厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

アクセスカウンタ

zoom RSS 永久劣後債って「新型債」なんですか?

<<   作成日時 : 2015/07/01 08:11   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 2


http://www.nikkei.com/article/DGXLZO88681160Q5A630C1EE8000/

いえ、ちょっとこだわってみただけです。だいぶ前からあると思うんで、すみません。

ご存じのとおり、劣後債(subordinate debt) は上位債(senior debt)に対する言葉で、発行者が資金不足に陥った時返済順位が上位債に文字通り劣後するものです。で、永久債というのはこれも文字通り形式上の償還期限がない(ただし発行者側が一定期間後任意で償還できるオプションがついていたりすることが多い)債券のことです。償還期限がないということは、任意償還、繰り上げ償還等がなければ、バランスシート上消えることがない資金という意味で事実上「資本」になりますから、多くの場合永久債には高い資本性が認められます。もちろんステップアップ利率などの極端な条件を付与することで事実上償還が強制されているような条件の付け方もできる(事実上の期限付き債券)のですが、その場合は格付け会社などからみて「期限付き劣後」類似とみなされ、資本性が低く計算される(つまり格付けの判断の際の自己資本比率に影響が出る)ことになり、この辺はまあ資本政策上の判断の問題です。

一方では、このような債券は通常流動性がないわけで、しかも剰余金の分配にはあずかれない(利率が定率である)場合が多く、通常の投資判断でポートフォリオ投資として買うことは難しいと思います。つまりどこか(親密先等)に「はめこむ」作業が必要となります。期限付きであれば劣後であっても買ってくれる年金などの投資家はいます。むしろ日本の金融機関の期限付き劣後債は、リスクに比して高い利回りが得られるので海外の年金基金などからは割と人気の高い商品でした。しかし今回の商品が本当の意味での永久劣後だとすると、その流動性はほとんどないといえそうで、通常の買い手はなかなか思い浮かびません。

新聞記事では「生命保険会社等」が買い手となると書かれていたのですが、記事によれば過去の「優先出資証券」の償還見合いで発行されるとか。実はこの過去の優先出資の資金はかなりの部分生保が出していたはずです。記事とは違う銀行ですが、たまたま見つけたリリースでリーマンショック前後に発行された銀行の優先出資証券の償還がでています。
http://www.mizuho-fg.co.jp/release/20150515_3release_jp.html

自己資本比率が落ちた時に元本が削減される条項が入っている債券というのはそもそも債券よりも株に近いので、このご時世に(いくら株式よりも返済順位が上だからと言って)通常そのような低リターンのリスク性商品を買いますかねぇ、と普通は考えますが、実際には優先出資の借り換えということで、何のことはない株の持ち合いの代替が継続しているだけという冷めた見方もできます。保険会社だって特に生保はまだ資本増強に余念がない。過去発行した劣後債や基金などの償還の見合いでこれから生保の発行する証券もいろいろ引き受けてもらう必要があるのではないか、と推測します。それとちょうど銀行の永久劣後を生保が引き受けるのとが、一種の持合い的な作用を果たし続けるのではないか、と考えます。いい悪いは別にして。

ここには書かれていませんが、今回償還される優先出資は、発行当時(リーマンショック直後ぐらいですか)信用不安の下での資本調達だったため固定配当の額は極めて高くかなり生保などにとって(当時のリスクを考えても)おいしい投資であったと思います。さらに記憶では5年ちょっとでステップアップなどの条項が入っており、ある程度償還を強制する内容だったと思いますが、償還はあくまで同様の資本性の調達ができることを条件として可能で、それゆえに銀行にとっても割と高めの資本性が認められていたという記憶があります。(間違っていたらすみません)。

今般低金利を利用して永久劣後という形で発行することで、こういう高コストの優先出資から、低コストの永久劣後に乗り換えられるというのは、銀行にとっては大きなメリットとなります。ただ、結局のところ業務上の関係の深い生保などの機関投資家しか引き受けてのなさそうな永久劣後という極めて資本性が高く流動性の低いアイテムにふさわしい金利が乗っかっているのかどうかについては議論の余地はあるでしょう。


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
いつも勉強させていただいております。

「永久劣後」であることが「新型」なんではなく、「自己資本比率が低下すると元本が削減される」(=バーゼルV適格)であることが「新型」なんじゃないでしょうか。
鬼ヶ城
2015/07/05 03:03
鬼ヶ城さん、ありがとうございます。そうですね。おっしゃる通りかと思いました。メディアのヘッドラインや説明の仕方にちょっと違和感があったので、こだわってみました。
厭債害債
2015/07/06 08:23

コメントする help

ニックネーム
本 文
永久劣後債って「新型債」なんですか? 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる