厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS オランダの内閣総辞職

<<   作成日時 : 2012/04/24 17:19   >>

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 アムステルダムは美しい街です。運河が流れ路面電車が行きかい花が咲き、表面的には平和なイメージ。オランダの経済のパフォーマンスは相対的には悪くないし、国際企業も多くオランダには存在します。アムステルダムにあるゴッホ美術館は、何時間いても飽きないぐらいの圧倒的な存在感です。
 とはいえ、3年ほど前にアムステルダムの中央駅に降り立って外に出たときのなんともいえない違和感を思い出します。なんというか、ちょっと危なっかしい感じがしたものです、本当に感覚的なものだけれど。もちろん、ここが交通の要衝であり休暇時期に多くの若者が列車で集まる場所でもあり、その若者ゆえの抑え切れないエネルギーを感じるという部分もあるから当然なのですが、本能的になんとなく油断の出来ない場所に来たなあという感じを持ったことは否めません。

ご存知のとおりオランダはもともと海運国家です。皆さんもうお忘れかもしれませんが(笑)江戸時代に日本と長崎の出島を通じて交易を行い日本が細々と海外とつながることに貢献してくれた国です。福翁自伝を読めば、福沢諭吉だって最初は蘭学から入って英語に目覚めたわけですから、開化後も間接的に日本に与えた影響力は大きかったといえましょう。ロッテルダムなどの国際港は海の要衝といえます。オランダとは陸からも海からもいろいろな人が集まる場所であり、それがゆえにもともと「国際都市」いいかえれば寛容性の高い土地柄ではなかったかと思います。移民政策においても、そういう意味でほかの欧州よりも寛容というか排除が事実上難しい土地なのだろうと思います。また1960年代の労働力不足の時代にトルコ系やモロッコ系のイスラム系移民を大量に受け入れて労働力にしました。彼らにはいずれ本国に帰ってもらうつもりでいたのかもしれませんが、結局そのまま多くの人が住み着いてしまい(当たり前ですよね)大きなイスラムコミュニティーができていると言われます。途上国からの移民にありがちですが、二世三世となり、あるいは家族を呼び寄せ、しかも彼らの多くが教育レベルが低いまま育ち、社会問題を起こす。そうなればもともとの住民などとの軋轢は避けられない。アメリカのようにもともとみんな移民の国でも、ヒスパニックやアジア人を見下す人が結構いることを考えると、一旦安定した生活を築いたあとはどんな人でも保守的になるのだろうと思います。ましてや、その相手が価値観や習慣がまったく同一とはいえないムスリムたちだったりすると、なおさらのことでしょう(この点日本人は宗教的な柔軟性に富んでいて、商人国家としては非常に有利でしょうね)。

 またオランダは、意外に知られていないことですが、麻薬を一部事実上合法化しています。アムステルダムなどでは街の「コーヒーショップ」で大麻などが堂々と販売されていると聞きます(ワタクシは体験しておりません、念のため)。光と影の作家を多く輩出したオランダらしいといえばオランダらしい。オランダにはオランダの考え方があったのでしょうが、これも全員がもろ手を挙げて賛成する性質のものではないことは明らかです。こういうことが社会の摩擦を高めているように思えます。この辺の緊張感が、駅を降り立ったとき感じた「油断の出来なさ」感だったのかもしれません。

 移民の問題は欧州の多くの国に共通で、ドイツでもフランスでもいろいろ摩擦が起きていて、不満を持つ人々の受け皿が極右政党だったりするわけです。最近はこうした極右政党(といっても日本流に言うと石原慎太郎都知事的考え方レベルのものですが)がフランスでも台頭していることは大統領選挙の結果を見てもあきらかです。オランダもご他聞に漏れず「自由党」というのがアンチEU、反移民で一部から支持を受けており、前回の総選挙では大きく躍進しました。この結果第一党となった自由民主党と協力関係にあるキリスト教民主勢力をあわせても過半数を取れず、第3党となった自由党に「閣外協力」を仰ぐ羽目になってしまいました。

 もともと自由党というのはそういう民衆の不満を糧に伸びているいわばポピュリスト的政党です。反移民、反EU、反イスラムです。というわけで欧州金融危機に端を発して、EU諸国が緊縮財政を約束させられ、その結果として「弱者」などへの社会保障カットなどというのは最も忌み嫌うところでしょう。日本でいえば公明党と石原都知事の悪いところをあわせたようなものでしょうか?この結果として自由党は閣外協力を拒否し、少数連立与党は立ち行かなくなりました。これが今回のオランダの内閣総辞職だと理解しています。重要なのは「EUの要」のベネルクスのうちオランダとベルギーでいずれも非常に不安定な状況になっているということでしょう。これに加えてフランスも政権交代による不透明感は漂います。いわばEUのコアカントリーのうち、屋台骨を支えると思っていたオランダが不安定化しているという点がリスクなのだと思います。

 もうひとつのポイントは、オランダがAAAの国だということで、思い出していただきたいのですがEFSFの信用力は欧州各国の信用力の寄せ厚めだということです。今回オランダで緊縮財政が通らなさそうだというニュースを受けてムーディーズなどがネガティブウォッチにしています。このオランダの格付が下がってAAAを失うのであれば、EFSFのバズーカ性がまた一段と弱まることになります。先ごろIMFへの日本からの資金提供が600億ドルという表明があって唐突な感じがしましたが、欧州の不安定さの深刻さを考えるとIMFレベルでの十分な備えはいずれにしても必要だと見ておく必要があると思います。

 ところでフランスではまさに大統領選挙の真っ最中ですが、社会党のオランド候補が勝ちそうだというのは、なんとなく日本で民主党が自民党から政権を奪ったときのような雰囲気が漂っているような感じがしてなりません。人々の投票行動や選挙予測などをワタクシなりに理解する限りにおいて、要するに人々が「閉塞感」から「とにかく変える」ことだけを目指してしまっているようにしか思えないのです。さもなければ一回目極右のル・ペン氏に入れた人が二回目に社会党のオランド氏に入れるというのが理解しづらいわけです。オランドさんの政策が妙に日本の民主党チックなのも気になりますねぇ。まあフランスの方々はご自分でよく考えておられると思うので、あとから文句などは言わないとは思いますけれど。最悪なのは、これでサルコジ氏が勝ちたいあまりに極右の政策を取り入れて一発逆転を狙うとかいうシナリオで(なにせ1回目でル・ペン候補は2割近く取っていますからね)その場合はどちらが勝っても欧州は不安定さが増すということになるでしょう。

 つらつら考えれば、欧州のリスクとは行き着くところポピュリズムのもたらすリスクです。もともとポピュリズムがナチスを台頭させ、その結果の第二次大戦となり、その反省から出来た欧州の共同体です。そうした努力を今まさに再びポピュリズムによってぶち壊しにしかねない瀬戸際に来ている、というのが欧州の少なくとも主要国の偉い方々の本当の気持ちであり危機感ではないか、つまりこれを単にお金の問題に矮小化(といっても結局お金の問題ですが)としてはならないと言うことではないかと思います。まあ選挙の結果はコントロールできないとすれば、せめて、枠組みだけでも力ずくで維持させて安定をもたらし、事態を沈静化させること、そのためには強い意志とお金が必要であることについてのコンセンサスをとること、時間はかかってもしっかりとそれぞれの国民に枠組みの重要性を訴えていくこと、この点に関しては欧州の主要な政治家たちがゆるぎない信念を持っていることを信じたいと思います。

 しかしながら、ポピュリズムとはどういうことかとまたつらつら考えてみれば、結局のところ「苦し紛れの判断停止」の隣にニコニコ顔で座っているような感じがします。人々は余裕があればいろいろな利害に目配りして自分も我慢できるのだけれど、余裕がなくなれば自分の生活のために要求がどんどん先鋭化していく。回りが見えにくくなっているから、扇動されやすくなる。政治というのはある意味経済の荒波にもまれる船のようなもので、そのまま流されていってとんでもないところにぶつかって全滅するのか、きちんとした航法と目的を頼りに必死に航海を続けて正しいところに到着するのか、それを決めるのは最終的に乗組員である国民であるわけですが、「苦し紛れの判断停止」の状況においては、力を入れて漕がなくても波が運んでくれる前者の船に乗るのがポピュリズムということではないでしょうか?とはいえ、おぼれかけている人々に正常な判断を求めることが出来るのか?という問題はありそうです。考えれば考えるほど、こういうことは人間の持つ複雑な感情にまで踏み込むものなので、本来小手先の知恵でどうにかなるものではないようにも思えてきます。

 評論家的には「足るを知る」ことの重要性、とか説いていればいいんですが、不満(=期待レベルとの不一致)は期待レベルそのものの水準が上がれば当然増えるわけで、これだけいろいろ便利になり一部に富が蓄積された世の中ではそのレベルが上がってしまっていて、都市にいる多くの人が(回りのいい生活を見ながら)不満をためてしまいます。人々の満足水準を落とすことが出来れば問題は解決しそうですが、そんな魔法のクスリはどこにもありません。「足るを知る」というのは「成長」神話との決別でもありますが多分資本主義の世の中でそれは無理だと思います。だとすれば、多分この社会というのは宿命的に「行き着くところまで行く」というのがワタクシなりの結論です。破壊と再生のプロセスは人間が後の世に続いていくための必要なサイクルなのだと思います。ワタクシは経済学をちゃんと勉強したことがないので良くわかりませんが、シュンペーターなどが100年前に考えたことなんでしょうか。

 いずれにしても今回の出来事は今の欧州の問題が非常に根深いものであることを象徴する出来事だろうと思います。


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内 容 ニックネーム/日時
いわゆるベネルックス3国と北欧の国家は、マスコミでは時々しか取り上げられませんが、欧州では優良な国家であることは間違いでなく、ある意味日本が少子高齢化後の縮小均衡国家として、生きる手本みたいなですかね。
サッカーオランダ代表について、あまり人種的な問題が取りざたされないのも、このクニの優れたところでしょうか。しかしアムスはいいところですが、大麻合法なので、着いた途端に中央駅前でジャンキーに絡めれるところはいただけません。私はK1ファイター並みの奴に金をせがまれたので、とりあえずはったりで、東洋の危険なマフィアのボスに成りきって撃退しました。隣にいた奴が、190Cの怪物楓ですが、きの弱い奴がったのでが。ふーアブね。
karu
2012/04/25 01:35
初書き込みです。某市場で分析者をしております。「すばらしい解説」の一言です。感嘆したので、思わず、書き込みました。
システム5.1
2012/04/25 07:56
崇高な理念を持ち続けるには、
衣食住が足りてこそ、
なんでしょうか・・・・・・。
武士は食わねど高楊枝、
と言う訳にもいかないか。><
mushoku2006
2012/04/25 07:57
いつもブログ更新を楽しみにしています。
オランダにおける麻薬ですが、私に知る限り全て違法なはずです。しかし、一部のソフト・ドラッグについては罰則がないので合法に見える、ということだと思います。法には社会道徳を規定する側面もあるので、合法にはできなかったのだと推測します。このあたりの、合理性と言うか現実主義に私個人はオランダらしさを強く強く感じます。
Gekko
2012/04/25 23:45
移民問題は、日本においては、宗教上の対立が起きにくいのはわかりますが、ほぼ単一民族であるが故に、『外人』の言葉どおり、「外の人」と一括りにするくらい、排他性は非常に高く、決して楽観視はできないと思います。
現に、外国人の多い特定地域は、治安が悪く怖いので、暗に忌み嫌う地域として認識されつつあります。
景気が悪くなれば、外国人よりも同胞を優遇するのがどこの国も同じでしょう。経済的に追い詰められた人は必然的に犯罪に手を染めやすくなります。単なる安価な労働力補充として移民を受入れることは、後のことを考慮していない軽薄な行動です。欧州各国が移民2世3世問題で悩んでいることをみてなぜ学ばないのか不思議でなりません。
異常な速さで近代化を成し遂げ、戦後の焼け野原から復興を遂げた日本人の驚異的な力は、優良DNAがもたらすものではなく、単一民族が築き上げた特殊な文化構造によるものであることは明らかです。
移民を推進しようとする人々は、それを捨て去ることの意味がわかっているのでしょうか。
しかも、日本には若年失業者がたくさんいて、ニートフリーターまで考えれば相当の余剰労働力があるというのに・・・。
コナン
2012/04/26 10:31
後半のくだりまったく同感であります。
>人々は余裕があればいろいろな利害に目配りして自分も我慢できるのだけれど、余裕がなくなれば自分の生活のために要求がどんどん先鋭化していく。回りが見えにくくなっているから、扇動されやすくなる。
>「足るを知る」というのは「成長」神話との決別でもありますが多分資本主義の世の中でそれは無理だと思います。だとすれば、多分この社会というのは宿命的に「行き着くところまで行く」というのがワタクシなりの結論です。

人間がここまで進化できたのは、むしろ欲望をコントロールできないからだと思っています。ある意味、異常進化動物なのでしょう。際限の無い欲求により、生存領域を拡張させ、様々な危機を乗り越え今日に至っています。
「足るを知る」は精神上の理想論であり、既に文明に触れて生きている以上、それをやっているという人は偽善者としかいえないでしょう。なぜならば、今日の豊かな生活は過去の人類の際限の無い欲求充足行動の蓄積によって紡ぎ出された結実であり、その成果の恩恵にあやかっておきながら「足るを知る」的な生活を送るという事に対しては、「ジブン本当にわかっとんのか!」と問いただしたくなります。

例えると、「私ねぇ、現代の競争社会で病んでしまいましてねぇ、(他人の金の)生活保護で、(競争社会で安価で提供されている生活用品を購入して)足るを知る生活を慎ましく送っておるんですわ・・・」というような違和感テンコモリの言動に近いものをどうしても感じてしまいます。
(長文失礼しました)
コナン
2012/04/26 10:32
国民が「足るを知る」為には、ある意味発展的拡大による経済的欲求から開放されることしかないでしょう。それは「精神世界的な満足感」かはたまた「限定された空間=社会の中で自己実現の現世的な満足」なのかわかりませが。いずれにしろ小国=大国からの分散化し、あまりにも多くの他者からの未確定な影響から閉ざされることしか、ないと思います。世界はあまりにも多くの人とのつながりを許容が可能な手段を得て、経済はボーダーレス化し極大化はとどめるところを知らず。よーは煩しい、うっとうしい「絆」が多すぎる。疲れる。
カル
2012/04/28 00:48

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