厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 第三の企業年金(給付変動年金)

<<   作成日時 : 2015/12/11 06:02   >>

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本日の日経新聞の一面にありましたが、企業年金制度の新たなスキームとして来年度の税制改正大綱に盛り込まれるようです。早ければ2016年4月から導入が可能となるとか。
ワタクシも詳しいことはまだ知らないのですが、企業が一定の「リザーブ」を運用の損失に充てるためにあらかじめ積み立てておき、運用の結果もたらされた積立金の額にそのリザーブを足したものを給付が上回る(つまりお金が足りなくなる)ときは従業員が損失を負担する(つまり給付が減らされる)。その代り運用で儲かった時は給付が増額される。要するに損失の負担という意味ではDC(確定拠出年金=従業員がいくつかの選択肢の中から自分の運用を決定し、運用の結果は従業員がリスクをとる、すなわち給付額は増えることも減ることもある)に近いのですが、運用を選ぶのが企業だという点ではDB(確定給付年金=企業側が運用し、結果にかかわらず給付に十分なお金を出すので、従業員はリスクを取らない)に近く、結果として両制度の中間的な位置づけです。

この制度ができるきっかけとなる問題意識は、多くの会社などで従業員が自らのリスクで給付を増やせるDCを導入したものの、あまりにもリスクアバース(リスク回避的)な方々が多く、運用の選択肢として用意したもののうちかなりのお金が定期預金や確定年金などに回ってしまっているという現実があります。ワタクシなどは仕事柄個人的に手金を個別株や為替などにベットすることが許されていないので、DCぐらいしか自分の老後資金を自分のリスクで蓄えていく道筋がない(不動産かうほどお金もないし)。ですから安倍首相が登場する数年前に制度が導入されたときは、リーマン直後ぐらいでしたし、まあいいか、と思って当初の移行資金と毎月少しずつ買っていく部分の全部をハイリスクタイプの投資商品に突っ込みました。結果としてはアベノミクスという運もあり、大正解だったわけですが、周りを見ると確かに全額安全資産しかも債券ですらなく預金やその代替みたいな人たちがごろごろしている。はっきり言って倍ぐらいの差になっているわけです。これはいけませんね。ということで国民の意識がそのような状況であれば、企業がリスクをとって従業員にその成果を還元するような制度も用意する、ということなのでしょう。

ただ、問題は、DCの時もそうでしたが、企業が年金制度における従業員への手当てを厚くするというのとは次元の違う話です。つまり、第三の制度を導入しても既存の制度から一部移行する企業がほとんどじゃないかと思うのです。もちろんDBを運営する企業であれば、いざという時に給付を減らせるこの第三の年金にみんな移行したほうが楽かもしれません。しかし、組合などとの関係ですんなりいくとは思えません。結局一部以降でお茶を濁すか、いまはマーケットがいいからたっぷり剰余金が積みあがっていることを利用して、予定利率を下げるなどして安定的なDBにしてしまうとか、いろいろ考えられます。つまり、この新たな制度がどこまでニーズが盛り上がるのか、という疑問は残ります。(もちろん税制上の優遇がありそうなので、そこは大きなポイントですが)。

もう一点、記事を読むと「20年に一度程度の運用損失に備えて」リスクバッファを用意するとしていますが、同じ記事で「リーマンショックのような経済危機などで年金財政が想定外に大幅に悪化した場合」に給付額を減らす、とあります。また添付されている図を見ても、その「20年に1度程度の運用損失に備えて」積み立てたリスクバッファの範囲を超えて給付原資が減ってしまったら、給付を減額するように読めます。
20年に一度というのは定量的な意味でつかわれているのだろうと思います。10年ぐらい前まで資産運用(市場)リスクというのはいわゆる「95%信頼区間」で計測すればいいとされていました。つまり市場の過去データなどをもとに1年以内の変動が95%の確率で収まる範囲を想定してその場合の最大損失を計測、資本と比較して足りなければその資本を積みに行くわけです。今回の場合ではその追加積立部分がリスク対応掛け金となるわけです。
残りの5%は1年ごとの損失の計測を前提とするとまさに20年に一度となるわけです。その場合のことは、別の枠組み(たとえばストレステストやコンティンジェンシープラン)などで対応することとするわけです。

ただ、実際にやってみるとお分かりのとおり、95%信頼区間は割と容易にブレークします。過去データに基づいて20年に一度しか起こらないと思っていても、その後はもっと動きが激しくなっています。さらに言えばその95%信頼区間をもって「リーマンショック並み」というのはバカも休み休み言え、としか言いようがありません。明らかに記事が書きすぎですが、もし制度設計者の間でこのような認識が共有されているのであればそれは恐ろしいことです(さすがに専門家がいっぱいいるのでそれはないと思いますが)。リーマンというのはよく100年に一度とか言われました。実際にはそれどころか確率的には1万年に1度ぐらいかな?(忘れました)というレベルですが、それが現実に起こるのが金融市場です。

もちろん企業側としてはリスク対応積立金への拠出は費用になると思うので、あまり多くないほうがいいというのもその通りなのでしょう。また、95%信頼水準というような「確率論的」な積立所要額を定めることで、所要額そのものが市場変動の影響を受けやすくなる。たとえば市場のボラティリティが大幅に上昇するだけで、積立所要額が増えてしまうという、企業経営上の影響も考えられます。また、そもそも95%という水準を計測するモデルがきちんとしているのかを外部の数理人などがきちんと見ていく必要がある(そうしないと、制度をテキトーに作ってしまうというリスクがある。一応税制上の優遇を与えるとなると、きちんとやってもらわなければ)のですが、結構このへんは「どうにでもなりそう」な気がしてやっぱり、もやーっとしているように思います。早ければ来年4月から導入と記事にはありましたが、ワタクシとしてはこの制度そのものに異論はないけれど、もうちょっと実務的なファインチューニングが必要かな、という考えです。

参考
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2016/request/mhlw/28y_mhlw_k_23.pdf

(どーでもいいこと)
確定給付はDB、確定拠出はDCと略しますが、第三の年金はどうするのかな?FB(Floating Benefit)でしょうか・・・

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