厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

アクセスカウンタ

zoom RSS 英国国民投票の評価

<<   作成日時 : 2016/06/27 19:47   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 7 / トラックバック 1 / コメント 2

先週の英国の国民投票で、英国のEU離脱に賛成する票が過半数をとり、金曜日のマーケットは大荒れとなりました。週末いろいろな方と会う機会がありましたが、普段金融とは全く関係のない世界にいる人々にとっても、「どうしたもんじゃろかいのぉ」というような真剣な憂慮が表明された事態です。
今後の手続きの進め方や英国にとっての様々な選択肢もふくめ、まだまだ不確定な要素が多く、市場は流動性が乏しくなる中で揺れ動くことも予想されます。

率直な感想は、多くの方もおっしゃっているように「なぜわざわざこんな国民投票をやったんだろう」ということです。キャメロン首相にとってはまさかの事態なのかもしれません。投票をやると決めた段階では「離脱議論に一気に片を付ける」ぐらいの気合いでやったのかもしれませんが、世界的にその後移民問題がクローズアップされたりEUの無駄遣いがクローズアップされたりと、どこにでもあるようなお茶の間民主主義に主導権を握られる形となったことが痛い。そもそも、我々は直接民主制をとっていない。もちろん効率が悪い(全員が集まって議論したりできない)ということもあるが、直接民主主義をとらないもっと大きな理由は、直接民主主義はそれに参加する人々が一定のステータスを持って初めて成立するものであり、人間だからというだけで平等な参加を簡単に認めてはならないということ、言い換えると「真っ当な人」を選んで議論させるほうが「真っ当な結果」になるという経験的な知見があるのではないか、と思います。もちろん、ナチスのように個々の投票民が間接民主制のもとで選んでしまったひどい結果もありますが、それもつまり「個々の選挙民の選択」が誤っていたということにほかなりません。民主主義というのは聞こえはいいが、非常に危険なものだという認識を新たにする必要があるのではないでしょうか?

英国のサービス産業のGDPに占める比率は80%とも言われ、また金融サービスだけで10%を占めると言われています。金融にしてもその他サービスにしても、ライセンスや活動で「自由に行き来できる」ことが決定的に重要になります。英国にいてEUへのアクセスが制限されてしまうのなら、英国にこうした人たちが拠点を持つ必然性ないしメリットは大いに薄れてしまう。また大陸を含む海外から食料品やエネルギーなど多くを輸入しているのだから、ポンド安(離脱の当然の帰結と思われます)になれば物価上昇に見舞われ、その影響は高齢者・年金生活者や貧しい人々を直撃するはずです。
問題は、そんなことがとっくの昔に議論されていながら、それでも多数の人は「離脱」を選んだということです。その理由について言われているのは「英国がコントロールを取り戻す」ということ。確かにEUの官僚が決めたくだらない規制の数々に縛られそのための無駄な拠出金を出し続けるのは、大英帝国の末裔としては耐え難いのかもしれません。しかしさらに生じている結果を見ると、スコットランドのすべてにおいて残留が多数を占め、またロンドン市は当然のごとく残留が多数を占めた。残りの言い方は悪いが貧しい工業地帯の人々の多くの意見で、脱退が多数を占めるに至ったわけで、コントロールを取り戻すどころか、内政面でコントロールを失いつつある、ともいえるでしょう。

今後のマーケットについて勝手な予想をしてみますと、ポンドは英国がそういう未知の世界に突入したということで、軟調な展開が続くと思います。ドルはポンドに対してはもちろん強含みだと思いますが、円に対してはやはりドル安基調かな、と思います。

ドル円については、いくつかポイントがあります。一つは、米国の利上げシナリオが遠のいたということでドル安という理由づけが考えられます。ただ、実は金利のストーリーで今年のドル円は買われていません。かなりの割合で「実需」がものをいう世界に入っていると思います。実需で無視できないのが「ヘッジニーズ」、さらにその中の「海外の日本株に対する投資の為替ヘッジ」です。もともと海外投資家は日本の経済そのものに対してきわめて悲観的でありました(2004年ごろ参加した米国の勉強会では向こうの投資の偉い方が、口を極めて日本のダメさ加減を批判しており超アンダーウェイトでした)。しかしリーマンショックがあり、また日本のアベノミクスの展開を見て、日本に対する見方を大きく変え始めていました。日本株のウェイトを増やす段階で、為替リスクはとる必要もないしまたアベノミクスでは円安も見込まれるため、為替をフルヘッジにして参入した海外投資家が多かったはずです。この場合株式の時価変動やウェイトの変更によって必要なヘッジ額が動くことは理解できるでしょう。つまり日本株の株価が大きく落ちるときは売っている円を買い戻す必要があり、円高になりやすい。良く市場関係者は「円高」だから日本株が下がる、という言い方をしますが、実はその逆もある。ある研究によればその逆のほうが最近はパワフルなのだそうです。つまり株が下がるから円高になる。その意味ではこういう状況では円買いが出やすく円高になりやすいでしょう。
同時に、経常収支の黒字も円買い材料です。赤字基調に行きかけていたのですが、最近はまた黒字が出始めています。これについては従来よりも所得収支の割合が高いのですぐに円転しないだろうという意見もあるのですが、まあ要注意でしょう。

反対勢力として考えられるのが、機関投資家のヘッジ付外債の巻き戻しです。ヘッジ付外債というのは、たとえばドル建て米国債10年債券を買い同時にドルを円に対して売るもので、この時ヘッジする期間は1か月とか3か月とか短いものにするものです。ヘッジコストは短期金利の差であり、簡単に言えば日本の10年債を買う場合に比べ、長期の金利差を獲得しながら支払うコストは短期金利差、ということで、長期金利において米国が日本よりかなり高く両国の短期金利の差が極めて小さい場合に有効な戦略です。
ところが、新聞などでもさんざん書かれている通り、ベーシススワップの支払いコストが急増しています。まあさすがに保有リターンがマイナスとなるところまでは行かないにせよ、昔ほどのメリットはなくなりつつあります。しかも為替は購買力平価のポイントが集中している100-105のあたりから下に突っ込み始めるとすると、そろそろヘッジをいったん外そうか、という気持ちになってもおかしくはありません。また新たなヘッジが大量に必要となるほど外貨のオープンポジションは持っていないと思います。

ということで、ざっくりしたイメージですがドル円は100円を割る程度ぐらいでそれほど大きな円高にはならないのではないか、と思います。

興味深いのはユーロです。何となくリスクが高そうな感じはしますが、これはドイツやフランスなどのコア国の意識が重要だと思います。コア国がしっかりと団結してユーロの仕組みを守る、ということになれば、一部の周辺国が抜け始めたとしても、ドイツやフランスのユーロにおけるシェアが高まるということで、かえってユーロに対する信頼が高まる可能性はあります。もちろん脱退に伴う大混乱は避けられないでしょうけれど。

日本株については、先ほど円高だから株安という因果関係はナイーブすぎるという話をしましたが、やはり円高によって企業業績の見直しに影響が出ることは避けられないので、若干株安気味で推移すると思います。日本株の場合英国などの外部要因によるリスクオフよりむしろ業績等の影響がこれから出ると思います。
ゼロ金利やマイナス金利の企業業績に与える影響は、意外にネガティブなのかもしれません。ご覧のとおり消費はあまりパッとせず売り上げにそれほどインパクトがないなかで、確実に企業のバランスシートをむしばむのが、企業年金等の超長期の債務です。金利が下がると割引率が下がるため、年金負債の現在価値が高まる。つまり時価ベースの負債が大きくなり、時価ベースの純資産が減る。ある人の試算によれば、金利の100ベーシスの低下で日本企業のバランスシートは80兆円も痛むのだとか。もはや市場としても金利を押し下げようがなくなっていることとあわせて、市場金利の低下余地は限定的だろうと思います。そして株の配当利回りを見ると東証一部銘柄で2%を超えている状況で、これから先、債券よりも株のほうが数字の上で魅力的に見えてくることも多くなるかもしれません。月曜日の前場を見ていて、海外で米国債(10年)の金利が18ベーシスも低下していたのに、日本の10年国債はほんの1ベーシスか2ベーシスしか下がっていないのも気になります。米国は利上げ期待が大きかったという点を割り引いても、日本ではリスクオフのお金の持って行き先すらなくなってしまったという感じがにじみ出ています。

取り留めのない話になってしまいましたが、ポンドを含む英国市場は国民投票の影響を強く受けざるを得ないでしょうが、それ以外の市場については、これまで通り合理的な価値評価と需給動向に基づく投資を行っていくべきであろうと思っています。すくなくとも日本国債という選択肢はどんどんなくなりつつあるような気がしてますので、ワタクシもそろそろ名前を変えることを検討しなければと真剣に思う今日この頃です。暑さきびしき折ご自愛のほどを・・・

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 7
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
英、EU離脱へ
欧州連合(EU)離脱の是非を問う英国の国民投票が23日行われ、24日午前7時頃、全投票地区の開票結果が判明し、「離脱」が1741万742票で51.9%、「残留」が1614万1241票で48.1%となり、「離脱」が上回りました。投票率は72.1%でした。 *** ♪Goodbye European Union♪ ...続きを見る
歌は世につれ世は歌につれ・・・みたいな。
2016/06/28 20:38

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
地べたから見た英EU離脱
http://bylines.news.yahoo.co.jp/bradymikako/20160625-00059237/
車の上に4本聖ジョージの旗をたてている
近所の離脱派の中年男性が車内に掃除機をかけていた。
「離脱だったね。大変なことになるってテレビも大騒ぎしてる」と言うと彼は言った。
「おう。俺たちは沈む。だが、そこからまた浮き上がる」

世界中の上級国民が金で脅しても、
離脱派にとって金の問題じゃなかったということです。
国民国家の自治自決の問題です。

「鶏口となるも牛後となるなかれ」
mikura
2016/06/27 22:56
mikuraさんコメントありがとうございます。自治自決という価値は尊重すべきものですが、それは「覚悟」と「犠牲」を伴います。いまの英国全体にそこまでの覚悟があったのかどうか?ということですね。ただ、英国というのは第二次世界大戦でもみせた強烈な粘りをもっていますから、最後は落ち着くべきところに落ち着くのだろうと思いますが、離脱派の考え方がどうも70年代までの英国病時代の考え方と根っこが同じような気がしていてそれを危惧しています。
厭債害債
2016/06/28 08:21

コメントする help

ニックネーム
本 文
英国国民投票の評価 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる