についてもきちんと解説されているので、実務的にも有用であろう。

この本の、というか著者の、真骨頂は、気兼ねなくリスク管理の限界、問題点、現在の規制を含めたあり方への疑問が提示されていることであろう。たとえば、バーゼル銀行規制の基本的なアプローチである自己資本規制のあり方について現在に至る流れを平易に解説しつつ最後にズバリ「いまこそ資産に資本を課す仕組みからの脱却が必要ではないか」という疑問を呈しておられる。

実務的にも(とりわけ海外案件について損失が出ている場合)「とくにわが国の経営では、退任しても元トップとして力を温存することがあり、その人たちが手掛けた案件ということになると手を出せなく、あるいは見て見ぬふりをする構図」を指摘し、こういったプロジェクトについては案件を手掛ける前から一定の撤退トリガーを定めておくことを提案している(実務的には難しいことは著者も認めているが)。

またありがちな「リスク管理の陥穽」として、ストレステストシナリオをリスクリミットに収められるシナリオにしてしまうという点などを指摘しており、こういうところが思い当たる節がある人もいらっしゃるのではないかと思う。

規制を含めたシステム的な問題点の指摘は簡潔にして鋭い。とりわけ、金融機関がどんどん大きくなってしまうことがシステム的なリスク(マクロリスク)を高めてしまうことはすでに多く指摘されているが、規制がそれを推進していることの問題点が整理されている。

既に実務をやっている人々なら、おそらく共通して考えている問題点について、答えがあるかどうかはともかく問題意識を共有できるという意味でも一読に値するだろう。

(個人の感想文です)

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まー理学部的立場と、経済学的立場の違いに関してあえてコメントしませんが、金融機関と金融規制当局のいわゆる理学的というか、定量的というかそういった事前的な数学的な金融規制がここ20年間の金融危機に関してまったく有効であったかという議論は、間違いなく失敗の一言でしょうね。実証的な議論がないまま、こういった規制を続けても意味はないでしょう。バーゼル3はなんだか。その外側にいる国々に依存している世界でい在ですよね。中国人民銀行、とかって規制対象でしたっけ。
まー100年後の金政政策の数学的な有効性を議論するころには、人類はどこにいっているのでしょうか。
経済政策はやはり、社会科学ですよね。
かる
2011/12/14 23:35

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