厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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<<   作成日時 : 2013/04/08 19:17   >>

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このところの金利の動きはまさに政策の狙い通りというところなんだろうけれど、低金利で債券が買えなくなるというのは保険会社などの運用担当にとって「悪夢」といってもいいと思う。日本の場合は社債やら融資やらにあまりそれにふさわしい信用スプレッドが載っていないうえに、そもそも量が限られているから、おのずから公共債中心に運用せざるを得ない。やはり国債は圧倒的な発行量と流動性を誇るので、日本のマーケットの構造上運用者がそれを中心に運用せざるを得ないのが実情で、しばしばアホな生保やら銀行が融資もしないで債券ばっかり買っているといわれるのだけれど、本当にアホなら不良債権爆発覚悟で、競争によってろくに信用スプレッドもないような融資やら需給でスプレッドのつぶれた社債にガチでぶち込めばいいのだが、なまじ知恵があるものだから結局諸般の事情により国債ということになる。生命保険会社などは超長期の負債を抱えているので、ALMの視点からデュレーションはとにかく長くすることがここ数年の命題であり、また予定利率もこれまで結構高かったから20年を超えるゾーンでなければ逆ザヤになることが多かったのも事実。こうしたことが金利が長期間にわたって安定してきた背景の一つである。

しかし今回の「異次元の」緩和でもう40年までの年限で日銀が全部買います、みたいな話で、発行額の7割相当もお買い求めになるらしくて、あっというまに生保の運用ができない水準に近くなっていて、おそらく多くの保険会社では運用計画の見直しを迫られることだろう。マネタリーベースの増額見合いで買う量的には金融機関の預貸ギャップなどどこかへ吹っ飛んでしまうレベルで、それこそ「市場」で取引される国債が極めて品薄になってしまうという事態が想定されるのだが、これってまさに「市場機能(とくに価格発見機能)の喪失」に他ならないので、言うならまさに麻薬で病状の深刻さが覆い隠されてしまうことがしばらく続くのである。

かつてスウェーデンでは昔、保険会社があまりの政府の財政再建への無策さに業を煮やして、確かスカンディアでしたっけ、国債買いません宣言をして大いに市場をあわてさせたのだけれど、まさにこれは市場がきちんと機能しているからできることで、黒田日銀だと、生保?別に買ってもらわなくてもうちが買いますよ、フフン、てなことになるんだろうけれど、本来は買い手がいなくなることで上がるべき金利もしばらくは上がらない。上がらない状態で運用難に陥った主体が苦し紛れにいろいろなもの(こういう時に限ってまたいろいろな人々がいろいろなリスクの高いものをリスクが少なそうなオブラートに包んで持ち込むんですねぇ)に手を出して、これが合成の誤謬で最初の頃うまくいって調子に乗ってどんどん行った後で、「予想もしなかった」イベントで大崩壊する。そういう絵になってしまうリスクがかなり高いんじゃないかと考えてしまう。

「予想もしなかった」と鍵カッコで書いたのは、ポジションが集積していないときにはそのリスクはせいぜい局地的にとどまるはずのものが、ポジションが集積した結果、その破壊力が「予想もしなかった」ものになるというそういうことである。イベントそのものをリスク管理の世界で想定していても、通常であれば1シグマ程度のものが6シグマ程度まで拡大してしまう、そういうことが現実に起こるのである。現に、先週の国債金利の値動きなどは5シグマぐらいはいっていたはずで割と起こりやすい。日銀が「異次元の緩和」をすれば通常は金利低下という風に反応すると考えるが、実際に起こるのは乱高下であり終値ベースでは金利上昇である。流動性や市場機能の低下が起こると、こういういことはもっと起こりやすくなる。

国債を買い占めて市場機能を奪い、本来の財政の弱さが金利に反映しないようにしてしまうやり方は、まさに「財政ファイナンス」の実態を覆い隠す分、その名にふさわしいのではないか、と思う。日銀の声明では「財政ファイナンス」ではないと明確に否定するのだが、わざわざそういうことを言わなければならないほど今回の措置が「キワモノ」であることを自ら認めているようなものである。

どうしてここまでやるのか、ということだが、個人的には安倍政権の究極の政策目標と関連しているのだと思う。
一つは「消費税増税」。しかるべき時までに景気を良くする必要がありそのためには名目の成長(インフレ)を多少引き上げておく必要がある。時間的に余裕がないので即効薬が必要だ。
もう一つは「憲法改正」。これは硬性憲法である日本国憲法の仕組みをいじることからはじめ、最終的には9条の改正に結び付けたいのだと思う。ワタクシとしては改正そのものには異論はないが、そのための人気取りとして妙な強烈な麻薬注射を金融の世界にぶち込んでくれては困るのである。

ともあれ、今回の措置で本当に人々のデフレマインドが払拭されればいいのだが、高齢化と人口減少の日本国内とそろそろやばくなってきた中国など新興国経済と、先進国向けにも決して数量ベースで輸出が伸びないという現状をかんがみると、単に資産インフレを増幅させてバブルアンドバーストとなる可能性が強いと思う。その時人為的に低く抑えられた金利であれば、むしろ金利商品を売却して益出しや流動性確保に迫られる主体が出てくることも想定されるのだが、その時日銀は今以上に買い続けてくれるのだろうか?

しがない運用主体の愚痴だと思っていただければ幸いである。

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コメント(2件)

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まあ金融緩和というのはそういうもの(金利低下で投資家を金利市場から叩き出す)ですから・・・とはいえ、ALMで縛られて身動きが取りにくい生保に関しては、何か救済措置があっても良いような気はします
とある投資家
2013/04/09 08:35
とある投資家さん、コメントありがとうございます。まあ生保も「救済」まではいらないでしょうが、ある程度のリスクをとるための制度上の手当て(リスク管理に関わる問題)を行っていく必要があるかとは思います。
厭債害債
2013/05/08 08:36

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