厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 「資産運用業における信用格付け会社への依存の低減にかかるグッドプラクティス」

<<   作成日時 : 2014/06/10 16:15   >>

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証券監督者国際機構(IOSCO)が6月4日に「市中協議文書」をだしてパブリックコメントを求めているようです。もともとリーマンショックの一連の動乱が証券化商品などにおける格付け依存がもたらした部分があるという反省から、2010年金融安定化理事会(FSB)が原則を公表しており、具体的な政策措置の立案を目指していたところで、それの内容がまとまりつつあるということでしょう。

http://www.fsa.go.jp/inter/ios/20140609-1.html

そもそも、かつて監督者のほうが指定格付け機関とかいう名称で格付けにお墨付きを与えていた黒歴史をどう葬っていくのかは別の意味で興味のあるところですが、それはともかく。

内容については詳しいことはお読みいただくとして、試訳を読むといろいろこれから話題になりそうな内容が詰まっています。もともと格付け会社の格付けの使い方については、そのユーザーの置かれている立場に応じて様々なものが考えられると思います。本当に個人レベルではいうまでもなく、それを自己責任において盲目的に信じるというのも一つのやり方であろうかと思いますし、それがために格付けというのがあるといってもいいと思います。一方で一定の規模を持つプロの投資家(たとえば大手機関投資家など)は当然のことながら「受託者責任」といった視点も入ってくるでしょうし、外部格付けを盲目的に受け入れてはいけないことはいうまでもありません。仮に格付けがついていても本来自分で信用調査を行い、格付けはそれを補完するあるいはセカンドオピニオンとして利用するのが正しいという点、全く同意です。

ただ、実際の行動規範として、たとえばこのグッドプラクティス案の8番にあるような「格下げが自動的に即時売却につながらないようにする」といった行動は頭では理解しても、最終顧客との取り決めや時間との闘いを考えるとかなり難しい場合があると思われます。最終顧客の立場からは、運用機関が投資先の状況が変わった時にどのように行動するかが評価の一つの要素になるわけで、担当者がジャッジメンタルに逡巡するよりは一定のトリガーで機械的に行動する仕組みのほうがリスク管理という視点ではおそらく評価されやすいのではないか、と思うわけです。通常与信先の信用リスクというのは、膨大な与信先すべてをアナリストが毎日、こういうことが起きたらこうする、というすべてのシナリオを描いて用意しているはずもなく、信用リスク要因というのは大概突然に起きるわけで、その時影響度を判断するまで相当の時間を要するわけです。最終顧客としては、一定の場合に「損切」する仕組みがあったほうが安心するし、そのトリガーは信用事由の場合客観的には「格付け」が説明しやすい、という事情があると思われます。

だから、理屈としてこのグッドプラクティスは理解できるのですが、現実にお客さんと対峙する運用機関としては、格下げによって「投資適格」から外れることで売却するというやり方は説明しやすい。もともとある程度信用リスクのある(たとえばBBBクラスの)債券などを中心にやっているとすればなおさらそういうものではないか、と思うわけです。
いくら「投資家にとって最大の利益となるような時間軸で取引を実施する」といっても、最終投資家との約束で一定の格付け以上のものに投資するという風になっているなら、その規定違反状態をどう正当化するのか、そんなめんどくさいことやるぐらいなら売ったほうがいい、と考えても不思議ではないでしょう。

実際に格付けと債券投資というのは結構悩ましいテーマです。ベンチマークも投資適格をベースに作られていたりするわけで、このグッドプラクティスをいうなら、ベンチマークを作る側にも同様のことを指導する必要があります。つまり投資適格から外れた債券を機械的にベンチマークから外さないという指導。でも格付けの下がった債券の中身を見てベンチマークに残すかどうか判断するというのはベンチマークを作る側の仕事とはいいづらい。で、ベンチマークから外れるなら自動的に売らなければならない主体も多いわけで、やはりそのあたりへの目配りも必要なのでは、と感じます。

まあ全体としての趣旨はおっしゃる通りだと思うので、今後どのような議論やコメントが寄せられるのか、実際にどのような政策に落とし込まれるのか、注目したいと思います。


追記:ちょっと今回のプレスリリースの「仮訳」について一言。もちろんこれがサービスでつけられているのはわかるのですが、たとえば8.について最初にInvestment managerを「投資運用業者」と訳しておきながら、次のパラグラフの冒頭の明らかに同じものをさすthe managerを「資産運用業者」と訳し分けるというのは読む側に余計な混乱をもたらすと思います。すみません、FSAの文書は一言一句おろそかにできないと、若い時から叩き込まれてきたもので、ついつい愚痴です。

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