厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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<<   作成日時 : 2016/03/30 18:19   >>

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http://www.bis.org/press/p160324.htm
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/data/rel160325c.pdf
(日銀による仮訳)

ツイッター界隈で噂になっている、BISのリスク計算上の規制「強化」案である。
マネックス証券の大槻さん(クレジットの専門家として評価が高い)がさっそく解説記事を書いておられるようなので、もうほとんどそちらを参照されると大体ご理解いただけるとは思うが、ワタクシとしてもこの辺は日本の金融シーンに大きな影響を与えかねないというか、こんなもの真面目に適用されたら何のことやらわからんようになる、という懸念があるので一言書いておきたい。もちろんまだ市中協議文書というたたき台の段階ではあることは付け加えておきたい。
http://www.bis.org/bcbs/publ/d362.pdf
(市中協議文書)

一番大きな変更は、一定の与信のリスク量計測に「内部格付手法」を用いることを認めなくするということである。バーゼルUにおいて、それまで資産のリスクウェイト計測においてBISの決めた定量比率でやっていたものを、もう少し合理化するため、格付け会社の格付けを基本とする「標準的手法」と、各銀行でちゃんとリスクを把握できるモデルを作ってやる(当局の承認が必要)「内部格付手法」が用意された。日本では2007年3月末から適用が開始されたものである。内部格付け手法を用いることで、要するに倒産確率や損失率を自行のモデルで推計することが可能となった点が大きく、結果としてはリスク比率は下がる方向に作用したといわれる。

今回の規制強化案では、この内部格付手法を一定の範囲で適用できないようにするという点が大きな変更である。具体的には金融機関同士の与信、大企業向け貸付、プロジェクトファイナンスなど、不動産融資(住宅ローンを除く)については標準的手法つまり格付け会社の格付けを基本とするやり方のみが認められることになる。

理由としてBISが協議文書であげているのは、まず内部格付手法を用いた場合の比較困難性であるが、正確にはおそらく当局がそれをまともな手法かどうか判定することが難しいということではないかと思われる。また、パラメーター推計実務をより精緻化し(つまり難しい部分を除くことで精緻化し)今後も内部格付手法が適用となる部分についリスクアセット計測上の変動を小さくするようにもっていくことも目的の一つとされている。

問題は大きく分けて二つあると思う。
一つは、格付け会社への依存度がまた高まるということだ。そもそも内部格付手法を認めるということは初めから銀行間の横比較をあきらめたという風に理解していたのだが、実際はそうではなかったようだ。もちろん今後も内部格付手法を認めるカテゴリはあるので、すべてではないが、確かに一定の部分でというか融資の大きな部分で基準が近いものになることは疑いない。しかし、その代償として格付け会社の判断にゆだねることを強制することの方が弊害は大きいと思う。最近公開された「マネーショート」という映画では、サブプライム問題を生む一つの原因となった格付け会社のずさんな対応が会社の実名入りで公開されたばかりだが、そういうレベルの企業の判断をベースに資本規制を行うこと自体が本来はかなり無謀なことだろう。いずれにしてもおおむねそれらの資産にたいして「標準的手法」を強制することでリスクアセットが増えることになるとおもわれ、銀行のリスクテイク能力は削がれる。(さすがに大槻さんは元某格付け会社にいたから格付け会社については触れられていない)。

もう一つの規制強化として株式などのリスク掛け目が大幅に高まる。株式では約1.8倍となるようだ。こちらもこの金利状況で運用難に陥る金融機関を直撃するだろう。

せっかく金融庁が「リスクを取らない」体質を批判して「融資における目利き力」とかを強調されて(まあ中小企業だけなのかもしれないが)もっと自力でリスク判断しろと言われているなかで、さらには「世間からは雨の日に傘を取り上げるのが金融機関」という批判を浴び、そのなかで活路を見出そうとする銀行の立場からは、なかなか厳しいなあと感じる。

いま日本の金融機関は、後ろから金融庁から「退却したら銃殺する」と脅され、前を向けばBISという強大な敵がバンバン弾を打つなかで、マイナス金利で兵糧が尽き始めて立ち往生しているのである。


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