厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 格付け業者に初の行政処分

<<   作成日時 : 2012/12/17 17:13   >>

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業務改善命令だそうです。時事通信の記事によりますと、世界でも例がないそうです。

14日付の金融庁のアナウンスメントはこちら。
http://www.fsa.go.jp/news/24/syouken/20121214-3.html

一言でいえば、格付結果や手法というより実際の格付けプロセスにおけるオペレーションやメンテナンス作業において「ぼろ」がいっぱいでてしまった、ということになります。

特に、シンセティックCDO(SCDO)の格付けについて「参照債務に係るクレジットイベントの発生状況について、SCDOのアレンジャーに適切に確認を行うなど、SCDOの信用格付けに影響を及ぼす参照債務の累積損失額の適切な把握を行っていなかった」ため償還直前まで(つまり損失が現実化するまでということですかね)「長期間にわたり誤った信用格付けを付与し続けていた」という点が行政処分の最たる理由かと思います。つまり参照先のクレジットが著しく悪化している事実を知らずあるいは積極的に調べもせず、その結果償還の際に大きな損失が出たにもかかわらず直前までその悪化を反映した格付けになっていなかったということです。しかも、この事例が発生した後は一応クレジットイベントの有無の確認を依頼しているもののやはりそのプロセスを軽視したかのような取り扱いがみられているということで、重い処分となったものと思われます。

まあ格付け会社とはいっても、おそらく事務面では十分な管理体制を敷けるほどの組織ではなかろうとは思っていましたが(とくに本国でない場合)、やはりいろいろミスも多かったようです。そして本来はごめんなさいで済むものもドッドフランク法などの世界的な規制強化の波の中で、厳しく取り扱われるしかなかったのだろうと思います。とはいえ、一般的に格付け先の信用力が悪化した場合にすぐにそれを反映しないと行政処分ということであれば、まあちょっと厳しすぎるかな、とは思いますが、それだけではなくその後もきちんとした対応のプロセスを踏んでいないという点が当局を怒らせたのかもしれません。

格付け会社が国内規制の網に入ってきたのは金商法で指定格付け機関というのをやめて信用格付け業者制度(登録制)を導入したからです。それまでは一信用調査機関の単なる意見表明という建前で、どこからも結果についてクレームをつけられることはありませんでした。その意味で、今回の処分はまあ金融庁的にはしてやったりの部分はあるでしょう。

いくつか懸念もあります。いままで散々格付け会社のことを貶しておきながらいまさらと思われるかもしれませんが、格付けというのはある意味投資家にとって便利な道具なので、それをある程度信頼して投資できる慣行がないと発行市場や流通市場の拡大は止まってしまいます。また現状でも保険会社などのソルベンシー規制等においても格付けの枠組みは利用されているので、それを一から審査しないと買えないとなると、(仮にそれが正しい姿であるとしても)コスト増や市場の縮小につながりあまりみんなにとってハッピーな状況とは言えない。格付け会社がおおよその信用判断を出していて、投資する側の業態や規模に応じてそれを信頼してよいレベルに合わせて使うということは今後も重要なのではないかと思います。格付けというのは公的な色彩を持ちかねないので、行政の指導が入るべきだというのは正しいと思うのですが、あまり厳しくすると、妙に委縮してしまうあるいは仕事を辞めてしまう、という副作用も生まれるかもしれません。事実上社会インフラともなりつつあったので、なくなったらそれはそれでちょっと問題です。

また、今回の処分について投資家からの「損害賠償」といったテーマで語られることも出てきそうですが、投資家からみてそれは結構難しいのではないかと思います。基本的に与信判断は最終的に投資家のリスクで、どこまで行っても格付けというのは一つの意見表明にすぎません。格付けがまちがっていたことは格付け会社の責任ですが、その格付けを鵜呑みにしたことは投資家の過失であります。つまり、投資家が格付け会社に損害賠償を求めるためには、そのSCDOを組成した業者(アレンジャー等)と格付け会社との間に積極的な共謀関係でもなければ難しいのではないかと思うのですが、どうでしょうか?(まあ状況によってはあると認定される可能性はありますが)。政策的にも先ほど述べたように格付け会社に対する損害賠償を認めやすくしてしまうと、格付けそのものの正確性(より保守的になりやすい)を犠牲にすることになるし、それは投資家にとっても経済全体にとってもあまりハッピーなことではないのだと思います。

もう一つはソブリンなどの格付け。
そもそも国家の実態というのは非常にわかりづらいですし政策によっていかようにでもなるわけですが、それについてもきちんとした格付け手順に従って機動的に格付けを見直さないと行政処分の対象になってしまうんでしょうかね。たとえば、自民党が大勝した今回の選挙結果を受けて日本はむしろ「格下げ」すべきかもしれないんですが、この辺はどうなるんでしょうか?日銀の国債引き受けに近いようなことをおっしゃる首相が誕生したのだから・・・

格付け会社の格付けの「あるべき立ち位置」はいまもってかなり微妙だとおもいます。純粋に一つの民間調査会社として「意見」を表明するのか、一種の公的なお墨付きを与える道具としての役割を担うのか、これまでは公的機関も格付け会社もそして投資家も、その二面性を都合よく使い分けてきたわけです。現実にはこれほどまで仕組みにかかわる役割を担っている以上、後者の役割を逃れることはできないということで、今回の処分は、金商法の傘の下に入った格付け会社がやはり一種の公的な存在であり、格付け結果はともかくそのプロセスにおいて厳しい規制の対象となることを改めて認識させられる結果となりました。ただ、今回の処分がどのような広がりを見せるかは興味深いところです。

想像の域を出ませんが、処分の裏側には、実際検査をしてみていろいろな「事務ミス」がぼろぼろ見つかったため「こんないい加減な会社に日本国の格付けなんぞされてたまるかぁぁぁ」と叫ぶ検査官の怒りの声が聞こえるような気がしてなりません・・・あっ、そうか・・・自民党選挙圧勝を見越して・・・・(冷汗)・・・しかも投票日直前に・・・ここまで書いて初めて気づきましたぜ(嘘)。

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コメント(2件)

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まーかくずけ会社は、いちじベンダーに対する責任だけおって後は責任ねーなんてアホな論理がようやく是正されたかな。
ということであなたのファンドの最終投資先は誰にもわかりませーん。なので誰も責任おえませんが、いけないことがようやく認められ、関係金融機関担当者が、青くなる今日この頃です。
かる
2012/12/26 22:58
>自民党選挙圧勝を見越して・・・・(冷汗)・・・しかも投票日直前に・・・ここまで書いて初めて気づきましたぜ(嘘)。

JGBの格付け下げたら、日本の官僚機構が格付け会社に「医者を送り込んで、面倒を始末する」、という意思表明ですよね、これ…

2013/01/13 23:23

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