厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS リスクフリーのない時代のリスクプレミアム

<<   作成日時 : 2011/12/26 18:21   >>

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CAPMなどでは(っていまでも信奉者いるのかどうかわからないが)あるリスク資産の期待収益率(Re)の公式は
Re=Rf+β(Rm-Rf)
とあらわされる。Rfとはリスクフリーレート(無リスク資産リターン)であり、Rmは市場平均リターン(一般的には株式ならば株式市場インデックスの利回り)。βは「感応度」をあらわす。つまり個別株式のリターンはリスクフリーレートとリスクプレミアム(Rm-Rf)にその株式の市場感応度を乗じたものを加えたものとなる。具体的にリスクフリーレートが1%で株式の市場利回り(期待利回りね)が3%、当該株式のβ値が1.5(つまり市場平均の動きに対して上げ下げともに1.5倍値動きがあるという過去の習性があること)だとしたら、Reすなわち当該株式の期待リターンは4%ということになる。もちろんここにはリスクの概念は入っていない。またリスク対比のリターン効率を表すシャープレシオの計算にもリスクフリーレートが入っている(当該投資のリターンからベンチマークリターンを引いたものの期待値をボラティリティーで割るがこの場合のベンチマークにリスクフリーレートが使われることが多い)。但しこちらは「ベンチマーク」としての意味があればほかのレートでも(相対評価としては)代替可能だろう。

さて、問題はこれまで「リスクフリーレート」として「国債」の利回りがしばしば利用されてきていることだ。リスク管理の実務などで割引率を引くときなどは「スワップレート」を使うことが多いが、それはそもそもファイナンス理論とは切り離された実務的な要請(需給との関係での安定性、アベイラビリティ、市場との関連性で現実的であることなど)によるものであり、さまざまなファイナンスの教科書類においてもまだリスクフリーレートは国債利回りを使うと書かれているのが多いと思われる。

しかしながら現実には既に米国がS&Pに格下げをくらい、日本国債もR&Iまでもが格下げし、いわんや欧州においてはドイツ以外がボロボロになっている中で、「国債」利回りはもはや「リスクフリー」とはいえないのではないか、という話が出ている。とりわけ、AAA格の国が数少なくなって(もしかしたらそのうちなくなって)しまうと、「リスクフリー」はさすがに概念的にも苦しくなってくるだろう(AA格であること自体「リスクフリー」という言葉と矛盾すると思う。)

それでは「国債」に代わるリスクフリーレートは何だろう?
すぐに思いつくのがスワップレート。スワップとは当事者の相対取引で変動利率と固定利率の支払を交換する約束であり、銀行などを通じてきちんとした「市場」(一種の店頭市場)が成立しているのだが、基本的に「銀行間」取引の指標である。銀行そのものが常識的に「リスクフリー」ではないうえ、そもそもリスクプレミアムゼロ(すなわちLiborフラット)で調達できる主体が一体どれほどあるのだろうか?だからこそスワップレートはリスクフリーレートとしては国債にその地位を譲ってきたわけなのだが。

まあ、CAPMにせよデリバティブにせよリスク管理にせよ、本当は使えるモノサシをきちんと使って理論を再構成すればいいだけなのだが、リスクフリーがない世界での理論がどのようなものになるのかがワタクシにも見えづらい。リスクプレミアムという概念はそもそもリスクフリーという概念があって始めて成立するものだ。これまでリスクフリーだった国債や銀行預金がリスクフリーといえなくなったと人々が認識したら、リスクプレミアムの比較で投資を行うということも難しくなる。

最近リスク性資産とりわけ株式が不安定な動きをするのは、こうしたリスクフリーという座標軸を市場が見失いつつある結果として、必要とされる資本コストなどの計算ができず水準感が見失われていることも関係しているのかもしれない。そして人々がそれゆえに「リスクオン」「リスクオフ」といったデジタルな動きに支配されてしまっているのかもしれないなあ、などと漠然と思ってみたりする。これからファイナンスの授業ってどうやっていくんだろうか?

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コメント(6件)

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航海してたら、北極星が動いちゃった、
みたいなもんですね。
このまま漂流してしまうんでしょうか?
mushoku2006
2011/12/26 18:38
素人意見で恐縮ですが、国債への信任が揺らぐことでリスクプレミアムが測れないとなれば、逆に国債は投資対象として選好されやすくなりませんか? 上の人に照らせば、方向は間違っているとわかっているけど、ほかにないからとりあえず北極星を追い続けるしかないみたいな。

それがJGBにも当てはまるかどうかが気になってまして。個人的には2〜3年以内の金利上昇はないように思うのですが。。。
nobinobi99
2011/12/28 21:54
mushoku2006さんどうもです。おっしゃるとおり漂流する危険が高まっているのだと思います。

nobinobi99さんどうもです。これもおっしゃるとおり国債選好が強まることが予想されますが、それは単にほかのものからの「逃避」であり、しかも闇雲に「逃避」してしまう結果として相対的な位置関係がぐちゃぐちゃになってしまうということではないかと。言うまでもなく逃避先の国は限定されますから、国債が国相互間でまったく連携が取れなくなってしまうということでもありますね。つまり「国債」というカテゴリーでは語れなくなってしまう。事業債でも(かつて日本でもありましたが)国債利回りを下回ることがたくさん出てくるでしょう。
厭債害債
2011/12/29 08:27
やっぱすべてがいるージョンです、ということで明日から基軸通貨をRMBにする今生はないしなー原油はアメリカの基軸通貨基本なので、次のターゲットの戦争国はイランですか。
でやっぱ世界の悪者はイランと北ですが。北はやくざを野放しする、悪い警察みたいな中国。
かる
2011/12/29 22:46
でもやっぱ、なんかしらーが。坂の上の雲で、感動した私ふだす。やっぱNHKは違う、民営化したらあかんなー。
あのTBSの体たらくでも、あやっぱJINのために、横浜どぐされベイスターズを犠牲かな。
しかし、コンプライアスのアンチテーゼとしてのアホな読み読みの代表は、ひどかったです。
最後にその企業とか、みんなのために本当の意味で考える人になってください。
50年企業家だとか、すばらしい資本主義の成功者なんてどうでのいいいよの。
かる
2011/12/29 23:17
東北と日本海は、日本の犠牲になったきたのよ。
かる
2011/12/29 23:19

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