厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 国債保有リスク

<<   作成日時 : 2015/04/29 07:42   >>

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バーゼル委員会で、金融機関による自国通貨建て国債の保有にも一定のリスク掛け目を適用するという動きがあるという記事が先週末の日経新聞や毎日新聞で出ていたようです。

日経新聞では「金利上昇リスク」についての引き当てと書かれていました。確かに事実として、巨額の国債を保有する銀行などは、負債サイドが比較的短期の預金であることが多いので、バランスシートが金利上昇に弱いことは事実でしょう。

しかし、そもそもバーゼルで自国通貨建て国債の保有に一定のリスク掛け目を、という話が出てきたのは、ドイツやフランスを含むユーロ参加国にとってすでに自国通貨建て国債となってしまったギリシャ国債やスペイン国債が本当にリスクウェイトゼロのままでよいのかどうか、という議論が出発点ではなかったのか、と思います。つまり、ここで問題としているのは市場リスクではなく「信用リスク」だったのではないでしょうか?

にも関わらず、日経新聞などがおそらく全く同じテーマを「金利上昇リスク」つまり市場リスクという切り口で迫っていることにちょっと違和感を持ちました。

たしかに、銀行は構造的に短期負債(預金など)で長期資産(企業融資、住宅ローン、国債など)の資金をファンディングしていることは事実であり、金利上昇がバランスシートにおいてネガティブに働くことは事実です。しかしながら、いまどき、金利上昇にむけてストレステストなどやっているのはもう常識だろうと思いますし、それを前提に資本の充実を図ろうとしていることも明らかです。さらに言えば、最近はROEという視点で資本の有効利用というか、株式会社の場合無駄に資本を積み上げるのではなく、効率的に使うということで、その意味でも説得力のある形でのリスク管理が非常に重要になっていると思います。つまり複数のシナリオをつくって、金利上昇がこれぐらいだったら、あるいはイールドカーブの形状がこういう形に変わったら、という風なシナリオのもとそれぞれにバランスシートに与える影響を考慮したうえで、資本政策をやっているはずであり、その中で当然金利上昇シナリオは入っているはずです。
さらに、技術的にはやや困難であるにしても、金利が変化した場合の顧客行動を取り込むような(例えば住宅ローンの借り換えがどれだけ出て、銀行の収益性にこれだけ変化がでるとか)シミュレーションも(少なくとも大きな規模のところは)きっとやっているはずで、この状況で国債へのキャピタルチャージを課すことを通じて単に資本を積み増しさせる(あるいは国債を売却させる)という行動を慫慂する動機づけがどうも不明なのです。

先に書いたように、そもそもこの議論の出発点は国債の信用リスクであって市場リスクではない。もちろん今の日本の状態はかなり潜在的リスクが高いとはいえ、それは「金利上昇リスク」というよりは「流動性リスク」に近く、計算上も金利上昇リスクとは異なるアプローチが必要だろうと思います。ところがBIS規制自体、非常におおざっぱであって、そもそも今のリスク管理の世界からは大きくかけ離れた「象徴的な」ルールに成り下がっています。逆に言えば、本当のリスク管理は自前できちんとやらせてそれを監督するというのが最近の各国金融当局の流れだと思うのですが、BISルールというのは極めて政治的なことが決められる場になっている可能性があります。

一つの仮説としては、もともと「欧州自国通貨建て国債」のリスクは、ドイツなどユーロのコア国やイギリスなどシステム的なキーとなる地域が一番抱えていて問題となるのであって、そうした大変な国々が、自分たちだけ弱くなるのを避けるため、日本を道連れにしたというもの。信用リスクという意味ではギリシャなどダントツで日本国債はいくら財政が劣化したとしてもそこまで行くには大分時間がかかるでしょうが、価格変動リスクなら、ガンガン長期債を買っている日本の金融機関や、もっといえば日本そのものの力をそぐことで相対的に自らの優位性を確保するという戦略に欧州が出たということが考えられます。どんどん陰謀論化してくるので自分で書きながらもどんどんいい加減なストーリーになってくるのですが、どうしてまたこのタイミングでフィッチという欧州系の格付け業者が日本を格下げしてくるのかも怪しいといえば怪しい。格下げするとしたら、次の消費税上げがきちんと決まっている今じゃないでしょ。あてもなく消費税見送りを決めた昨年末でしょ、と思うわけです。

それにしても、どうしてこのタイミングでこういう話が大きく取り上げられたのか、という点も謎です。大体において、休日に出てくるこういう話は関係者(特に当局)の意図的リークであることが多い。ただ、BISではこの件に関する公式なリリース等はかなり前から出ていませんから、この記事が文字通りの「New」sとなるためには、このタイミングでBISの議論に参加してきた金融庁などの関係者が新聞記者に対して吹き込んだということになりますが、別に内容自体はそれほど目新しいものとは言えない。注目されるのは視点が「市場リスク」になっていることで、妙なソブリン以外の国債しかも自国通貨建て国債も「資本を食う」となれば、日本の金融機関に影響が出る。そういうことを認識させることを明白に意図した記事ではなかったか、と思うのです。

ではその狙いは?私の想像ですがやはり日本の「金融再編」ではないか、と考えます。地方の金融機関を含め、銀行業界などでは資産における国債の比率が高まっていると考えられます。融資が増えないで国債が増える。その中でリスクウェイトが全体に低くなって健全性が従来よりましたように見えている、という点を問題視したのかもしれないですね。であれば、国債の保有リスクが直接キャピタルチャージにつながる仕組みは、そうした金融機関に大胆な変革を迫るきっかけとなりうるでしょう。この、はっきり言ってちょっとずれた記事を書かせたのは当局にとってもそういうメリットがあるからだと考えたのですが、考えすぎでしょうか?

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
市場最大の作戦、日本経済は負けるわけいかんので。必ず勝つでしょう。25000
死守まー三週連続海外買い越し。日経あげる時は、めがに集中投資。
かる
2015/05/09 02:34
まーこういう規制って30年前以上からやってるが、過去の金融危機に対してまったく効果がなかったのに何でやるのかな。
マー出した途端にそのアノママリーねらわれてHFの餌食というか、結託してたりして。
BISは
2015/05/21 22:59
次は政策保有株式ニナルワケデスデスガ、コレヲ逆手ニトッテ、株価ジョウショウノ要因にしてしまう。今は何がなんでも日経は上昇なのでしょうね。
atme
2015/05/29 23:57

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