厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 社会的貢献と運用

<<   作成日時 : 2015/05/12 18:05   >>

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先日、NHKのプロフェショナル仕事の流儀という番組で、著名な独立系投信運用会社のファンドマネージャーが紹介されていました。この運用会社では社会的貢献をテーマに投資するファンドを扱っています。
この放送があった直後ぐらいからツイッター界隈では散々「その手の社会貢献は寄付すればいいのであって投信は儲ける為にある」とかいう意見が出ていたようで、まあその見方にも一理あるし、社会貢献(もっと広く言えばESG(environment, society, governance)の要素)とパフォーマンスとのリンクは今のところ確たる証明がなされていない(そもそもどのような視点でそのような要素を取り上げるかという決定的なやり方も確立していない)ので、短期的なパフォーマンスを求める立場からは、特に茲許の株式の好調な地合いにおいては、「なんだそれ」みたいな意見も出ることもわからないわけではありません。

しかし、少なくともそういうことをわかったうえで多くの小口の資金が集まっていること(このファンドマネージャーは、株式市場全体が大きく上げる局面では時価総額指数に負けることは初めからわかっていて「そういう負けるのが嫌な人はこのファンドに投資してはいけません」とはっきり言っている)は事実で、人のお金の使い道をどうこういう必要はなかろう、というのがワタクシの意見です。嫌なら買わなければいいだけです。別に違法な商売をしているわけでもないし、むしろそういう「理念」に基づく商売(批判者たちの意見によると本来食えないはず)が商売になっているということに注目してもいいのではと思いました。

もう一点忘れてはならないのは、日本の上場企業群においては「財務」が良くてなおかつ「社会貢献」(あるいはESG要素の向上)に努める企業が多く存在するということです。たとえば「財務がよい」企業をスクリーニングしたうえでその中でESGファクターで選別していった結果、長期的にTOPIXなどの市場を上回る成績を出しているファンドもあります。残念ながら、現状ではそうしたESGファクターが超過収益に寄与するメカニズムの説明力が弱い、というのが現状で、説明責任が重視される年金基金などではこれまで(固いところほど)そうしたファンドは門前払いされてきたのが実情でしょう。その意味で、個人はそうした説明責任とは無縁であり、販路としてはまずこちらだというのは正解だと思います。どなたかがツイッターで書かれていたように、そもそもそういう人はTOPIXに勝ったとか負けたとかを目指さない可能性もあります。つまり年金基金とは効用関数が異なるということで、そういうところにお金を入れることこそが彼らの「効用」だという見方も可能です。

最近は年金基金のほうも少し風向きが変わってきたようです。昨年GPIFのポートフォリオ見直しの議論の中で、ESGを含む新たな投資へのアロケーションが提案されました。すでに実際GPIFだけではなく公的年金の多く(結果的にGPIFの影響を受けることが国会の議論を通じても明らかになりましたが)がそうした取り組みを行いつつあります。もちろん説明責任を負う年金基金の場合、それの持つポートフォリオ効果とかやはりパフォーマンス特性リスク特性と言ったものをきちんと分析することになるのでしょうが、少なくとも大きなところが検討を始めたというだけでも、時代は変わったということでしょう。

さらに、こうした動きを後押しする流れとして昨年半ば強制的に導入された「スチュワードシップコード」があります。これは機関投資家やアセットオーナー(年金基金など)に、株式会社としっかり対話して企業のガバナンスを向上させていく(もっといえば圧力をかけてしっかりと株主利益を上げていく)役割を担わせたものであり、特に株主である機関投資家やアセットオーナーと投資先企業との間の「対話」(エンゲージメント)を重視します。当然エンゲージメントのテーマの中にはESG要素(特にガバナンス)も入ってくると思われ、社会貢献を評価することとかなりかぶってきます。

つまり、言いたかったのは、好むと好まざるとにかかわらず、株式市場においてはこれまでよりも一種社会貢献的要素を取り入れた投資が浸透し始めているということです。


もちろん、繰り返しになりますがそういう要素が短期的にも中期的にも時価総額指数に対するアルファ獲得の要素になるかどうかは証明できていません。しかし、いくつかのファンドで10年位で見たときに超過収益を出しているものがあること、直観的にはそうしたESGの要素が少なくともネガティブなリスク(不正、公害やセクハラ等の巨額賠償、社会的評価の低下による損失など)を回避する可能性を高めるという考えにも説得力があり、そういう投資手法そのものは長期的に勝つための手法としても一概に排除できないのではないか、と思います。

ただ、やはりこういう投資手法で気を付けなければならないのは「宗教団体化」してはいけないということです。あくまで財務と業績の裏付けのある企業群からESG要素に優れた企業を選びそれをきちんと(冷徹に)メンテナンスしていかなければなりません。その点、某ネット系保険会社への投資はやや宗教的かな、という印象はぬぐえません。この会社はやや当初のモデルとは異なっていますし、当初テレビCMはお客さまの利益にならないからやらないといっていたのに実際は(背に腹みたいな感じで)やってますし、投資の世界でいうとパフォーマンスが悪化していることで「スタイルドリフト」を起こしている印象があります。(まあ年金運用と違って誰も責めませんけれどね)。

いずれにしても、別に単年度でTOPIXなどに負けたからだめ、他のファンドに負けたからだめ、とかはそういうことを期待して投資しているひとなら言うことができるとは思うのですが、そもそも投資家がそんなことを期待していないのであれば、ここで紹介された某投信運用会社は、まさにお客さんの期待に沿った運用をしているだけであって、それはそれで結構なことではないのかな、と思った次第です。
すみません、番組を見てないので、ツイッターの批判を見て感じた印象でした。

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内 容 ニックネーム/日時
ファンドマネージャー(いわゆる大手金融機関様に属する良心のあるサラリーマンの日本人が前提ですが)がで勝手な相場観で、わけのわからん投資に、ど素人の運用主体にジコ責任で30年にわたる老後の、運用責任を負わせる確定拠出年金なんて制度は、国としてやっていけないって、厚労省も金融庁もみんなわかっているよ。だって今期待リターンが3%以下なのに、コスト+税金等がそれを上回る運用なんてできるわけないですよね。
FM
2015/05/30 00:07

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