厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 異次元緩和と真珠湾攻撃

<<   作成日時 : 2014/12/07 19:04   >>

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ふと、今回の安倍政権による(とあえて言う)異次元緩和は真珠湾攻撃のアナロジーではないか、と思った。昭和16年の12月8日(現地7日)に帝国海軍がハワイの真珠湾にいた米国艦隊を奇襲攻撃し大損害を負わせた事件である。いうまでもなく本格的な日米の戦闘がこれによって火ぶたを切られたわけである。

一般にいわれているのは、山本五十六をはじめとする軍の要人で実際の指揮を執る人々においてはそもそも対米戦で勝ち目はないと見切っており、どうしてもやるなら緒戦で相手に大損害を与えて有利な講和に持ち込むべし、と考えていたということである。そして結果的にはその大戦果に酔って調子に乗り行きつくところまで行ってしまったのが太平洋戦争の結末である。

もともと当時の国力差は大きいものがあり、留学などを通じて当時のアメリカを知っていれば、到底勝てると思わなかったのだろう。そして問題の核心はエネルギーをはじめとする資源であり、産油国でありその他の資源も豊富な米国に対し最終的に戦争によって「勝利」するというのがどういうイメージを持っていたのか戦争する当事者がきちんと定義していなかったことが最大の問題である。アメリカの占領など到底無理で、まさにせいぜい「有利な講和」を目指すということが初めから共通の認識になっていれば(まあ当時そのような考えは「腰ぬけ」とか言われたのかもしれないですが)きちんとした「損切り」によってあそこまでひどいことにならなかったのではという気はする。

安倍政権下の異次元緩和も一種の奇襲作戦である。言い方を変えれば、それによってもたらされる「最終的勝利」のイメージが本来は事前に用意されている必要がある。しかし国力の決定的な差を前提にすれば、その目標は単なる絵空事(たとえばアメリカ占領)であるか、所詮は時間稼ぎ(例えば有利な講和)であるかにすぎないことが明らかだ。当時も勝利のイメージの共通の認識がないか、あるいは意図的に国民を欺いていたのかどちらかであろうと思われる。

アベノミクスでも同様だ。第三の矢は何処にもなかったことがそれを表している。そしてその第三の矢の不存在を糊塗すべく解散総選挙にでた現政権には大きな問題がある。アベノミクスの成果を問うというのは聞こえはいいが、所詮は真珠湾攻撃の戦果をもって戦争継続の可否を問うというようなものである。真珠湾攻撃が元々日本が圧倒的劣勢にあったが故の大規模な奇襲でありそれゆえにあげた大戦果であること、そして安倍政権下における大規模緩和も全く同様に人口問題や既得権等の問題で極めて弱体化している日本の社会や経済があるからこそ、このような無謀ともいえる作戦に出ざるを得ないのだという認識が必要だと思う。

大規模緩和が長期的に成功するためのポイントを改めて考えてみる必要がある。
一つは、国民の気分を良くすることである。確かに一部の産業や一部の資産所有者にとって極めて有利な施策であり、企業がその利益をベースに富を増やす施策をとっていけば次第に全体が豊かになっていくだろう。残念ながら、一部の輸出企業の収益が社会に還元されるまでには相当時間がかかる。まず、過去の円高で相当痛めつけられた輸出企業がちょっとぐらい円安になったからと言って国内に生産拠点を戻すことはない。企業収益が上がってもなかなか分配しないし、分配も比較的株式の保有比率の低い日本の年金や個人に対してはインパクトが比較的低いのではないか。ワタクシたちのように投資に関係する仕事をしているとそれなりにインパクトはあるものの、国民全体からはいまいち所得や支出に影響するような気分の良さが見えていない気がする。

もうひとつは、「時間稼ぎ」を利用して構造改革にでることであった。その一つの表れが消費税増税と歳出削減による財政再建である。同時に高齢化社会の問題を踏まえた税と社会保障の一体改革が必要だという認識が共通にあったはずだ。もともと「消費税増税」と大規模緩和は同じ次元で論じるべきだったと思う。つまり大規模緩和をやった以上消費税増税は不可避であったはずだ。人口問題に手をつけるためには若者の「希望」が重要であり、老人の既得権や不平等な年金、投票制度こういったものに手をつける必要がある。ところがあろうことか、最高裁が何度も「違憲状態」としている選挙定員のもとで総選挙をやって自らの正統性を主張しようとしている現政権は、到底きちんと改革に取り組む気持ちがないこと、さらにいえば日本の将来について真剣に考えていない、あるいは考える能力がない、ということが明らかである。

いずれの点でも大規模緩和を長期的な日本の復活に結びつけるポイントが満たされていないように思える。

今回の選挙で安倍政権はまた勝利を得るだろう。きちんと消費税即時増税と公共事業を含めた歳出削減という正論を述べる政党がないのだから、本来あるべき姿を描いていた人々が投票する先がないのである。投票しなければおそらく大本営発表に浮かれる人々や利害関係者のわずかな支持だけでも、現政権が支持される結果となるのだ。

太平洋戦争当時から見れば日本は豊かな国であるが、人口問題など世界的にきわめて不利な状況を抱えている。当時のエネルギーの不利と同様の極めて構造的な問題である。その弱点によって追い込まれた日本にとって、起死回生を期して真珠湾攻撃のように奇襲によって時間を稼ぎ有利な講和(意識や行動の変化)に持ち込むことはまだ理解できないでもない。しかしその後きちんと講和への取り組みをきちんと行わないままで泥沼の長期戦へ突入し、日本は壊滅した。今回の異次元緩和と総選挙の組み合わせも結局は日本が同じことを行こうとしていることを示している。壊滅的な長期戦への、その分水嶺が今回の総選挙であると思っている。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
コメ欄も含めて正に戦前的になってきましたね。なぜリフレ政策支持の方は上から下までほぼセクト的なんですかね。きっと数年後も理想的なインフレに成っていないと別の戦犯を持ってきて、効かないのはその性だ、より一層の緩和をと求め続けるのでしょう。
南無
2014/12/08 02:14
残念ながら、最後のこうげきのかくこなんですが、アホ国民のようにわからないでしょうね
バカな根性のないアホ経営者とアホマスコミに踊らさらる民度の低いバカな国民にかけたバカな政治家に黒田さんの政策は理解さろずに終わるでしょうか。
かる
2014/12/10 00:51
いつも楽しく読まさせています。
今回ふと思って返信しました。
日本の和紙が世界遺産に登録された和紙は遣唐使から伝わったと言われています。中国(当時は支那と呼ばれていた)の四代発明の一つです。その後発展した文明が日本で開花したことにならないんですよね。
また、徳川吉宗の時代に千葉房総半島に乳牛を飼育して将軍専用のタンパク源を確保していて、幕末には70頭以上飼育されていた。

日本人は尊皇攘夷で十分満足していた節がありますね。
hikouki
2014/12/15 14:04
第二次世界大戦後のレジームを脱却するんは、「第三次世界大戦」での勝者となるしかない。

第三次世界大戦があるとするれば、それは現在行われている、日米欧と新興国による金融緩和合戦なのでしょうか?

もしそうなら、「どの通貨や国債が、最後まで耐久レースの勝者か」を判断して、その国の通貨や国債に bet する…のでしょうか?

担保でなく人に投資するのが、金貸しの王道のような気がします。

東日本大震災での、日本国民の自制心と協調性に、世界中が驚きと高評価を与えたのは記憶に新しいところですね…
suomi
2014/12/30 23:22
(上記追加です)国債の担保は徴税権です。東日本大震災の折に確認された日本人の協調性は、重税にも従順である…という意味です。
suomi
2014/12/30 23:29
南無さん、コメントありがとうございます。リフレ派の基本的な立場は、金の量にすべて起因させることがある意味思考上「容易」だからかな、と思っています。

かるさんどうもです。まさに最後の攻撃であるべきでした。出口がない政策に入ってしまった感があります。

hikoukiさん、コメントありがとうございます。様々なものについて日本独自の発展の仕方があるというご趣旨であれば、その通りだと思います。但し金融には基本的に国境がないので、要注意かと。今回の異次元緩和はある程度まで計画的にグローバリズムを考慮していることは明白ですが、その先は「ギャンブル」になってきている感があります。

suomiさんどうもです。おっしゃる通り、日本国の信用のかなりの部分は従順な国民性に依存しているところがあると思いますね。その意味で日本がファイナンス的に苦しくなるのはだいぶ先だということには同意できますが、「戦い」のロジックとなると対外的な借金があろうが無かろうが、物理的な力の要素を考慮することは避けられないでしょう。
厭債害債
2015/01/13 04:48

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