厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 生命保険料をめぐる混乱

<<   作成日時 : 2013/01/21 10:57   >>

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このところ生命保険業界をめぐる大きな話題の一つは来年度からの「標準利率」の引き下げです。標準利率とは生命保険会社が「責任準備金」の積立をおこなうのに必要な原価を出すために規制側が定める所定の割引率であり、ルール上の数字です。

したがって、これは保険会社が経営として決める営業保険料の計算の基礎となる「予定利率」には、間違いなく大きな影響を及ぼすものの、会社が決める予定利率は標準利率に縛られるわけではありません。そもそも標準利率とは10年の国債金利をベースにしているので、すべての保険の予定利率を一つの指標で決めることは無理があります。しかし今でも多くの保険会社が超長期の負債(下手するとデュレーション20年ぐらい)の保険の予定利率を10年国債金利をベースに決めているのが実情と思われ、規制側がせっかく引き下げている(つまり市場金利が下がっている)のにそれを突っ張って利差損益を悪化させるというみっともない真似は対当局としても非常にやりづらいので、まあ経営的なさじ加減が加わるとしても、実際のところ標準利率が引き下げられた場合超長期の商品であっても予定利率引き下げにつながるとかんがえられていました。

話はさておき、最近これをめぐる論点が二つ
一つは、金融庁の方で「標準利率」算出ルールを見直すかもしれないという観測が出ていること。
二つ目は、標準利率が下がっても一部の会社が予定利率を下げない可能性があるという観測が出ていること。

一つ目の点は、そもそも標準利率が10年国債金利を標準にしていていいのかという根本的な問題があります。
終身や年金など貯蓄性の保険の多くは極めて長いデュレーションで多くの責任準備金を積み立てているわけで、それらの商品については10年で運用すれば間違いなくミスマッチとなる。最近保険会社がやたらと超長期債券を買い続けている理由はここにあります。

先日行われた国債投資家懇談会(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbi/proceedings/outline/20130110.html)でも30年ゾーンとかクレクレ状態の意見が出まくっていて、もうなんだかなぁという感じですが、経済価値(時価)ベースのリスク管理をやっていこうとすれば超長期の負債に合わせていくためにまだまだひたすらデュレーションの長いもので運用するのが一般的なスタンス。そのなかで10年を基準とした標準利率ってどうよ、ということです。


二つ目の点は混乱を避けるために「予定利率を引き下げる」イコール「保険料の値上げ」ではない、ということを押さえておく必要があります。保険商品の保険料を算出する際の基礎となる数字は予定死亡率(または予定生存率)、予定事業費率、予定利率です。これらは同一の商品であっても認可を前提に変更することが可能です。つまり予定利率が下がる(=割引率が下がる=原価があがる=値上げ)部分があっても、その他の予定事業費率などを見直すことで、その値上げ分を吸収する、あるいは予定死亡率に乗せられる安全割増(リスクマージン)を調整して保険料の値上げを抑えることは実は可能です。保障性の商品であれば、このリスクマージンの調整が効きやすいので歩標準利率低下や予定利率低下をそれらで調整して保険料の引き上げを行わない判断は十分ありえます。

東京新聞によれば(http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013012002000089.html)とあり、一部の保険会社が値上げしないという観測がでています。この記事の中で
「値上げしない分のコストを自社で吸収する。」
とのことで、読み方によっては予定利率は引き下げるもののほかの料率で吸収するとも読めますし予定利率を維持するとも読めます。なお、ここで紹介されている会社は「貯蓄性商品」も値上げしないと書かれているのがポイントです。なお、
「保険料値上げを見送るのは、(中略)昨年四月に商品を刷新しており、わずか一年での価格改定で現場が混乱することを避けたい思惑もあるとみられる。」
との記述もあり、お家事情は一筋縄ではいかないようであります。他の保険会社は記事にもあるようにすでに貯蓄性の強い商品などは予定利率引き下げによる値上げを決めているところが多いと思われますが、ちょっと悩ましい状況になるかもしれませんね。

これは想像の域を出ないのですが、最近の市況の回復がこうした決断を後押しした可能性があります。景気回復路線であれインフレであれ、市場金利が上がったなら、短期的には資産の評価損などの問題はあるにせよ、予定利率を超えた運用は容易になります。また大手生保では外債などを大量に保有しているのですが、最近の円安傾向が安倍政権のもとで一定程度継続するなら、かなりの利息配当金収入の増加につながります。ヘッジ率の高い会社も多くは元本の為替リスクをヘッジしているのであり、利息の部分はヘッジしていないことが多いはずです。予定利率を下げなくても「運用」で稼ぐという自信があれば別に予定利率も下げなくていいわけです。

いずれにしても、今回の標準利率改定によって構造的な問題点や市場の行き詰まりが図らずも露呈してきたわけですが、同時に市場が転換点にある可能性があり、まさにリスク管理と経営とのリンクが極めて直接的に捉えられるべききっかけとなるような気がします。

ちょっと気になるのは簡保のスタンスです
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013012102000107.html)。
暗黙の政府保証をバックに無茶をされないようにと祈るのみです。

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