厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

アクセスカウンタ

zoom RSS 日銀のマクロ・ストレス・テスト

<<   作成日時 : 2015/11/02 18:14   >>

ナイス ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb151026.htm/
日銀のHPから以下引用
「マクロ・ストレス・テストは、金融システムと実体経済が相互に影響を及ぼし合う関係をモデル化し、経済や金融資本市場に生じた負のショックが、どの程度金融システムの安定性に影響するかを分析するツールである。テストに際しては、現在の金融システムにとって脅威となるストレス状況をどのように想定するか、すなわち、ストレス・シナリオをどう設定するかが重要なポイントとなる」
今年も実施され概要は10月号の金融システムレポートに記載されているようです。

わざわざ「マクロ」・ストレス・テストと断っているように、あくまでマクロの変数が極端に振れたときに世の中がどのように影響を受けるか(特に市場とそれから派生する金融システムへの影響)を見ておく、というのが趣旨だと思います。これまでも毎年やってきているのですが、今回から「テールイベント・シナリオ」(リーマンショック並み)を毎回定点観測的に見ていくことと、「特定イベント・シナリオ」を毎回変えて作ってそれも見ていくこととした点が、変更点と言えるようです。

しかしながら、今回のテストにおけるテールイベント・シナリオは「何らかの内外経済へのショックにより、2015年第3 四半期から4 四半期後に「わが国の需給ギャップが−7〜−8%程度まで悪化する」というもので、リーマンショック並みの状況というのですが、これに基づいて市場周りの指標(為替、株、金利)がどうなるかを想定しているのがこちら。
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb151026b.zip

ちょっと興味深いです。まず為替は最初に急激に円高となり2年で約2割程度円高が進行するという予想です(2015年は115.13円/ドル。2016年94.83円、2017年93.14円)
日本株(TOPIX)は2015年1384ポイント、2016.年745ポイント、2017年692ポイントと2年で半値。しかしながら10年JGBの金利は2015年が0.384、2016年0.302
2017年0.295とはっきり言って現状からほとんど低下しないというシナリオになっている。

現状マイナス1.7%程度の需給ギャップが7-8%まで拡大するというのはまあ瞬間としても相当な逆風で、通常時であれば金融緩和とかそういうことになるんだろうけれど、いまの異次元緩和を前提にするとそういう需給ギャップ状況でも金利を下げるような形での緩和には結びつかないということを内包しているように思えます。

ところで、どうでもいいことですが、株価は2017年の想定が2015年の想定のちょうど半分なので、株の市場シナリオは「えいやーっ」で作られた可能性が強いと思います。もちろんそれを悪いと言っているのではなく、ストレス・テストというのはまあそういうものだということです。マクロ・ストレス・テストなので、「マクロシナリオから導かれる市場数値」が本来かな、と思う部分はありますが、「実現の可能性がゼロではなく実現したら困りそうなシナリオ」を描くのがテールイベントを扱うストレス・テストの本来の姿なので、まあ株価半分という決め方もありだと思います。

しかし、その割にはほかの為替や金利の数字がパッと見で納得感がないのです。90円台半ばのドル円は数年前アベノミクスの前には普通に出現していたレベルで、円安になった今を基点にリーマン並みの変動とかいわれても、プラザ合意もブラックマンデーもアジア危機もドル円80円割れも経験したワタクシにはあまりストレス感がない。ストレス感がないものをストレス・テストとは言えないわけです。先ほども書いたように、「実現の可能性がゼロではなく実現したら困りそうなシナリオ」を一種政策的に描くのがテールイベントを扱うストレス・テストの本来の姿ですから。

10年JGBについても、リーマン時の動きを参考にするのは本当に異次元緩和をベースにした現在の金利水準でも妥当か、という点について検討が必要です。そもそも上記のようなマクロイベントにおいて金利が上がることは想定しづらいので、こういうシナリオにしているという言い方は成り立つと思います。また、債券の資産価格という点では金利上昇のほうが期待損失は大きくなりますが、金融システム的には低金利状況の長期化ということが問題なわけで、その意味で金利低下をシナリオにしているというのもまあわからないわけではないです。しかし、逆にこの程度の金利低下で済むのでしょうか。これもすでに我々はJGB2%割れを見てしまいましたから、金利低下をストレスとみるのならやはりその程度までは想定しておく必要があるのでは、と思います。意地悪い見方をすれば、あまり金利低下のシナリオを書いてしまうと、逆に金融機関の経営に影響が出てしまってとんでもないストレスが発生するからやめとこう、とかそういうことなのかもしれませんが、まさにそういうストレスをみなくちゃ、と思うわけです。

日銀さんのために断わっておくと、定点的に観測するために常に一定の「リーマンショック並み」の市場変動を想定した一種のヒストリカルなシナリオ・テストとしてはもちろん有効です。しかし、会社であれば経営に、マクロプルーデンスであれば政策決定に参考になるようなものを作らないと、「ストレス」・テストが単なるアリバイ作りになりかねないということは力説しておきたいと思います。せっかく「ストレス・シナリオをどう設定するかが重要なポイントとなる」と書いておられるのですから、定点観測的なストレス・テストはちょっとその根本的な目的からも若干違和感があります。


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
日銀のマクロ・ストレス・テスト 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる