厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS パッシブ運用とスチュワードシップ責任

<<   作成日時 : 2015/07/22 19:49   >>

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数日前に日経の記事に出てましたが、GPIFの昨年度運用においてアセットのシフトがあり、株式運用のパッシブが大幅に増えたようです。当該記事では、それが市場全体に影響を及ぼした結果としてアクティブが相対的に振るわなかったという書き方で、ちょっとプロの方が見ると「あれ?」と思うのではないでしょうか?

GPIFの平成26年度業務概況書

というのもR&Iのデータによれば昨年度のすべてのスタイルを通じた日本株ファンドの平均パフォーマンスは実は30.63%(配当込)でTOPIXの30.69%(配当込)には若干劣後しているもののそれほど見劣りしない。しかしGPIFの「平成26年度業務概況書」では国内株のアクティブ部分はマイナス1.13%となっていてかなり大負けしている。日経の記事で言い訳じみた内容になっているのはそういうことなんだろうなぁとは思います。
もちろん手数料とか大人の事情もありますし、上記日本株ファンドの平均は単純平均なので、単純な比較は難しいとは思います。また実感としても昨年度は「まともに企業価値を見出す努力をすると負けやすい」年度ではあったとは思います。

何度もこのブログでも言っているように、パッシブとかETFというのはインデックス(TOPIXなどの指数)に連動するように運用するので、味噌も糞も一緒に買う。そうした指数連動型プレーヤーが力を持つマーケットでは「クソ」も上がりやすいのです。昨年GPIFが大規模に債券から株式へのシフトを行い、同時に日銀などがそれなりのETFを買ったということはやはりクソ株も上がりやすい年であったということです。そして、これも何度も言っているように、本当の成長のためには、証券市場が企業を淘汰していく過程が必要だと思うので、クソ株が価格上昇という形で評価されるような状況はあまり好ましくないし、それは極論すればバブルということだろうと思うのです。もっとえげつない言い方をすれば、パッシブやETFを中心に据える投資家はそういう本来淘汰すべき企業に対しても一定の配慮をする投資家ということになります。

まあ金儲けに良いも悪いもないという透徹した物言いはできるかもしれませんが、やはり市場を含む世の中には「進歩」「改良」「淘汰」とかいうのがあって初めて未来があると思うので、証券市場においてもそういう企業をきちんと評価して育てていくプロセスが組み込まれている必要があると思うのです。さらに東芝のような事件を目の当たりにすると、仮に時価総額の大きな会社が妙な会社であった時に、果たしてパッシブの投資家はどのように行動すべきか・・・といってもパッシブである以上時価総額の大きな銘柄は外せない。ということは「時価総額の大きな銘柄」を組み入れざるを得ないパッシブの投資家こそ、そのベンチマーク構成銘柄のウェルネスというか健全性や「非クソ性」をしっかりと監督し維持していく責任があるのではないでしょうか?という気持ちが、特に東芝事件をきっかけにワタクシのなかでさらに膨らみつつあります。

いま当局の肝いりで行われているスチュワードシップ責任への機関投資家の取り組みなどは、ある意味面白いテーマを提供してくれています。企業との対話によって、企業価値向上に努めさせるということですが、もちろん企業がクソにならないように導く責任もあります。だから議決権行使などでガバナンスなどをしっかり見たりすることになるわけです。ところで株のアクティブファンドはもともと「選別」「淘汰」の機能を内包しているわけです。ダメな企業、クソな会社は売るとか持たないとか、そういう形で自然と退場を促す仕組みなわけです。もちろんそのダメさやクソ度の座標軸はいろいろあるとは思うのですが、とにかくダメな会社の株価を相対的に押し下げる作用があり、最終的には退場を促す仕組みが組み込まれていると言えるのです。しかしパッシブやETFだとそうはいかない。たとえば、あまり実例はないとは思いますが、日経平均をベンチマークとしたパッシブ運用を委託された運用会社がある場合、ユニクロを持たないあるいは大幅にアンダーウェイとするというチョイスは全くないわけです。アクティブ運用ならトラッキングエラー(TE)の設定次第ではもしかしたら可能かもしれないですが、パッシブは基本的にTEをゼロに近づける運用なので、ユニクロ次第で決まるといわれる日経平均でユニクロをウェイト通りに持つしかおそらくチョイスはないでしょう。別の言い方をすると、そのマンデートが継続している限りにおいてユニクロは「売れない」し株主であり続けなければならない、ということになります。その意味で、世間の常識とは逆に、実はパッシブやETF投資家のほうがスチュワードシップ責任をきちんと果たしていかなければならないのではないか、と思います。

パッシブはやはりベンチマーク構成銘柄をできるだけ正確にトレースしたほうがいいので、どうしても銘柄が細かくなりがち。特にうるさいお客さんだとパフォーマンスがベンチマークから10ベーシスもずれたら文句を言われますから、それを避けるのに手っ取り早いのは銘柄数を増やしてベンチマークの構成にポートフォリオをさらに近づけることです。パッシブは本来的には個別会社には興味がほとんどないのだけれど、TEを抑えるためさらに細かくベンチマークを構成している会社というだけで買う。そしてベンチマークが変わらない限りそういう本来関心の薄い株を持ち切り保有するのがパッシブです。だからパッシブ運用の人にとっては、そんな興味のない会社群にスチュワードシップなんて・・・というのが世間の常識なのではないか、と思います。機械的にやるからフィーも安くできるんだし。

一部のアセットマネージャーのスチュワードシップ責任の原則を読ませていただくと、アクティブのプロダクトについてはしっかりやります、としているところが多いのですが、やはりパッシブについてはあまり乗り気ではないところが多いように見受けます。しかしスチュワードシップ責任というのは影響力を行使する株主(投資家)の責任を述べたもので、パッシブ全盛で機関投資家やアセットマネージャーがパッシブを通じて長期にわたって大量に同じ企業の株を持ち続けるのなら、彼らにおいてスチュワードシップ責任がもっとも問われなければならないということになるのではないでしょうか?(なお、パッシブでも「インデックスリターンの底上げのために」スチュワードシップ責任をはたすとしている会社とか、ネガティブな事象が生じた会社についてエンゲージメントをきっちりやりますと宣言しているところもいくつかあるようですが、せいぜいそのレベルです)。

もしこの考え方(パッシブやETFのほうがより強くスチュワードシップ責任を負うべき)という考え方が正しいのなら、話はフリーライダー問題に発展します。フリーライダー問題というのは、企業調査のコストを支払わないパッシブがコストを払っているアクティブが市場全体をよくしている結果にタダ乗りしているのではないか、という問題です。スチュワードシップ責任をここに持ち込むと、その傾向が余計鮮明になります。アクティブは企業調査をやって選別したうえでスチュワードシップ責任を果たすためのコストを支払い、パッシブがそういうものを一切支払わないなら、それは明らかにフェアではないし、パッシブやETFそのものが「反社会的」というと大げさかもしれませんが、市場における淘汰機能や社会の持続的成長を阻害する仕組みとなってしまいます。

ワタクシなりの考えは、アクティブとパッシブの役割を少なくともスチュワードシップ責任については逆転させるべきだということです。つまり、パッシブ運用の主体者は、投資先すべての企業に対して対話などを通じたスチュワードシップ責任を果たさなければならないと決める。アクティブはそれぞれ調査を行い売る銘柄買う銘柄を決めればいいのであって、スチュワードシップ責任はまあそれぞれの主体の判断に任せる(言い方を変えるとその責任は売買判断で表現する)。これが本来の姿なのではないでしょうか?
もちろんこうやればパッシブの持つフィーの安さはなくなりそうです。アクティブとパッシブの差は、フィーではなく純粋にプロセスおよびリスクのとり方の差となる。これまでフィーの差で(つまり企業調査活動による市場への貢献に対するタダ乗りの分)パッシブのほうが有利と言われた部分が、実はスチュワードシップが表に出てきたおかげでパッシブの優位性は失われる可能性があるのです。よく考えてみれば、アクティブが市場ベンチマークをなかなか越えられず同時にパッシブに負けるというのは、アクティブがそれなりのコストをかけてお客さまの利益と「持続的成長」「社会の発展」といったテーマに取り組んできている以上当たり前のことで、これまでパッシブやETFなどがそういったコストを払ってこなかったことこそ不公平だと思うわけです。

話を最初に戻しますと、去年のようにまともに企業価値を見出しに行くとベンチマークに負けるというのはあまり好ましい状態ではない。やはり本来的に何かがおかしいのだと思います。しかも今はパッシブが本来果たすべき責任を果たしてないと考えると、ちゃんとその関係性を是正すべき時期なんではないかと思う次第です。


ただ、それにしても昨年度のGPIFのアクティブの負けっぷりは見事です。これだけ大きなお金を扱う主体ですから、マネージャーの選考過程で相当な専門家が相当な深い洞察に基づいて本当に優秀なマネージャーを選ばれた結果がこれだったのだと思います(もちろん皮肉です)。とはいえまあ30%近く収益が上がっているからいいんじゃないか、という開き直りも必要だと思いますよ。結果的に大事なのは相対比較より、割引率をどれだけ上回ってため込むかということですからね。そういう意味でも本来はパッシブのベンチマーク運用やっている場合じゃないのだろうとも思いますが。何度も言いますが、株式市場の機能として重要なのは、味噌株を育てクソ株を淘汰するということですから、味噌くそ相場の昨年度にアクティブが負けたことは、ワタクシの上記の議論と絡めて長期的にはまあおとなしく見守るべき事態でしかないのかもしれません。

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基本は、アメリカさんの全く機能しなかった制度を何年か遅れで言っているだけなので駄目でしょう。
インデックスなんか、最近はしこたまできて指標性なんかとうに失われてますので意味ないです。鳴り物入りのなんとか400なんか、日経平均にアンダーパフォームしまくりだし。
確かに日本の今の量的緩和は、べつに通過供給増やしても、日銀当座預金に豚つみあなので実態経済になにも、正確にはいわゆるアナウンスメント効果がすこーしあるかな。
でFed.Bojが意図したのは、各経済主体のポート組み替えによる経済の活性化です。gpifが株をJGBの暴落なしにできる。銀行がJGB手放さぜるをえないようにして、積極運用に仕向ける。これが本質です。
gpif@
2015/07/24 19:51

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