厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 二院制とリスク管理

<<   作成日時 : 2013/07/22 20:09   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 14 / トラックバック 1 / コメント 15

今回の参議院選挙は本当に悩みました。これほどまで投票したい政党がなかった選挙は初めてです。まあ若いころはずいぶん投票行動ではやんちゃしてしまいましたが、最近はすっかりおとなしく大人の投票に心がけてきたつもりです。しかし今回は参った。本当にいろいろ考えても答えが出ませんでした。実際にどういう行動をとったかは投票の秘密ということでご容赦いただきたいですが、まあとりあえず投票はしたことはしました。

日曜日は選挙速報を見ながら、投票率も含めてあまりの予想通りの結果にしらけながらも、どうしてこうなってしまったのかつらつら考えていました。

そもそもこの参議院選挙で我々は何を選ぼうとしていたのか、なにを決めようとしていたのかという点です。「ねじれ解消」でよかったという意見も多いですが、そもそも第二院がチェック機能を果たすという意味では、多少はねじれていなければチェックが働かないのではないでしょうか。フランス革命期の指導者シェイエスの言葉として伝えられているものとして「第二院は何の役に立つのか、もしそれが第一院に一致するならば、無用であり、もしそれに反対するならば、有害である」というものがあるようです。一方ではウォルター・バジョットは「理想的な下院が存在する場合には、上院は不必要であり、また、それゆえに有害でもある。しかし、現実の下院を見ると、修正機能を持ち、また、政治に専念する第二院を並置しておくことは、必要不可欠とは言えないにしても、極めて有益である」とも述べています。(以上については田中嘉彦「二院制をめぐる論点」国立国会図書館Issue Brief Number 429(Aug.15.2003)より引用。)やはり、むかしからこの論点は人々を悩ませてきたわけですが、ねじれ解消のために自民党や公明党にいれるなら、それは参議院無用論ですし、逆に共産党などに入れて本当に共産党が第二党にでもなったら、それこそねじれの度合いがさらに強まるわけで、ますます混迷が深まる。

世界の二院制には様々なタイプがあります。英国の貴族院などのように初めから選挙で選ばれないタイプのものもあるし、職能代表のように通常の選挙とは別の母体からそれぞれ選出されるものもあります。上で引用した文献では二院制を3つの類型に分けています。その3つとは@貴族院型、A連邦制型、B民主的第二院型です。@は典型的には英国であり、「民意」に対する牽制であるため、そもそも公選を予定しないか、全く違う母体から選ばれることになります。Aは連邦国家におけるそれぞれの主権を持つ国家の代表として連邦議会で発言するためのもので、アメリカ上院やドイツ連邦参議院などがその例とされます。これらに対しBは同じように民意によって選ばれる第二院が「他方の院の軽率な行動をチェックし、そのミスを修正する」ためにおかれるのであり「こうした民主的第二次院型は民意多角反映型の第二院と呼ばれるもので、日本の参議院もこの類型に属する。」のだそうです。

今回の選挙結果で「ねじれ解消」によって物事がどんどんスムーズに進むとなるというのは確かに良い面でしょうが、本来第二院に予定された役割は当然小さくなるわけです。参議院は6年間身分が保証されますが、参議院でも党議拘束はありうるので、特に一党が大勝した場合にチェック機能が果たせるかどうか疑わしい。つまり、今回の選挙結果についてはシェイエスのセリフが現実のものとして突き付けられることとなります。

唐突ですが、こういうことを考えていて、リスク管理におけるVaRとストレステストの関係が頭をよぎりました。VaRはいまのところ様々な問題点を認識されつつもリスクを数値化し可視化する有力なツールとして広く使われ続けています。欠点だらけでありながらほかの制度よりもましだというだけで利用される「民主主義」によく似ています。そして公選であらゆる人が平等な選挙権を行使して選ぶ議会、たとえば(実際は一票の格差はあるが)衆議院などは「民主主義」そのものの具体化でして、その民主主義の体現である衆議院のチェックを行うのに、同じように欠点のある一人一票の平等な選挙で選ぶ民主型参議院というのは本来意味のないことなのではないか、ということです。つまりあるモデルのチェックを同じモデルをつかってやっているようなもので、何のチェックにもならない。仮に違う結果が出たとしたら、それはモデル作成者が気まぐれでその都度式を変えているからであり、チェックどころかもうそのやり方自体が破たんしてしまっているわけです。

一般にVaRの欠点を補うためには、統計的な手法をいったん離れて、トップダウン的なシナリオアプローチなどに基づくストレステストを行うことが有効とされます。たとえば一定のマクロ経済シナリオをつくり、それに基づいて資産価値を変動させてみるとか、いきなり大地震が発生したと仮定して、その時死者や病人がどうなるか、津波で建物などがどのような被害を受けるか、市場はどのように動くか、資産クラスの相関が崩れるんじゃないか、とか様々な想定を想像力を働かせて、損失を見込むわけです。ここでは要するに全く異なるアプローチをとることで、モデルの欠点を補完するわけです。民主主義のモデルである衆議院をチェックし補完するには、おそらく非民主的なモデルやアプローチが必要なのではないかと感じています。

今の日本の参議院は明らかに「民主型」であり衆議院と同じ「モデル」を適用して政策を決めようとしている点が、そもそも「機能不全」であり、しかもその選ぶ側(有権者)がその時々で(当たり前だが)異なる意見表明をすることから「ねじれ」が生じ、まさに「有害」な存在となりうるのだと感じています。しかも、予算など限られた法案を除きほぼ平等の権能を有するので、その妨害パワーは極めて大きいのです。竹中治堅教授の「参議院とは何か」(中公叢書)
http://www.amazon.co.jp/%E6%9C%AC/dp/4120041263
では、過去いかに参議院が有害な役割をはたしてきたかという事例が豊富に紹介されていますが、逆に参議院があったおかげで助かったというのは(衆議院解散中に緊急集会が開けるという以外)勉強不足なんですがあまり思いつきません。

個人的な意見としては、議会は一院制でよいと思います。まあ現実には憲法改正を必要とするし、参議院議員たちがそれに賛成するとは思えないので無理だと思いますが、今の選挙制度と権能(そして一部の選ばれたメンバー)を前提にする限り無益かつ有害と断じて差支えないと思っています。

ワタクシなりの代替案は、どちらかというと貴族院型に近いのですが、「議会」ではなく純粋なチェック機関を設置するというものです。そのメンバーは一定の(かなり難しい)資格試験をパスした一定以上の年齢の人々のプールから抽選で選ばれるようにすればいい。給与はほとんど実費程度でいい。おそらくそこに選ばれることは大いなる名誉となるでしょうし、日本人の性格からすれば、みんな喜んで受験して資格を得ようとするかもしれません。衆議院で通った法案について、チェック機関は一定期間以内に意見を具申する権利を有し、それがあった場合には、公開の場で議論を戦わせるようにする。ただし、民意によって選ばれた議会の決定は、その議会そのものが再度議決しなおさなければ変更されない。チェック機関はあくまでチェック機関にとどまる。そのようにしてあくまで一つの民意を尊重しつつ民意を離れた場所からのチェックも働かせるというが理想のような気がします。肝心なのは「民意」とは異なる基準で選ばれた(民意よりもある意味合理的な結論が導ける)メンバーによるチェックを受けることです。ねじれの問題は、有権者自身が抱える矛盾を突き付けられているのだと思います。今回「ねじれ解消」を目的に自民や公明に投票したとしたら、それは自ら抱える矛盾に目をつぶり、本質を議論せずつじつま合わせをしているに過ぎないのではないでしょうか。

第二院の役割は第一院の暴走や誤りを防ぐリスク管理という面をもちます。第一院が民主的に選ばれていればこそ、その欠点だらけの民主主義の穴を補完する役割をになう仕組みと能力を持っていなければならないと感じます。いまの参議院の仕組みを見る限りはその要件を全く満たしていないと感じるのはワタクシだけでしょうか。


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2013/07/27 19:46

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内 容 ニックネーム/日時
二院制のそもそもは、ド素人の馬鹿の暴走を止めて、人民裁判のようなフランス革命的混乱をなくす為です。民主主義は最大の独裁制への、議会制民主主義という名の諸矛盾を解消する為の、さいごの立法的措置ですね。
坂本龍馬も共和制はの大事を言っているが、諸侯会議という中で明治政府の暴走を止めてとして暗殺されてます。
維新は無政府主義ではないということです。ぶっ壊してまともな社会にならないのは、小泉改革、民主党、維新となにも、わからん馬鹿な国民がアホだということを、参議院は言ってほしいな。
かる
2013/07/22 22:35
ちなみに、ナチスはワイマール憲法下で民主主義的に最初は選ばれた民主主義政党です。
ヨーロッパの歴史的検証の中で、議会を知らない我々は、たぶん何年たってもこの問題はわからんでしょう。
かる
2013/07/22 22:41
民主主義は、合法的に民族浄化を許し、ある階層に対する差別化、最悪の場合、虐殺行為は容認されるのです。国家主権の名の元に、民主主義的プロセスにおける大量殺戮が、何度やられたことか。
馬鹿な日本人は、民主主義とか、維新とかいうと素晴らしいことだと思っていますが、維新の名の元に会津に対する官軍の虐殺行為、京都、江戸における薩摩、長州のテロ行為が素晴らしいとはいえんだろ、今一度考えないと。革命行為において、相手方の殲滅は極めて非人道行為です。
かる
2013/07/23 00:01
リスク管理に引き付けた議論、興味深く拝読しました。

>肝心なのは「民意」とは異なる基準で選ばれた(民意よりもある意味合理的な結論が導ける)メンバーによるチェックを受けること

これは日本では不可能ではないでしょうか。今の日本にこのチェック機関をオーソライズする主体が存在するでしょうか。天皇ですか? また貴族主義、ノブレスオブリュージュのような思想、哲学、歴史にもとづく基準は策定しうるでしょうか。

何が「合理的」かは、過去の文脈との関係や将来のどの時点まで射程とするかで変わってきますよね。結局できるだけ多くの立場や世代を反映させねば、となって、いちいち突っ込みが入り議論がスタック…という元の木阿弥に陥りそうな気がします。

以前は一票の格差をなくし、公選法をまともにして議論できるようにし、国会法を変えればいいんじゃね?と思っていましたが、今般選挙を見るとそれだけでは足りないように感じます。まだ我々に準備ができていないのではないでしょうか。

不利益配分をする時代にどうすれば民主主義を健全に機能させることができるのか。私は基本に立ち返るべきと考えます。

「参加」することで政治を我が事とし「納得」を得るのです。

つまり地域主権の実現です。
これが何だかんだ一番近道ではと思います。
nobinobi
2013/07/23 13:58
地域主権は、ある意味正解なのですが、
我々経済学的観点において、市場主義いわゆる民意が、正しい方向に神のお導きによって、予定調和されるという発想が、間違いなので政府の存在意義があるという立場において、議会が市場に介入する正統制を持つのです。ま先進的な地方主義であるアメリカのデトロイト市の破綻を、住民の人権など無視しても守りべきだという覚悟が、いわゆる有権者にあるかどうかです。
地方主義とか言っていながら、破綻したらまー日本にはないので簡単に地方分権をいうのだが、それだけの財政責任なりをおうことを忘れずに。なので日本は聡明な殿の下に、幕藩体制にもどしますか。
かる
2013/07/23 21:43
ある差別、麻生さんと総理は所詮二流私大だから、馬鹿なのでなにもわかってないという、極めてあたーまのいい左翼的知識人と東大出とかで、言っていることがちんぷんかんのキャスターに騙される馬鹿国民が見て取れます。
ここでの歴史上事実を皮肉を込めた発言の意図も分からず、批判を言っているのは、極めて稚拙ですね。こういった大衆捜査はまさにナチスの常套手段ですね。
かる
2013/08/02 21:05
ある意味、幕藩体制は正解かもと思い始めました。確かに鎖骨下のもとに、藩に最大限の裁量を与えた結果、江戸時代は極めて安定した社会であったことは事実、各藩には馬鹿殿はしっかり幕府が潰したおかげで、地方にも有能な人材が生まれて財政破綻もあまりなかったという意味では、明治以来の中央集権を本当に戻したほうが、いいかもな。
分割民営化も、地方分権も駄目な財務官僚に任せてもだめだよ。郵政民営化も、年金の自主運用もそこから生まれてるのだか.全く実現しない、だから増税しか馬鹿の発想しかない。
国鉄の莫大な赤字は、自主運用裁量権任せたから、優良きぎょうになったのよ。わかる、
かる
2013/08/02 22:59
プライマリーバランスなーんてばかの硬直した足し算しかできんアホ官僚の考えること。
何度もいうが人間は死ぬ、後あほなメガが海外のインフレ投資とか言ってるが、ソノカネは国内インフレに回せば、国債の金を国内インフラにまわせば、建設国債とかその分減るし、復興予算が九州で使われるなんて馬鹿なこともおこらん、これが民間活力だよ。当然リスクは全部銀行がおう。一挙4両得だな。でもやらんおかしいよな。
かる
2013/08/02 23:11
皆さんのすバラしい議論30年間ゲロがでるし、全く日本を駄目にしてありがとうございます。稚拙な経済理論とくだらん、欧米に騙されたくだらん法律主義と戦争経済に騙されて、素晴らしい日本的経営を捨てて駄目になった皆様に栄光あれです。
あなたの息子は英語話せても、鎌田のフィリピーナ以下というところです。これからはしっかりした日本企業の時代が国際時代になります。
租税回避するアホ企業は世界の嫌われもの。名古屋の道路は広いしでかいデトロイトとは違うのです。
自分の国の若者を鍛えないと、いかんな、馬鹿経営者が多くてまーわたしの同期ですが。
かる
2013/08/07 00:57
どうでもいいけど、今日 流動性供給オペてやったらしいが、私も今回は不勉強でした?
いつできたのという感じマジで、言葉的にはJGB買いだと思ってたので、じゃじゃです。
これは明らかに誤解をまねくよ、ひどいな、ま私が古いので資金を供給の為にタメケンの買い入れで、資金供給でねーの。
さすが、BOJと財務省様では言葉が違うか。
かる
2013/08/07 01:22
すごい実にすごい、何かこれは国債管理政策の延長線で、財務省様がイールドカーブをなだらかにしたいということは、すなわち時間軸に介入したいという、すげーことになりますがって.わからんだろーな、僕たちには、
かる
2013/08/07 01:32
すごいぜ、財務省は15ぬん後の☆年後の金利を予想して落札してるんだぜだから、絶対インフレならんな。
かる
2013/08/07 01:45
よーは逆クラウディングアウト、これを公営企業単位でやったのが、民営化だな。国の資産と負債を民間に転換して、くだらん規制をなくしてもう一度市場、民間ではできないかを問い直す時だな。
まずは、公共インフレの民営化、資産と負債を民間に移して、市場に任せると無駄な公共選択はなくなるし、一気にいわゆる国家債務はなくなるって国鉄民営化とかで経験すみだがな。つぎは農業と医療かな、民間企業と農業従事者また医師と患者がくだらん規制当局と既得権益から解放して直接出会うところだな。
しかし海外展開できないといわれた内需産業が、一番の成長産業になりつつある。これが成長戦略の基本だよ。
かる
2013/08/20 21:44
あほの消費税論議に一言、なんか市井の方々と国家主権に介入大好きの馬鹿のあつまりIMFと財政しか守らんと死んでしまう某役所だけが、言っているが、消費税は焼石にションベンだし、年金財源でもねーので基本は、やっぱ暫くは所得税とか、相続税だの、法人税でやるべきだな。
所詮国に集めた金は、効率的には使われないとすれば、増税は絶対ない、何度も言うが、負債と資産ともに民間に渡して、後は規制官庁を潰すしかない。これは官僚機構潰すことではないことを理解して欲しい。まともな政策官庁、地方自治体の発想はどんどん法制化して民間と一緒にやることだよ。 これが郵政民営化の原理、ようは財投というドンブリ勘定なくすためにという意味だったんだけどな。
今も道の駅やってたが、道路会社の資産は、JR以上なのでいくらでも成長する可能性がある、彼らが自己責任でこういった資産を有効に使えば、少なくともいわゆる、老朽化したインフレ問題は一気に解決するんじゃない、だから高速だけでなく。いわゆる夜警国家的発想で、あらゆる分野を考え直すべき。
間違ってほしくないのは、にないては元公務員でもいいのだよ。
民間のほうが、馬鹿が多いので民営化イコール公務員がだめではないことをわからんとな。といえば公務員もやる気でるじゃん!はっきり言って民間も官も人次第よ。
かる
2013/08/27 23:17
ここで強調したいのは、民間の有識者ほどいい加減な輩は、いないと言うこと。例を出せば民主党の仕分けとやらに出てきた胡散臭い奴らと金融危機に出てきたキムラ某とかだよ。まえも言ったが、民主主義と市場主義とか、ガバナンスとか臆面もなく言う奴らはカスが多いので気をつけましょう。
かる
2013/08/27 23:26

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