厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS イーストランド号の悲劇

<<   作成日時 : 2015/10/20 07:00   >>

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金融庁の森長官が香港で講演された原稿が金融庁のホームページで公開されています。
http://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/20151013/01.pdf

残念ながら英文しかないのですが、非常に面白くて、金融庁のトップがおっしゃる内容としてはなかなか刺激的でわくわくします。

現状の金融庁のスタンスは、すでにここ数年のモニタリング方針や監督指針などに示されているように、日本経済をアベノミクスの流れの中で再活性化しようという明確な価値観に立脚している。その価値観の中心となるのが現在の森長官だと思っています。
ワタクシはたまたまニューヨークにいたときに当時財務省から大使館に公使として出向されていた森さんと会合で何度かお会いしましたが(森さんはもちろん覚えていないと思います)、言うまでもなく非常に明晰かつ合理的な思考をされて非常に感銘を受けた記憶があります。
ワタクシたちの年代では大蔵省検査とか初期の金融庁検査とかまあ本当に「サルがマシンガンをぶっぱなして」いるような部分が多少はあったと思いますが、森さんが監督局長のあたりからずいぶんと変わってきたと思います。オンオフ一体化を実質化したのは森さんだったと思いますし、ここ数年の地方金融機関への圧力のかけ方も、ある意味実態に着目した力技で、森さんでなければできなかったのではないかと思います。

おそらく森長官のポリシーとして形式よりも実質というのがあるのではないか、と思うのですが、これは多分金融監督行政において非常にいい方向に左右すると思います。いまだに金融機関などのほうが「形式」にとらわれているのではないか、と思われるケースが多く、そろそろ当局との対話を通じた二人三脚でまさに日本を再興させるように向かっていってほしいと願ってやみません。

ところで、上記森長官のスピーチの中で「イーストランド号事件」のことが触れられていました。ワタクシも勉強不足で知らなかったのですが、1915年7月15日シカゴ川でイーストランド号(SS Eastland)が転覆し800人以上の乗客乗員が死亡した事件です。

長官のスピーチからコピペします。

Two years after the tragedy of the Titanic in 1912, the International Convention on Safety of Life at Sea introduced the “lifeboats for all” regulation, requiring that enough lifeboats be equipped for all passengers and crew. The United States applied the international rule to domestic liners as well. SS Eastland, a sightseeing steamship on the Great Lake, therefore equipped lifeboats for her 2,500 passengers. Three weeks after, the steamship, with extra weight of lifeboats on her, was suddenly capsized during her trip on Lake Michigan and 841 of her passengers lost their lives, more than in the Titanic disaster.

(拙訳:1912年に起きたタイタニック号の悲劇のその2年後、「海洋における生命の安全に関する国際会議」は「すべての乗客に救命ボート」規制を採択し、すべての乗員乗客に十分な救命ボートを装備するよう定めた。このルールを米国は国内海運にも採用した。イーストランド号は五大湖の観光船だったが、このルールに従い2500名分の救命ボートを装備した。3週間後、イーストランド号はミシガン湖を航行中、その救命ボートが加えた重みによって突然転覆し、タイタニック号の悲劇を上回る841名の人命が失われた。)

長官の言わんとしているのはもちろん、過剰なルールが本末転倒の結果を招きかねないリスクです。このような「真っ当」な意見が金融監督行政のトップから聞かれることを非常に心強く思います。

どうしても規制や監督というのは何か事件があってから後追いになってしまう面があるのはある程度やむを得ないとは思います。ただ、本当にそれがコストに見合う効果があるのかどうか、それは果たして当局者などの「アリバイ」「言い訳」に使われているだけではないのか、という点についてきっちりした検証が必要になります。まさに今回長官がされたスピーチの一つの大きなポイントがその規制の費用対効果の点であったということは、非常に素晴らしいと思いました。
また金融の安定性と成長との関係。つまり角を矯めて牛を殺す規制への批判的対応も心強いです。ワタクシの目から見ればたとえばSOX法に起源する内部統制の仕組みのチェック。いまは会計士などがやることが多いので、事実上金融監督のもとに服するわけですが、もともとアメリカの大きな会計不正、もっと言えば会計事務所が「創造的会計」をやったことから由来しているので、何のことはない、会計業界のマッチポンプです。もともと多くの企業は真っ当なのです。一部の不心得者のために全体に無駄な資源を割いていると思います。しかも本来は上場企業だけのはずが、非上場の大きなところも事実上やらされているので、一体誰のために何のためにというところもあいまいになってきているのではないか、と思います。そういった点についてもぜひ新しい長官にはしっかりとレビューしていただきたいと思います。


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