厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 小沢元民主党代表 無罪

<<   作成日時 : 2012/04/26 13:33   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 21 / トラックバック 1 / コメント 9

まず誤解を招くといけないのであらかじめ断っておきますが、ワタクシは小沢元代表ははっきり言って「大嫌い」です。いろいろな意見があるとは思いますが、個人的には日本のためにならない政治家だと思っています。影響力という意味で、その能力は高く評価しますが、その使い方が間違っていて、結局日本をまともな方向に引っ張っていけないどころか、混乱させ、政治不信を招いている中心人物といってもいいと思います。彼ほどの能力があれば、当然泥をかぶって首相になればいいのですが、日本の場合首相になったら政治生命は一応あがり、ということなので、それはやりたくないのでしょうか。そういうずるさが結局「壊し屋」といわれる行動様式につながり、政治がいつまでたってもまともに物事ひとつ決められない仕組みの張本人だと思っています。

しかしながら、それと彼が「刑事法規上有罪でなければならない」かどうかは別問題です。

判決が出るまではまあわからないので黙っていましたが、今回の政治資金規正法違反事件は冷静に考えれば刑事事件として起訴する側からは相当「たちの悪い」案件だったとは思います。詳しい中身までは知りえませんけれど、刑事事件のプロである検察官がわざわざ起訴を見送ったうえ、検察審査会の一度目の起訴相当答申を蹴ったぐらいですから、そもそも刑事事件として立件するのはかなり難しいものであったのだと思います。

ところがちょっと前の時代に「処罰ポピュリズム」とでも言うべき憂うべき風潮が席巻して、とにかく「被害者に法廷で被告人に向けて何か言わせろ」とか「市民の目でブタ箱に送りたい」とかいう流れができてしまい、検察審査会も2度「起訴相当」となったときには「強制起訴」されるということになりました。
 
この場合刑事裁判で起訴するプロの検察官が「不起訴相当」だという事件を、(多少経験はあるにせよ)素人の弁護士が検察官として立ち回るわけで、もともとの事案の筋の悪さ(つまりプロが起訴できないと判断した事例であること)に加え、役者の能力不足が加わってしまうことです。ですから、これまでの強制起訴事例ではこれで検察側2連敗ということになりましたが、まあ結論としては当然といえば当然予想できた話です。

にもかかわらず、素人の集まりである検察審査会は二度も起訴相当と答申した。制度をそのように作ってしまったのだから、まあそのこと自体は仕方ないでしょうが、要するに無罪の人間を「嫌いだから」という理由で微罪で追及して世の中から葬り去ろうとしたと見えます。

改正前の検察審査会ならば、強制起訴ではなく、逆にまさに市民の良識による抑制という位置づけでその存在と議決自体が重要性をもっていたのだと思います。検察官が不起訴とした事件を「起訴相当」の議決をして検察官がそれを認めて起訴し有罪にしたケースも多いのですが、仮に結果が変わらなかったとしても、それが「歯止め」的存在だったがゆえに、かえってその存在の重要性をみんなが共有できたと思います。それは検察側に「起訴便宜主義」という逆の歯止めがあったからこそだと思います。起訴しなくてもいいと思う検察官に対し、起訴すべきだという説得力を持って審査会が働きかけ、検察官を動かし、それで有罪とすることが出来たとしたら、まさに市民感覚による社会正義の実現、ということです。

ところが、ルールが変わって検察審査会が2度「起訴相当」を答申して強制起訴となるルールだと印象はだいぶ違います。つまり、検察官(検察庁)という刑事起訴のプロが法的に難しいと思われる事件、しかも2度もその判断を繰り返した事件を無理やり立件させるわけですから、どうも審査会の意見が「感情論」ではないか、という疑いが濃くなってきます。そもそも刑事裁判では疑わしきは被告人の利益に判断する原則ですから、「明らかに疑わしい」と思っても証拠がなければ有罪に出来ません。十分な証拠が起訴段階で見えてなければ当然起訴は出来ません。今回もまさに証拠という点で見事に躓いてしまったわけです。おそらくこの辺の無理が見えていたからこそ検察は起訴できないと踏んだわけでしょう。その判断が2度も続いているとき本当に有罪に出来るケースというのはあるのでしょうか?

当事者という点でも、日本では法曹一元ですから、同じ試験を通って同じ司法修習をうけた人々が進路だけ別れて裁判官や弁護士や検察官になるわけです。基本的には教育のレベルにおいては同じ法律の見方を教育されているといってもいいわけです。裁判官と同じ法律の見方を教育されたはずの検察官が2度も起訴が無理だ、と判断している事件ですから、これは裁判官が2回無罪にしたのと同じぐらいの重みがあると考えるべきではないでしょうか?3審制のもとで2回無罪が続いたら通常最高裁しかありません。最高裁への適法な上告理由は限定されています。基本的に相当重大な事実誤認の疑いがなければ事実調べをしませんし、そもそも刑事訴訟法405条や411条では上告理由はきわめて限定されていますから、逆転有罪を勝ち取るのはかなり難しいです。本件を有罪にするのはこの場合そういうレベルの難しさなのだと思います。

もちろん政治的なバイアスがかかっているかどうかという観点もありますから、そのような疑いがある場合は審査会が堂々と立ち上がればいいし、それなりの重要な事件の場合には裁判の対審構造の中で事実を究明していくという姿勢も重要かもしれません。しかし、本件は、政治的にはともかく、刑事的にはかなりの微罪です。これを強制起訴することを決めてしまった検察審査会は、自らが政治的バイアスに突入したといえます。つまり、有罪が難しいというプロの意見があるにもかかわらず、「小沢は抹殺しなければならない」という妙な使命感に燃えてしまったのではないか、というのは言いすぎでしょうか?



このようなことが続いてしまうと、「強制起訴」という仕組みはもとより、検察審査会の存在意義自体に疑問を持つ人が出てきます。ワタクシ自身は先ほども書いたようにそれでも存在意義はあると思いますが、その意義をぶち壊しにしかねないのが今回の「強制起訴」ではなかったか、と思います。つまり分けもわからずに暗闇でバットを振り回して家ごと壊してしまいかねないような話です。その意味でもこの「強制起訴」という制度はかなり危険なものだという印象をワタクシは強めました。

以前のエントリーで犯罪被害者の裁判参加制度について書いたことがあります。そのときも「被害者」が被告に尋問するなどの権利を与えることで生じるバイアスを憂慮しました。ワタクシも含め市民というのは感情や直感に流されやすいです。刑事裁判の場でそれが前面に出ることを許容すれば、それは集団リンチであり、行き過ぎれば法治国家の根幹に関わる問題になります。だからこそ、ある一定の場面ではプロだけが取り扱える領域がある、ということではないか、と思うのです。

裁判員制度についてもいろいろ意見がありますが、こちらのほうは究極的に3審制ということで最後の歯止めは効いていると思います。かたや検察審査会の「強制起訴」制度は、やややりすぎたのではないか、という疑念を今回の無罪判決の中で改めて持ちました。政治的なバイアスに身を投じてしまった検察審査会が、政治の圧力の中で制度後と葬り去られることを強く危惧します。

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小沢民主党元代表に無罪判決
資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告の判決公判が26日、東京地裁で開かれ、大善文男裁判長は強制起訴を有効と認めた上で、無罪を言い渡しました。 ***♪やぁ 無罪♪ ...続きを見る
歌は世につれ世は歌につれ・・・みたいな。
2012/04/26 21:45

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
検察審査会の胡散臭さについて同感です。
しかし、そのまえに
「刑事で起訴された被告人≒犯罪者」
という日本のルールがおかしいと思います。
有罪率99%という日本の検察システムが異常の源泉で、起訴されたら終わりという固定概念を形成してしまいました。検察は強権を手にし横暴を極め、その特権を強化継続していくために、強引な捜査、虚偽証言の強要、証拠の捏造を恒常的なものとし、結果、多数の無辜の人間を闇に葬ってきたのです。
ここにきてやっと綻びがでてきた程度です。まだまだ検察の絶大な権力は衰えないでしょう。
北朝鮮のことを笑っていられるはずはありません。
コナン
2012/04/26 18:02
一郎 好きになって
星 浩
2012/04/26 18:53
判決については提出されていた証拠類などからは妥当なものだったでしょう。私も小沢は大嫌いですが、裁判は好悪で判決を出すものではありませんからね。

強制起訴に踏み切った審査会の様子などが明らかになる事はたぶん無いのでしょうが、あの当時の空気としては、@疑わしい、A小沢の言ってる事も信用できない、Bだからリーク報道などには依らない裁判の場で何があったのかを明らかにして欲しい、というものではなかったかと思います。

審査会がその意味で本来の趣旨から踏み外したような行動に出た事は危惧すべきかも知れませんが、一連の裁判や検察の調査能力やその信頼性など、今後の課題は審査会だけに留まらず範囲は広がっていくものと思います。
名無之直人
2012/04/26 19:53
いつも楽しく拝読しております。

結構危ないという見解もあります。
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20120426#1335428300

証拠に瑕疵があっても強制起訴は有効だそうです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120426/k10014730381000.html

”裁判長は「事実とは違う捜査報告書が作られて検察審査会の判断を誤らせてはいけない」と述べました”

検事の良心に期待するだけの大甘。これってバレなきゃまたやってもいいって言ってるのと一緒と思います。

刑事被告人になることのダメージが計り知れないこの国には強制起訴というシステム自体がそぐわないのではと感じます。
nobinobi99
2012/04/26 22:58
コナンさんの
> 有罪率99%という日本の検察システムが異常の源泉で、起訴されたら終わりという固定概念を形成してしまいました。

これは見方が逆では?と思いました。
検察官が自信を持って起訴できる(?)事件しか起訴しないので、当然打率(有罪判決が出る率)も高くなるということじゃないですかね?(有罪無罪を最終的に判断するのは裁判官ですし)

胡散臭いから起訴してやれ、とかとりあえず起訴しておくか、でバンバン起訴すれば、有罪率は下がるでしょうが、無罪を勝ち取るために相当なリソースを喰われることになります。
まあ、そうなれば裁判所も公訴棄却など迅速に判断するようになるかもしれませんが、あんまり嬉しい社会ではない気がします。
(ま)
2012/04/27 00:27
(ま)さんの考え方も一理あります。
しかし、それは検察官性善説に立った場合です。検察官も人間ですから間違いはある。それを認めずに神格化するので偏って歪んだ検察制度になったのです。
検察官は無罪判決を出した場合出世できない。したがって組織的に冤罪事件を引き起こすのです。
>?(有罪無罪を最終的に判断するのは裁判官ですし)
ともありますが、これは違います。
ほぼ100%有罪になるのですから、検察が起訴するかどうかで決まるのです(ちなみにナチス、ソ連、中国共産党でもここまで高い起訴有罪率ではありません)。ここが最大の問題なのです。
事実上、全国民の生殺与奪権を検察が握っているのです。検察がその気になれば無実の人間であっても証拠をでっち上げて有罪にして社会的に抹殺できるのです。
万が一無罪を勝ち取っても、過去のほぼ100%有罪の蓄積によって、その裁判期間、世間からはほぼ有罪と同じ扱いを受けます。社会的地位を剥奪するには十分なのです。
庶民はそういうったことに巻き込まれることは無いとお考えなのでしょうが、この手法を使って例えば体制に反抗する人間が社会的に抹殺されることを、自分と無関係と考えてよいのでしょうか。考えてみてください。
もちろん、そんな検察の粛清行為など証拠はありませんが、そのルートを残しておくことがどれだけ危険なことか考えてみてください。
過去の冤罪事件をみてもなお、検察性善説を採り続けたいという思想でればどうしようもありませんが・・・。
なお、私は小沢信者ではありません。根拠は曖昧ですが、やっぱり信頼の置けない人物です。本当に日本を救う気が本当にあるのなら、2度も与党を分裂破壊するような愚は犯しませんから。
コナン
2012/04/27 11:59
書き忘れましたが、今回の小沢事件無罪については、実は検察側に有利な判決だったと多数指摘されています。
「検察は不起訴」だったのですから。
検察審査会というところで強引に起訴にされた事件です。
いわば、どうしても小沢さんを社会的・政治的に抹殺したい勢力が、検察システムの威光を悪用したのでしょう。
当初、検察自身が起訴すべき策略だったところ、あまりに担当検察官の能力が低く、証拠証言捏造がバレてしまい、検察組織としては悪事に加担できなくなったので、仕方なく次善の策として、裁判期間中の政治的抹殺だけで手打ちにしたのでしょう。
予定通り無罪となって不起訴とした検察の面目も保たれたわけです。
コナン
2012/04/27 12:07
この裁判長はじめての無罪判決らしい。
K
2012/04/27 14:08
とりあえず、いつの間にか、翼賛政治のようにマスコミも民主も自民も大賛成の消費増税のアホな前提をつぶして欲しいものです。財政再建の自己目的化というアホな政策目標はなんとしてでも変えんといかんでしょ。BOJもいやいや金融緩和し、復興需要が出てくる中で、増税やむなしと言えど、何年とかいわねーでもっと機動的にやれよって小澤君がんばって。
karu
2012/04/28 01:12

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