厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 提携ローンと反社会的勢力(行政処分に思う)

<<   作成日時 : 2013/10/04 15:50   >>

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 みずほ銀行さんが金融庁から業務改善命令を受けたという話を聞いて、ようやく膝を打った業界関係者は多いのではないかと思います。昨年度来、金融業界の同様のビジネスを扱っている業態において、まさに今回問題になった提携ローンについて金融庁が反社のあぶりだしに必死になっているという話が出ていたからです。

話はある日突然やってきます。担当部門の長が金融庁に呼び出され、おたくの提携ローンに反社会的勢力相手の契約が混じっていないか?といきなり聞かれます。

ここで業界関係者以外の方のために「提携ローン」について簡単に説明しておきます。消費者がたとえば自動車を購入する。その時に割賦で購入するとします。そうすると場合によってはディーラーは提携している信販会社などの消費者信用系の会社を紹介します。通常の立て替え払い契約ですとその信販会社などの消費者信用系の会社がいったん全額を消費者に代わってディーラーに対し立て替え払いし、その後期間にわたって消費者が消費者信用系会社へ返済していく形となります。

ところが提携ローンの場合、紹介された信販会社は「提携」している銀行などの通常の金融機関に紹介し、消費者は法的には直接銀行との間でローンの契約を行うことになります。消費者信用系の会社はこのローンに対して一般的には「連帯保証」をすることで信用を与えます。

ここに今回のみずほ銀行で明らかになった問題の原因が隠されています。消費者が直接話をするのはたとえば車のディーラーなど販売店であり、せいぜい信販会社などの消費者信用系の会社どまりです。実際にお金を借りる相手である銀行などとは直接書類のやり取りもなければましてや面談なども行われません。場合によっては、銀行などは直接お金を借りている人の属性すらまったくわからないことがあります。そんなところに銀行はなぜ金を貸すのか?ひとえに(ある程度信用力のある)信販などが連帯保証しているからです。単なる「保証」と違い、「連帯保証」は貸し手側には強い力が与えられます。専門的な言葉でいえば連帯保証の場合保証人(この場合の信販など)は「催告」「検索」の抗弁をもちません。わかり易く言えば、通常の補償の場合なら、債務者がお金を支払えなくなって債務不履行になったとき、保証人はまず債権者が債務者にちゃんと支払うように催告(「催告の抗弁権」)しさらに本当に支払う資力がないのかどうか調べたうえ(「検索の抗弁権」)でなければ、債権者の保証債務履行請求を突っぱねることができるのですが、「連帯保証」の場合そのどちらもありません。つまり債務者が不履行となった場合、債権者がいきなり保証人に掛かっていけるのです。つまり債権者の信用リスク管理の立場からは、極論すれば「保証人」(つまり信販など)の信用力だけ見ていればいいわけで、審査の手間は大幅に軽減されます。もちろん信販会社などはそのビジネスの対価として保証料をとるわけですが、まあそういう形で銀行にとっても信販などにとってもおいしいわけです。

すでに書いたように、このスキームでは銀行など貸し手は消費者の個々の属性を詳しく見ることはありません。ここに落とし穴がありました。通常のローンであれば借り手の属性を見てちゃんと審査するわけですが、「提携ローン」では「貸倒可能性」しか見ていないわけです。だから、反社などが混じっていてもまずは気が付かないということになります。

で、初めに戻ると、金融庁で「お宅の提携ローンに反社が混じってないか?」と聞かれた担当者は言葉に詰まるわけです。なんせそんなこと知らないわけです。まあそこでどのように答えるのかはわかりませんが、金融庁からは、ちゃんと調べて再度報告するように指示されます。そんなこと信販などはちゃんと把握しているだろうから、聞けばいいじゃないかと思われそうですが、それが意外にそうでもない。なにせ監督官庁が違います。信販会社は消費者ビジネス関係というくくりで「経済産業省」で、銀行などはもちろん金融庁。反社に対する取り組みの度合いも違います。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131003/t10014991901000.html
今回も信販などのレベルでは問題にされてないからこそ、このような問題が生じるわけです。銀行などのローンを行う金融機関ではどこでも反社データベースのようなものを作って常に様々なソースから反社対象者をアップデートし、定期的に顧客の属性をチェックしているはずです。契約の内容によっては「解除」を求めなければならないからです。その是非はともかく、それぐらい金融機関に対する「反社」への取り組みの要求水準は高まっている。ところが一部の消費者信用系会社などは、そもそもデータベースすら作っていないでノーチェックのところもあったようです。今回の問題は、銀行など金融機関にとってまさにわきの甘いところを見事に突かれたかたちになったのだとおもいます。
昨年度末から今年度前半にかけて、多くの金融機関はこの対応に追われたはずです。信販会社などから全件データを取り寄せ、一つ一つ自社のデータベースなどと照合し、その結果を報告させられたはずです。本来そういう作業を予定していたビジネスではなかったことから高をくくって簡易な報告で済ませようとした金融機関は、当局からこっぴどく怒られたようです。あらためて当局における反社への「本気度」を認識させられてびっくりしたと、ある人は語っていました。

おそらく、この背景にはAML(アンチマネーロンダリング)やCTF(テロ資金供与対策)といったものにアメリカのオバマ政権が熱心であり、そのプレッシャーが直接間接に日本にも来ていることもあると思います。歴史的には米国では1988年に、薬物犯罪収益に対するマネーロンダリング行為の犯罪化が義務付けられ、1990年には,FATF(Financial Action Task Force on Money Laundering)が「40の勧告」といった提言を行っているようです。規制は次第に強化され、2001年のアメリカ同時多発テロ事件が発生した直後には、FATFによりテロ資金に関する特別勧告が出され、テロ資金供与の犯罪化、疑わしい取引の届出義務の強化がなされました。このように米国ではいまやテロ事件を受けてアメリカの重大な国益とリンクするということなのだと思います。それが有力同盟国である日本で、全く野放しだとしたら、それはアメリカとしても放っておけない。下手すればTPPの議論とも絡められかねません。民主党時代の負の遺産を捨てて米国との関係維持を重視する安倍首相率いる日本政府が必死になっているのはこのような背景もありそうな気がしますがいかがでしょうか。

この事件に関してあえてみずほ銀行さんの擁護をするなら、これはおそらくみずほさんだけの問題じゃなかったのではないかと思います。また、みずほさんでも信販などに対し「回収の指示」などはやっていたようです。2年間放置ということで処分対象になったというのは、要するに銀行としては更に踏み込んで、信販ではらちが明かないのであれば直接のりこんで「解約」まで交渉するぐらいのことが要求されているということです。これはやや現状のビジネス慣行からすればやや厳しかったな、という印象です。(金融機関にとって行政処分が刑罰に近い意味を持つのですが、それまで犯罪ではなかったものがいきなり解釈で犯罪になったような印象です)。
とはいえ、契約によっては暴排条項なども入っているわけで、それは当事者を拘束しているのだから、放置することは決してほめられた話ではないことは確かです。ただ実務担当者の視点では、え?そこまで言われるの?というのが正直なところだったのではないでしょうか?本件に関してはどこかの記事にあるコメンテーターが「暴力団との癒着」が云々と書かれていましたが、本件の場合そういう次元の話ではない。そもそも銀行は直接相手を知らないし、癒着という問題ではなく「知らなかった(調べなかった)」、あるいは「知った後もある意味安易に放置した」ことが問題なのです。(もちろん、暴力が怖かったという面では広い意味で暴力団の影響下にあったということが言えなくはないのかもしれませんが、まあ癒着というのはさすがに無理がある)。

残念なことにみずほ銀行さんの場合、もう一つ重大な突っ込みどころがありました。それは社長まで報告が上がっていなかった、ということです。銀行にとって顧客に反社が紛れ込んでいる、そして態勢上もそれが紛れ込むリスクが大きい、というのは社会的に見て重大な問題となりかねないリスクを抱えていることになるわけで、当然、そういった問題が経営トップの了知のもと経営で共有され対応がとられる必要がある。そういった経営管理態勢(ガバナンス)が求められる。しかし、指摘にあるようにこれが「担当役員どまり」であったことは、重い処分を決定的にしたと思われます。まあ逆に頭取が知っていてかくしていたらもっと大変だったという説はありますが、うゎなにをするry)くせ^ふじこ・・・

ところで、本件をみずほFG内での旧興銀系と旧富士系との権力闘争と絡めて見る向きもあるようで、それはそれでなかなか興味深い視点ですが、部外者にはわからないので深入りはしません。

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
完璧なお答えです。みずほ役員にマネロンの視点はないでしょうね。まー欧米からみればyakuwa融資ということですね。
まーこのタイミングでの規制当局の命令発動など、政治的な問題はともかくも、まーちょっと視点が違いますが、反社勢力のスクリーニングは誰が決めるのでしょうか。警察ですか、極めて人権を含め重要な問題ですね。みなさんも考えましょう。
かる
2013/10/04 22:31
馬鹿銀行は、アホ当局に謝ってだれか首にして、わけのわからん第三者委員会って、この国は全て問題のほを隠蔽する。
太平洋戦争を全て、東条の首つりで終わらせたのといっしょだよ。
さて本当にみずほが反社会勢力といった人達は、誰の基準で決めたのか、当然金融庁は、少なくとも警察庁からこの人間が、広域暴力団の構成員であるという裏は、とっているんだろうな。
何ども詐欺的な事件を起こした、わけのわからん証券会社やらには、甘いのに、この定義を明確にしないとな。少なくとも某対法では、便宜供与自体を禁じているが、車売ったデーラーはどうなんだろ。このあたり規制当局は、明確な基準を示せよ。
多分これを始めると、麻生さんじゃねーが、禁酒法みたいになるぜ。
反ぐれ、もと極左暴力集団だの、あからさまに戦争宣言した民族系金融機関は、反社勢力じゃないのかな。
かる
2013/10/04 23:48
しかし某北海道も、経営者じゃなくて、組合だろって言わないのよ。確かに中間がいないのは、どこの企業でも一緒だろそれでも四国は起きていない、馬鹿NHKは、総連寄りの発言をくり返す。
だったら、北海道から鉄道なくせ、って行かんだろ。どうすんの。改革ってなんだろ。また馬鹿役所だけがいいもんかい。
また分割民営化批判かい、あーあ鉄道靈だとでは、国鉄に戻ってみんなで、あかじふたんしようぜ。っかくごあるのか。
かる
2013/10/05 00:11
言っている意味がわからないわけではありませんがみずほ銀行の反社対策が良いと言えません。
提携ローンでも保証会社は関連会社です、。リスク管理は親会社と一体です。保証料支払いの連帯保証会社ではありません。580店舗で230件あることは異常です。全く対応がされていなかったと言えます。
ここ数年の反社対策は担当実務者とって最大の与信リスクです。預金口座のみ作成時点でもチェック努力がされているのが現状ではないでしょうか。
しげちゃん
2013/10/05 18:12
いつもながら分かりやすい解説ありがとうございます。ただ、経営のトップにも報告は上がっていたようで、そうなるとまた様々な憶測が生まれるのは避けられないですね。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL4N0HY1SP20131008
名無之直人
2013/10/08 18:15
あなたの親戚にヤクザとか、犯罪者はいませんかー。あなたも人権にかかわり、学生時代に左翼的な運動にかかわったことは。
はーい特別高等警察って知ってますか。当時警察リストにのった人は、人権無視され、逮捕されました。
馬鹿な三流官庁のくだらん木っ端役人は、頭が悪いのでここまで考えてないので。
さて反社勢力ってなんでしょうか?ヤクザだけではないはず。ここまで考えている人はいるのはな?
全銀協が警察と連携って極めてきけな兆候っアサヒいてよ。
はーい黒コーチでーす
2013/10/19 23:59
はい、私はトラさんです。祭りにいってばいやって稼いでます。これをみと目立たない、自治体と祭りの実行委員会は、暴力対策違反だろ駄目ですよね。おかしいよな。
と同じくらいのこと馬鹿役所は、ガタガタいってるのだよ。ザル法だろ?
はーい暴力対策課でーす
2013/10/20 00:13
はい、私はトラさんです。祭りにいってばいやって稼いでます。これをみと目立たない、自治体と祭りの実行委員会は、暴力対策違反だろ駄目ですよね。おかしいよな。
と同じくらいのこと馬鹿役所は、ガタガタいってるのだよ。ザル法だろ?
はーい暴力対策課でーす
2013/10/20 00:19
反体制派はと、反社会的勢力とは、まーあまり言いたくないが、東大全共闘とか、今では結構お偉いさんですよね。でもあるセクトだの、思想てきなんじゃらって、発現したら反社会的になるのかな。多分間違い無く人間は瞬間に反社会的になる。誰が判断するのか。
最後に革命とか、維新は立場が逆転するだろ。
反体制派
2013/10/20 00:26

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